俺だってオフの日も必要なんだよ(2)
「じゃあ早速探しに行こう。少年、どの辺でママとはぐれたんだ?」
「わかんない」
少年は首を横に振る。
「うーん、ならいつ気がついたの?」
「さっき」
「……君の名前は?」
「しらないひとになまえいっちゃだめってママが……」
……ちゃんと教育されてんなあ。
どうしよう。わかんないことだらけなんだけど……せめて名前くらいは知りたいんだが。
「しかしいちいち少年と呼ぶのも面倒だし……名前くらい教えてくれないか? もう俺達は知らない人じゃないだろ?」
そう言うと納得したのか、少年は口を開いた。
「うんわかった。ぼくのなまえはルクだよ」
「ルクか。じゃあ探しに行こうルク!」
「うん!」
俺はルクに手を差し伸べる。するとルクは俺の手を握ってくれた。
「よし、はぐれんなよ」
「はーい」
と言って1歩進んだ時後ろから片桐が
「ほ、ホムさん……ボクも繋ぎたい……っす」
と言ってきた。
「ん? いいよ、じゃあクローバーはルクの左手な」
既に右手は俺が握っているため、必然的に片桐が左手となる。
するとまた片桐は落ち込んだような表情を浮かべるのだった。
「……あざーす。……うれしー」
「なんでテンション下げてんだよ」
───
「あー見つからねぇ!!」
「うわーん! つかれたー!!」
「……はぁ」
俺達はかれこれ2、3時間は歩き回った。が、収穫はなし。ただ歩き疲れただけだった。
そして今は休憩のためにミルド広場にやって来ていた。広場は噴水やベンチがあるくらいで、少し小さな公園のような場所であった。
俺はベンチに座って辺りを眺めてみる。が、ルクの親らしき人は見当たらない。
……もう日も落ちてきて薄暗くなってきているようだ。探すのはより一層困難になるだろう。
ベンチ隣に座っている片桐が話しかけてきた。
「ホムさん、そろそろ見つけないとやばいっすよ」
「そんなことは分かっているが……どうすれば……」
これ以上歩き回っても見つかる気配は無いし……どうすれば……
「はぁ……仕方ないっすね。疲れるから本当はやりたくないんすけど」
そう言うと片桐は立ち上がって、準備運動をし始めた。
「え、何をするつもりだ?」
「脳内に直接言葉を送るのを前にやったじゃないっすか。あの魔法をミルドタウン全体にやります」
「そんなことが出来るのか?」
「やるだけやってみるっすよ」
片桐はふぅと息を吐いた後、静かに魔法を唱えた。
(ルクという少年を知っている人は至急広場まで来てっ……す)
そう脳内に響いた瞬間、片桐は体からバタンと倒れた。
「ちょ、おい!! 大丈夫かクローバー!?」
俺は急いで駆け寄る。
「へ、へへ大丈夫っすよ。ただの魔力切れっす。……この街って意外と広いんす……ね……」
そう言って片桐はゆっくりと目を閉じた。
「おい!! くっ……クローバー!!!」
「……すぅ」
「……寝たの?」
確か前に見た本に……魔力は寝たら回復するとか書いてあったような……脅かすなよ。
とりあえず片桐をベンチに……よいしょっと。
片桐をベンチに座らせた。
───それから10分後。
「あ、ママだ!!」
隣にいるルクが叫び出した。
「本当か!」
向こうの方からルクの母親と思われる人物が走ってやって来た。
「ルク! 大丈夫だった!?」
「うん! このおにーさんとおねーさんが探してくれたの!」
ルクはこっちの方を向く。
「ああ……本当にありがとうございます!」
ルクの母親は頭を深々と下げる。
「別にいいですよ。お礼ならアイツに言ってください」
俺はベンチでグーグー寝てる片桐を指差す。
「ああ、あの方が教えてくださったのね。あの、これはせめてものお礼です!」
そう言ってルクの母親はポケットから硬貨を取り出す。
「いやいやそんなお金なんて……」
「いや、貰ってください!」
「……あ、ありがとうございます」
……まぁここで断り続けるのも悪いしね? 俺は有難くお金を受け取った。
「じゃあまたねーおにーさん!」
「おお、またな」
ルクは手を振って、母親と帰って行った。
さて……俺はベンチの方へと目を向ける。
「すぅ……すぅ……」
「どうすっかなこれ」
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