毎日朝の占いを見る奴っているの?(3)

「このクリスタルのせいで、高い防御力を得た代わりに重くなって飛べなくなったらしいっす」

「あ、そうなの……」


 じゃあクリスタルドラゴンなんて名付けるなよ……飛べないドラゴンなんてドラゴンじゃないよ……


「それじゃあ飛ばせてあげようぜ」

「そうですね、それでは……バイアップ!!」


 片桐はドラゴンに手を向けて何か魔法を唱えた。


「……ふぅ、これでよしっと」

「何をしたんだ?」

「力を超強化したんすよ。きっとこれで飛べるはずっす!」


 するとドラゴンは翼を広げて動かし始めた。そして風が辺りに巻き起こる。


「そうっす!! その感じっすよ!」

「……グオオ!!」


「よし、走るんだ!」


 そして助走をつけてどんどん速く走り出していって……


「行けっドラゴン飛べ!!」

「おまえならいけるはずっす!! 飛んでっ!!」


「グォォォオオオオオ!!!!!」


 空高く飛び上がった。


「やった……!! やったっすよホムさん!!」

「ああ! やった……やっ……」

「……ん? どしたんすかホムさん」






「スズメか!!!!」

「……えっ?」

「怪我したスズメを長いこと世話して、治って野生に帰る時の感動シーンか!!!」

「……よくわかんないっす」



 たまらずツッコんだ。いや、だって……こいつドラゴンだよ? ドラゴンが飛んだだけでなんでこんなに喜んでんだよ俺達は!



「ホムさんもさっきまでノリノリだったじゃないっすか」

「ノリツッコミってやつだよ」


 そんな会話をしていると、飛んでいるドラゴンがここに戻って来た。


「おおーおかえりっす、どうでしたか空の旅は?」

「グオオ!!」

「満足したみたいっす! 良かったっすね!」

「グォオオオ!!」


 ドラゴンはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。かわいいなおい。


「グォオオ?」

「え? クリスタルはいらないのかって?」

「グオオ!」

「いいんすか! なら言葉に甘えて貰っちゃいますね!」


 そう言うとドラゴンのクリスタルの光がどんどん弱まっていった。


「クローバー、これは?」

「これはドラゴン君が硬化状態をといてくれたって事っす。つまり……心を開いてくれたってことっす!」

「そうなのか、良かったな」

「はいっす!」


 片桐はドラゴンになでなでした後、ドラゴンのお腹辺りのクリスタルをもぎ取った。


「ありがとうっす!」

「グオ! グオ!」


 どうやらドラゴンはすっかり片桐に懐いたようだ。


「本当にいい子っすねー! よしホムさん、この子ウチで飼いましょうか!」





「いやペットか!!!!」


 ───


「いやー助かったよ」

「そんなー礼なんかいいっすよー。はいこれクリスタルっす!」


 片桐はゲットしたクリスタルをチカに渡した。


「ありがとね。あ、そうだお礼にクローバーちゃんを占ってあげようか?」

「えっ……ぇぇえええ!? いいんすか!? 占いの予約が3年後まで埋まってると言われてるあの占いを!?」

「んふふー3年は言い過ぎだよー2年半くらいだよー」


 なかなか埋まってんじゃねーか。占いがそんなに人気なのか……理解できぬ。


「よしそれじゃー何を占ってほしいかな?」

「え、ど、どうしよう」

「なんでもいいよー健康運や仕事運、金運に……恋愛運とか?」

「そ、そーうっすね……どうしますか」


 片桐は悩んでいる。そんなに悩むものか?


「じ、じゃあ……恋愛運で」

「まじで? 1番選ばなそうなの選んだな」


 俺がそう言うと片桐はフンとそっぽ向いて言った。


「べ、別にいいじゃないっすか! ボクだって運命的な出会いとか求めてるんすよ?」

「あ、そうなんだ」


 片桐はあまり恋愛のことについて話さないから、興味の無いものだと思っていたぞ。


「おっけーじゃあ占うねー」


 するとチカは貰ったばかりのクリスタルに手をかざしだした。


「ふむふむ……一言で言うと恋愛運はあまり良くないね」

「……そ、そうっすか」


 片桐はわかりやすく落ち込んでいる。


「でも大丈夫だよ! 恋愛運ってのは簡単に変わるものなんだ! クローバーちゃんがちょっと行動するだけでも大きく変わるよ!」

「こ、行動っすか?」

「うん! 例えば……気になる人をどこか遊びに誘ったり……沢山お話したりとか印象に残るようにすればいいんだよ」

「なるほど……分かったっす!!」


 ……俺は黙って見てるけどさ、なんで片桐こんなに真剣に聞いてんの? そしてなんでメモまで取ってんの? そんなに出会いに飢えてたの?


「ふふ、頑張ってね。あと……これを渡しとくよ」


 そう言ってチカは報酬と1枚の折りたたんだメモ用紙を片桐に渡した。


「あ、ありがとうございます!」

「ほんとにありがとね。また来るよ」


 ───


「いやーチカさんに占ってもらったすよー! これは一生自慢出来るっすねー」

「それは良かったな」


 片桐はニコニコしてて嬉しそうだ。


「そういや何かメモ貰ってたよな? 何書いてあったんだ?」

「あ、まだ見てないっす。読んでみますね」


 片桐は貰ったメモを開いた。──途端に片桐の顔が赤くなった。


「ん? 何が書いてあっ──」

「な、なんにも書いてないっす!!! お茶目っすねチカさんは!!!」

「え? でも……」

「だからなんにも書いてないっす!!! うっさいっすよホムさん!!!」


 そう言い捨てて片桐は外へと飛び出して行った。


「……一体なんだったんだ?」

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