毎日朝の占いを見る奴っているの?(2)

 というわけでやって来ましたザルツ山。風が気持ちいいね。


「クローバー、ここにクリスタルドラゴンがいるのか?」

「そうらしいっすよ? ちょっと探してみましょう」


 俺たちはとことこ山道を歩いてみることにした。



 歩きながら片桐にドラゴンについて聞いてみる。


「どんなドラゴンなんだ?」

「名前の通りっす、体がピカピカのクリスタルで出来てるドラゴンっすね。防御力がとても高いらしいっす」

「へぇー」


 でもそんなピカピカのドラゴンがいたら目立ちそうだけどな。すぐ見つかるんじゃないか?


 そんなことを思っていると片桐が声を上げた。


「あ! いた! アレっす!」


 片桐の指を指す方を見てみると、全身が光輝いているドラゴンが横になっていた。体長は2メートルほどの大きさだ。


「……意外とちっさいんだな。……あれ寝てない?」

「寝てますね……もしかして夜行性なんすかね」

「そうなの?」


 というかこのドラゴン警戒心というものが無いのか。道の真ん中で寝るとは……


「よし、じゃあ倒してクリスタル貰っちゃいますか! はぁ……!! ブレイジング!!」


 片桐は手の平をドラゴンの体に向けて火の玉を放った。その玉は勢いよく飛んでいった……


 ……が。カーンと音を立ててその玉は反射され、こっちに戻ってきた。


「うおっ! あっぶな! おいクローバー! 跳ね返されてるじゃねぇか!」

「あ、あれー? おかしいっすね。じゃあ別のやつを……フリージ!!」


 片桐は氷の粒を放つが、それもまた跳ね返される。


「うっ……サンダー!!」


 カーン


「ウィンドォ!!」


 カーン


「えっ……えーと……メテオジャッジメントインフェルノォ!!!」


 33-4


「なんでや!」

「あのさクローバー……コイツ魔法効かないんじゃね?」

「そうかもしれないっすね……」


 ドラゴンは依然まだ寝ている。すごい舐められたものだ。


「なら物理で殴る!! ボクの拳で……!! だぁああ!!」


 片桐は走ってドラゴンの方へと近づいていき、殴る……


 \ゴッ/


「痛たぁ!!!」

「めっちゃ鈍い音したけど大丈夫か?」

「うっ……だ、大丈夫っす」


 片桐の手は真っ赤になっていた。


「おいおい、無理すんな。早く冷やさないと……ええっと氷は……」

「……フリージ」


 片桐は左手で冷気を出しながら右手を抑えた。


「……便利だねぇ魔法って」



「ふぅ……さて、どうしましょ」

「物理も魔法も駄目か……ならここは交渉してみるのはどうだろう。お前のクリスタルをくれって」

「ドラゴンにっすか?」

「ドラゴンにだ」


 戦っても勝てないのなら話すしかない。


「クローバー、ドラゴンと会話とか出来るか?」

「多分出来ると思うんっすけどね……」

「けど?」

「上手く会話出来る自信がないっす」

「褒めればきっとクリスタルの一つや二つくれるさ」

「そんな上手くいきますかねぇ……やるだけやってみるっすけど」



 というわけで俺たちはドラゴンが起きるまで待機することにした。


 ───


 数十分後。クリスタルドラゴンは目を開いてゆっくり体を起こし始めた。


「……あ、ホムさん! 起きたっすよ!!」

「よし、話しかけるんだ!」


 片桐はクリスタルドラゴンへと近づいて話しかけた。


「こ、こんにちはっすドラゴンさん。ボククローバーって言います」

「……」

「あ、うわぁーかっこいいクリスタルっすねー! オシャレー!!」

「……グォォォ」


 意外にもドラゴンは暴れることなく、片桐の言葉に反応している。意味を理解しているのか……?


「も、もし良かったらちょっと欲しいな……なんてー?」

「グォオオオ!!」

「ひ、ひょえー!!」


 片桐はこっちに走って戻ってきた。


「なんて言ってた?」

「やだーあげないーって言ってました」

「……あ、そう」


 もっと凶暴なこと言ったかと思ったじゃないか。ビビらせるなよ……


「じゃあ交換条件をドラゴンに出せばいいんじゃないか? こちらがクリスタルに見合う何かを差し出せば、クリスタルをくれるかもしれない」

「なるほど等価交換ってやつっすね! 早速ドラゴンさんに欲しいもの聞いてみるっす!」


 また片桐はドラゴンの方へと走り出して行く。


「等価交換っす!! ボクがおまえの欲しいものあげるから、おまえのクリスタルを半分くれ!」


 ……お前はどこの錬金術師だ。


 するとドラゴンはグオオーと話し始めた。俺からすればただの唸り声にしか聞こえないのだが。



「さあ教えてくださいっす!」

「グォオオオ!! グオオ……」

「うん、なるほど」

「グオ。グォオオオ!!!」

「それは酷いっすね! 許せないっすよ!」

「グォオオオ!! グォオオオォォ!!」

「なるほどっす! 分かりました!」


 なんで友達みたいに話してんだよ。どんだけフレンドリーなドラゴンなんだよ。


 と、脳内ツッコミしているとどうやら話は終わったようで、片桐はこちらへ戻って来ていた。


「で、なんて言ってたの?」

「1度でいいから空を飛んでみたいんだって」



「……コイツドラゴンなのに飛べないのかよ」

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