剣を取り戻せ!(4)
「いやいや待てよクローバー。お前がアイツをボコしてよ!」
「何で女の子に戦わせるんっすか。いーから行ってくるっす。とっとと行けっす」
何なんだ一体。片桐は見たこともない顔をして俺に毒づいてくる。
「おい!どうしたんだクローバー!」
「……はぁ。何でもないからはよ行けっす」
絶対なんかあんだろ。なんか口がどんどん悪くなってる……
「なぁ、俺なんかしたか?」
「うっさいっす。そんなんだから童貞なんっすよ」
「は!? 何で知ってんの!?」
「うわ……適当に言ったのに当たったっす」
何だよ!! アイツせっかく俺が機嫌戻そうとしてやってんのに!! 何あの態度!! キレそう!!
「どうしたー!! 戦わないんならもう帰るぞ!!」
と佐藤がしびれを切らして叫んできた。ああ。もうやるしかないのか。
「やってやろうじゃねえか!! この俺、ホームズが相手だ!! 来いやぁ!!」
「バカかおまえ!! 戦うのは外でだ!!」
……意外と常識はあんのか。
──外──
ギルドから少し離れた場所にある、路地裏へとやって来た。人通りはなく、戦うのには最適な場所だ。
佐藤の他に、ゴミを見るような目をした片桐、白髪の男もついて来た。何で来るんや。
「よしはじめるぞー!!」
「ああ!」
その時の俺は何故か勝てる気がしていた。佐藤はまんま子供の見た目と言動だったため、いつの間にかただの子供だと思い込んでしまっていたからか。それとも単に頭に血が上っていたからか。
無論、あの大男リーノを負かした奴ということは頭から消えていた。
「来いや!」
「くらえー!! 必殺パーンチ!」
「──がはっ!?」
佐藤は目にも止まらぬ速さで俺の目の前まで近づいて、拳を俺のみぞおちに殴った。たまらず膝をつく。
「……っあ……はぁ」
はぁ……苦しい……い、息が……
続けて佐藤は顔を殴る。殴る。
「おやおや一方的ですね」
「……見てられないっす」
外野からそんな声が聞こえてくる。
「そんなもんかお前!! ザッコ!!」
クソ……こんなガキに……負ける訳には……いかねぇ!!
痛みを必死に堪えて意識が朦朧としたまま立ち上がる。
「ああ……!!どうしたガキぃ……その程度か?」
「はぁ!?もっとくらいたいのかお前!! 」
そう言って佐藤は俺を蹴り飛ばした。明らかに子供とは思えないほどの力のある蹴りだ。俺は宙に浮く。そしてズドンと落下。
痛え……!! 痛てぇ!! 今までに体験した事の無い痛みだった。
「おいザコ!! これ以上くらいたくないなら降参しろ!!」
──降参? 降参すれば終わる。全て終わる。これ以上攻撃を受けずに済む。楽になる。
けれど……
「まだ立つのかお前!!」
「……受けた依頼は必ず解決する。それが俺のモットーだ!!」
……と、そんなことカッコつけて言ってしまったが、勝つビジョンは全く見えなかった。
「知るかそんなん!! くらえー!!」
と佐藤は拳を振りかざしてくる。やばいやばい……死ぬ! これ以上当たったら死ぬ!!
どうしよう……どうしよう……!
考える暇もなく拳はどんどん近づいてきて俺の顔面に──
\ペちっ/
「「え?」」
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