剣を取り戻せ!(3)
───ルナティア王国───
「おお……賑やかな場所だな」
「賑やかじゃなくてただうるさいだけっす。とっととギルドの酒場へ行くっすよホムさん」
ここはルナティア王国。見回すと高い建物が沢山並んでいて、人や馬車も沢山歩いている。まさに大都会だ。
だけどもどこか片桐は不機嫌な様子だ。行く前はあんなに元気だったのに。
「クローバー? どうかしたか?」
「何でもないっすよ。早く行くっす」
何でもないって言うやつほどなんかあるよな。……あ、思い出した。
「ああ……確かお前は元ギルドのメンバーだったんだっけ。その場所に行くのは嫌なのか?」
「……別にそんなことないっす。仕事っすから」
片桐は俺から目を逸らしてそう言った。ちょっと声震えてるし……強がらなくてもいいのに。
「いやぁまぁ分かるよ? うん。俺だって近所のイ〇ンに行くの嫌だし、辞めた部活の先輩に会うの嫌だし」
「いや……それとはなんか違うっす……」
「違うのか?」
うーん。例えが悪かったか?
「まぁ大丈夫っすよ。それに……何かあったらホムさんがボクのこと助けてくれますもんね」
「ん、ああ」
意外と俺は信頼されてるのか。仮にも探偵を一緒にやってきた仲間だしそう思ってくれてるのは嬉しいな。
「……りにしてるっすから」
「え?」
「な、何でもないっす!」
繰り返すが何でもないって言うやつほどなんかあるよな──
「ほら!! 着きましたよホムさん!!」
「……ああ、ここなのか」
ギルドは思っていたよりも立派で大きな建物だった。
「ここはギルドの他にも色々な店が入ってるっす。武器屋とか飲食店とか。報酬を貰ったばかりの冒険者共から金を巻き上げようって魂胆っすね」
「なるほど。それは儲かりそうだ」
そんな会話をしながらギルドへと入っていった。
中は沢山の人が居て、正面の目立つ所に大きな掲示板。その隣は受付みたいなのがあって、奥には椅子やテーブルが並んでいる。そして非常にざわざわしていた。
「クローバー 向こうが酒場か?」
「そうっす着いてくるっす!」
この人混みではぐれないように、俺は小さな片桐の手を握った。
「ひょえっ!? な、何にしてるのホムさん!?」
「はぐれないように手を握っただけだ」
「そ、そうっすか。びっくりしたっす」
そう言うと片桐は手を握り返して、奥の酒場へ引っ張ってくれた。
酒場。カウンターに丸椅子が並べられていて、その周りはテーブル席がいくつかあった。今、酒を飲んでる人は何人かいた。その中の誰かに話を聞こうとして、キョロキョロしていると
「おやおや……まだお昼だというのにお熱いですね」
と声が聞こえてきた。……え? 俺に言ってんの?
声の方を向くとカウンターで酒を飲んでいたタキシード姿で白髪糸目の男が、こちらを振り向いて笑っていた。しかしそれは汚らしい笑いではなく、どこか気品のある笑い方だった。
しかしこいつは何のことを言ってる……と考えていた時、手が強く握られてることに気がついた。……あ、手繋いだまんまだったわ。
「な、ちげぇーし! そーゆのじゃねーし!」
と言って反射的に片桐の手を振り払った。……テンパって友達から好きな人を当てられた小学生みたいな反応をしてしまった。男は笑顔でこちらを見ている。
「ん、んん……もうあんたでいいや。この辺りで佐藤って人物見たことないか? 探してるんだ」
気を取り直して情報集めを開始する。
「サトウですか。ああーあの子供ですね。彼なら……そろそろやって来るんじゃないっすか?」
「やって来るって?」
「ここにですよ。あ、ほら」
と男が言った瞬間。
「いたー!! おいルイト!! インゴット持ってきたぞー!! 金くれー!!」
うるさい声をあげながら、金色光る塊を手に持ってこちらへ走ってやって来た。
「ほら来ました。サトウ君です」
「え? あれかよ」
見た目は背が片桐並に低く、ボサボサの髪をしたいかにも生意気そうなガキンチョである。リーノはこいつに負けたんか……?
佐藤はこちらにどんどん近づいてきて、白髪の男と話し出した。
「ほら! インゴット! 持ってきたぞ!」
「ご苦労さまです。ほら報酬です」
そう言って白髪の男は金塊を受け取り、硬貨を何枚か佐藤に渡した。
「何してんだ?」
「ふふ、サトウ君にお使いを頼んでいたのですよ」
こんなガキに何頼んでんだ……
「そうだサトウ君。この人が君に話があるみたいですよ」
「ん? 誰だお前! なんのようだ!」
と白髪の男のおかげで佐藤がこちらに反応したので俺は佐藤に話しかけた。
「お前、最近リーノって男から剣を奪ったろ。返してやれ」
「やだよー!! そんなの負ける方がわるいんだもーん!!」
と言い返してきた。まぁ返事は予想通りだが非常にうぜぇ。殴り掛かりたい気持ちをぐっと堪えて俺は続けて言う。
「頼むから返せ」
「だからやーだ!! しつこい!!」
ああ。キレそう。
「じゃあどうしたら返してもらえるんだ?」
「しつこいなぁー!! そんなにいうなら僕と戦えよ! 勝ったらその剣返してやってもいいぞ!」
よし! その言葉が聞きたかった! 片桐がこいつと戦ってチート能力でこいつをボコしたらこの依頼は解決だ!
内心ガッツポーズをしながら片桐の方を向くと見たことがないような暗い表情で
「……んじゃホムさん頑張って下さい」
と言われた。
「……………………は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます