第056話 転送
『絶望の中の一筋の光明となる為の旅』
青く光る扉は金属製で重たそうに見えた。ヴェスが近付いて調べ始めた。鍵穴は見当たらず、
「何もなさそうだな」
ヴェスは振り向いて調査結果を報告した。
「だから言っただろ⁉︎昔と変わらないはずだって」
ここを使ったことがある
「何もないなら良かったですね」
「じゃあ、早く魔法の扉で先に行こうよ!」
満面の笑みでワクワクを抑えられない
「1人で行って迷子になったら大変だから、私と一緒に行こうね」
ヴェスが先頭になり、青く光る扉をゆっくりと押し開けた。扉の先の空間も青く光っていたが、中は霧がかかったように見通しが悪く、内部の様子は分からなかった。温度差で蒸気が発生したように見え、青い光を放つ炎の火事がおきて内部から煙が発生しているようにも見えた。
「扉が開いたよ!入らないの?」
期待値が上がっている
「この間と同じ感じだ。多分問題ない」
ヴェスは以前の経験から
部屋は壁が青く光っているようだったが、
若干だが壁の光が強くなった気がした。ヴェスが上着のポケットから
「やっぱり、この石が反応している」
ヴェスは思わず目を大きく見開いて驚きを口にした。
「では、手を繋ぎましょう」
ティスタは
どれくらいの時間が経過しただろうか?床に足が付いた感覚があり、宙に浮いた無重力のような感覚から、急激に身体の重量を意識するようになった。自分は立ったままだったと認識して、気を失う手前で自我を取り戻したようだった。両手を繋いでいた感覚もなくなっていて、立ったままだったと認識できたと同時に手の感覚も復活した。右手にも左手にも温かい感覚があった。みんな(正確には隣の2人)が同時に移動できたのだと実感した。
すぐに周囲を見渡した。先程までと同じ空間にいる気がした。何故なら
「みんな、無事かな?」
「はい、無事です。ヴィクトリア様」
「わたしも無事だよ〜」
すぐに左側から
全員がほぼ同時に手を離した。眼が慣れてきて先程よりも視界がクリアになってきたところでヴェスが壁側に移動した。すぐに扉らしき部分を見つけて
「こっちだ」
と他の4人に声を掛けた。声がする方に全員が固まり、ヴェスの扉の調査を見守った。壁の光に照らされた彼女の顔は青かった。
「
彼女の言葉に
「やった!!移動できたぞ!!」
ヴェスが両手を握り締めて喜んだ。
「全員がまとまって移動できた!凄いっ!白き神よ、ありがとうございます」
そう言って
「フワフワっとして気持ち良かったのに、もう終わっちゃったの?」
「ちょっと早くない?」
そう言って少し拗ねた。
「早いかどうかは出てみて日付や時間を確認しないと分からないぞ」
「ああ、その通りだ。まずは外に出よう」
ヴェスは
進んだ部屋には扉があってその先に登り階段があった。周りから音が聞こえないから地下室だと思われた。それはフォロティ側の作りと同じようだったが、階段は20段ほどで、部屋の深さが違って地下1階という感じだった。階段を登った先は踊り場となっていて、行き止まりに8段の木製梯子があった。その先の天井に金属製の扉があり、それを押し上げると開く仕組みのようだった。
ヴェスが率先して先頭を進み、梯子を軽々と登って扉に辿り着いた。あまりに軽快な動きだったので
「開けるぞ」
ヴェスは踊り場にいる4人にそう伝えた。扉を開けて何が出るか分からないので全員が身構えた。ヴェスは不安定な梯子に踏ん張って扉を押し開けた。砂や埃がバラバラと上から落ちてきて彼女の顔や服を汚したが、それを気にすることはなく力を込めて扉を押した。金属の軋む音を立てながら扉はゆっくりと押し上げられた。
まずは扉が開いた事に幸運を感じた。重たい物が載っていると開かない可能性もあったからだ。少し開いた扉の隙間から先を覗き込むと埃っぽい空間があった。明るさは充分にあってはっきりと見えた。不穏な雰囲気はないと感じてさらに扉を押し上げていった。扉は開戸だったので取手を天井方向に押し上げた後に勢いをつけて反転させた。その風圧で埃が舞い上がり、ドーンという音と振動が周辺に響いた。ヴェスの顔には埃が掛かったが気にせずに地上に上がって周囲を見渡し、安全を確認してから下にいる
そこはレンガで作られた壁に囲まれた空間だった。南側には窓がありガラスが嵌め込まれていた。荒れ果てた感じはなく、何者かによって管理されていた跡があり、ヴェスはその事に感謝した。
警戒しながら窓の外を見たヴェスは時間の経過をあまり感じなかった。フォロティの街で
「もしかしたらすぐに移動できたかもしれない」
他の4人にそう伝えてすぐに東側にある扉をゆっくりと開ける、外の様子を慎重に確認した。
扉の先には驚きの光景が広がっていた。
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