第054話 議論
『微かな希望は微かなまま』
扉を開けると眩しい光が差し込んできた。入口を警護していた兵達が
ティスタはこのメンバー構成に不安を覚えていた。
「ねぇ、ティスタ。これからドワーフの国に行くんでしょ?なんで教会の中にいるの?」
「どうやら魔法の扉を使っていくみたいなの。どんな感じなのかは私も分からないけど、たぶん普通じゃ経験できない感じだと思うよ」
そう言って微笑んだ。
「普通じゃないって、どゆこと?」
「私の勝手な想像だからうまく説明できないけど、太古の失われたと言われる魔法技術を使ったものだと思う」
「今はもうないの?」
「うん、正確には私達では生み出せない高度な魔法だよ。昔は凄い魔法があったらしいんだ」
「それは凄いね〜。私達ってラッキーだね〜」
体験した事がない
「そうだね〜。せっかくだから楽しまなきゃね」
ティスタはそう言って笑ったが、祖国が危機に瀕している状況を考えると心の中では笑えなかった。
「教えてくれ。剣士とかいなくなったが、この先は大丈夫なのか?どう考えてもこのメンバーは
その質問に
「これから使用する
「あれってそんなに便利なのか?」
「ええ、この事は教団の最高機密の1つですが、ここから辿り着けます」
そこで
「辿り着けるのは山脈を越えた反対側までだ。ドワーフの国へ直接辿り着けるわけじゃない」
その台詞に
「えっ⁉︎それは本当なの⁉︎」
「えーっ、どうしよう…私の聞いてた話と違ってる」
彼女はしどろもどろになった。
「このルートは昔使った事があるから間違いない。反対側に着いた後は、
するとヴェスが提案をした。
「だとしたら、エドワードを呼び戻すか?このメンバーでは難しいだろ⁉︎」
「でも、エディには
「戦闘力のある軍人は都市防衛させないとな。作戦を練り直すか?」
「しかし、徒歩で山脈を越えることは(標高が高すぎて)出来ないし、街道は敵の支配下にあるし…」
「なぁ、レヴィスター。お前は何か策があるんじゃないか?」
ヴェスが
「さっき抜けた先の事を話していたから、抜ける事は問題ないんだろ⁉︎お前の事だからその先も策があんだろ⁉︎」
「そうだな。ない事はない。だがその為にはヴィッキーとヴェスの
「ふっ。その為に付いてきている」
「ええ、それは全く構いません。全力を尽くします」
ヴェスの後に
「私も出来ることは何でもやります!」
ティスタも自らの意思を示した。
「それぞれの気持ちはありがたい」
「ただ、先に言っておくが、失敗したら全滅だぞ」
恐ろしい一言をさらりと続けた。
3人は一瞬だけ固まったように見えた。それでもすぐに全員が頷いた。死と隣り合わせとなるこれから先に躊躇する気持ちはなさそうだった。
「大丈夫だよ!レヴィは強いからみんなを守ってくれるよ!」
緊迫した空気を和らげるようにして
「そうだね、クウィム。レヴィスターは強いもんね」
ティスタが妹のような扱いで相槌を打った。
「あまり期待するなよ。かなり確率の低い
「もっと具体的に話してくれ」
ヴェスは少し苛立ったように声を上げた。
「ヴェスはバグディの国に行った事はないよな⁉︎」
「ああ」
「まず、
「私の時は1人だったな」
「まずそれが懸念事項だ。次に向こう側は人が住んでいないはずで、廃墟だと思われる。移動が成功しても出口の扉が開くのかわからない」
「確かにあの辺りは辺境だからな」
「次に
難点ばかりを並べる
「例え門を開けられたとしてもそこには
「
ヴェスは大きめの声を上げた。彼女にしては大声の部類だった。
「ああ。バグディに聞いた話からするとゴーレムがいるはずだ」
「えっ、ゴーレム⁉︎」
「そんなっ⁉︎」
「ドワーフが自分達を(侵略行為から)守る為に配置していると聞いた。まぁ、考えたら当然だけどな」
ゴーレムは魔法で作り出された動くロボットのような無機物体で、生命体ではない為に命令を忠実に守り、侵入者を排除する能力がずば抜けている。そしてドワーフが作り出したとすればおそらくは大地の精霊であるノームと契約した岩石などの強固な物質で形成され、凄まじい破壊力を兼ね備えていると予想された。
「まぁ、それでも地上を行くよりは
「可能性はゼロじゃないってレベルか⁉︎確率が低すぎだな…」
ヴェスは唇を噛んだ。
「
「普通ならな。そこでヴィッキーの
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