第052話 密偵
『少ない希望を手繰り寄せる』
切れ味が鋭そうな刃の反射する太陽の光が眼に突き刺さるようだった。周囲の者は眼を細めて必死に視界を保とうとしていたが、魔王と呼ばれる
ヴェスと呼ばれた
「どうした?
「これでお前を
ヴェスはそう言って
「そう思うならヴェスの腕はまだ落ちてないな」
「お前も威圧感が変わらないな。いや、もっと凄みを増したかな?」
2人を取り囲んでいた周囲の人達はその会話と雰囲気についていけなかった。
「これのおかげで助かったよ」
ヴェスは右手の
「へぇ、それが役に立ったのか?じゃあ、かなりピンチだっただろ?」
「ああ、かなりヤバかったな。人生で1番死に近付いたよ」
ヴェスの表情に苦笑いの色を含んでいたが、それでも楽しそうに笑っていた。
「後でゆっくり聞かせろよ。死にかけた話が1番笑えるからな」
「ふ〜ん。笑うんだ」
ティスタは正直な感想をぼそりと独り言した。カルドは口にしなかったが同じ感想だった。「氷の魔王」という異名がある
「いつまでふざけておられるの?」
彼女は金色の長い髪を肩甲骨あたりまで伸ばし綺麗に切り揃えていた。両耳の上あたりから一部の髪を編み込みながら後頭部に流して、白大理石に
領主である
「レヴィスター様もヴェス様も(ふざけるのは)そこまでにして下さい。事は急を要するのですから」
そう指摘された2人は視線だけ移動させて
「はい、分かったよ」
そう言ってヴェスは
「ありがとう。仲良くなさってね」
「まずは我が国の状況から話します。現在は
「残念ながら父上の状況は不明です」
そう言いながら視線を伏せた姉を見て、
「ヴェスは父上から伝言を授かって私の元まで最速で辿り着いてくれました」
ヴェスに向けて小さく会釈して言葉を繋いだ。
「伝言は『エディがレヴィスター様を召喚してくるはずだから、力をなってもらえ』との事でした」
「えっ⁉︎」
「父上は
「大丈夫。エディはしっかり役目を果たしたわ。それに父上が亡くなったという情報はないの。だからまだ諦める事はないわ」
弟の方を見て大きく頷いた。それを
「そしてこれからはドワーフの国へ向かいます。彼等に援軍を求めるためです」
これからの話で
「姉上。お言葉ですが、それは無理です。道も国交も希望が持てません」
その時会話に横槍が入った。
「で、ヴィッキーは俺に何を期待してるんだ?」
「ふふっ。子供の頃のようで懐かしいですわ、レヴィスター様。私は貴方に大いに期待していますよ」
彼女よりやや背の低い
「
「えっ⁉︎」
フォロティの街で彼が思いたが諦めた策に対して
「でもそのためにはヴィッキーが不可欠だ。だからわざわざここまで来たんだろ?」
「よくご存知ですね。この先のフォロティからドワーフの国を目指します」
「ほぅ、ってことは、
「えぇ、認めます。それくらいに追い詰められています。だからあなたにはこの窮地を挽回するために力になってほしいのです」
そう言って柔らかな表情で微笑んだ。それから覚悟を決めたような眼で
「エルフとドワーフが合わないのを知っているだろう⁉︎」
「ええ、知っています。それは一般的に言われている事であって、レヴィスター様と
「どうもジョージに吹き込まれている事があるみたいだな。俺とバグディ(巖穣王の仲間内の愛称)はあの中では仲の良い方じゃないが、一般的な通説よりはマシかもな」
「でも、貴方達の昔の縁を頼るつもりはありません。問題は彼の国に辿り着けるか分からない事です。その為にレヴィスター様のお力が必要なのです」
「さすがは
「私の立場は神の思し召しと皆様のお支えによるものです。それよりレヴィスター様は
「ああ、知っている」
「まずはその事でお力をお借りしたいのです」
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