第044話 登壁
『巨大な絶壁は人類を寄せ付けない』
精神を集中させていく銀髪の
ティスタは
精神集中が高まってから
「地の精霊を統べる偉大なる王。持てる能力の一端を発揮し、我が願いを成就せよ。
呪文を唱え終わると、
絶壁の方から「ゴゴゴッ」という大きな音がしてそれが周辺に鳴り響き、土色の絶壁が左右に裂けて、その隙間から褐色の坂道のようなものが見えた。それは絶壁の中に造形されたジグザグの坂道で、裂け目の中を奥に向かって上昇していける道になっていた。裂け目から差し込む陽光で手前の一部だけが見え、坂道の全容はわからなかったが、恐らく絶壁の頂上まで続いていると思われた。元々絶壁の内部に存在している階段状の坂道が
「レヴィ、これ何したの?」
「登りやすくしただけだ」
「あれを登るの?」
これから凄まじい高さを登らなければならないにも関わらず、
裂け目の幅は人が1人通れる程度のやや狭目の幅だったので、体格の大きな
「すごーく高いねぇ、レヴィ。でも、途中で休むとこあるの?」
坂道は人が離合できる程度の幅があり、踏ん張りながら登らざるを得ない角度だった。見上げてみると階段状の坂道が延々と続いており、薄暗い絶壁の切れ目の中で光も足りず、坂道の頂上は見えなかった。
全体の1/4程度の高さまで登ったところで休憩をした。全員が登ってきた方向を向いて坂道に尻を着けて座り、水分を摂ったり、携帯食を口にしてエネルギー補給をした。絶壁の裂け目は半島の地上部分と比べて若干ではあるが細くなり続けていて、階段状の坂を登るほどに暗くなっていた。太陽はさほど高い位置に上がってはおらず、順調に登坂できているようだったが、これから疲労が蓄積されてペースが遅くなる可能性が高いことを考えると、この速度のままを維持するのが理想的に思われた。その認識は共有されていて全員が無駄口を叩くことなく、誰が言い出したわけでもなく休憩を切り上げた。
5人は登り続けた。エネルギーの消耗を防ぐ為に無駄な会話をしなくなり、ほぼ黙歩という状態だった。ただ
次第に絶壁の裂け目はなくなり、完全な竪穴となった。下方からの光が空間を少しだけ明るくしていたが、高度が上がるにつれてそれも厳しくなっていった。脚元が見えなくなる前にカルドが火打石にナイフを打ちつけて火花を起こし、準備していた麻の紐に引火させた。その火をガラスと金属でできたランタンに移し、手に持って先頭で坂を登った。ランタンから漏れる光で足元は十分に照らされて歩くのに苦労はしなくなった。
数回の休憩を挟みながら、ほぼ丸一日登り続けた頃に行き止まりが見えた。
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