第043話 目覚
『驚異を平然と実施する驚嘆に値する驚愕』
「少しでも眠れたか?」
「起きていたのか?」
咄嗟の事で質問に回答できず、朝の挨拶も飛ばしてしまった。それを気にする様子のない
「寝た。ずっと起きていたわけではない。まぁ、何らかの気配あって何度か目覚めたがな」
「僕は少し眠れたよ」
第一王子「エドワード》は
「そうか、それは良かった」
「この森で眠れるのは恵まれている。そして図太い神経を持っている証拠だ」
そう言って微笑みがニンマリとした笑顔に変わった。でもその笑顔に嫌味な色はなく、純粋に眠れた事を喜んでいるようだった。
「
2人の会話が影響したのだろうか?ティスタが目を覚ました。両手を頭上高く上げて身体を伸ばし、「う〜ん」という低めの声を出した。彼女も眠れていたようだった。
「あっ、おはようございます、エドワード様」
すぐに臣下としての応対をして、両頬を両掌でペチペチと軽く叩いた。これは彼女が朝起きた時に必ずやっている癖だった。そしてすぐに隣で寝ている
するとその対の位置でカルドが言葉にならない程度の低い声を出しながら、左手を背中側の床について上半身を起こした。その動きはゆっくりだったがふらついたりする事はなくて力強く、前日に多大なダメージを負った者のそれではなかった。
「おはよう。大丈夫か?」
「おはようございます。大丈夫です。信じられないくらいに!」
その表情はとても明るく笑顔で、体調が良い事が伝わって来た。その様子を見た2人は安心して、ティスタは少し涙ぐんでいるように見えた。
「良かった…。回復して本当に良かった」
カルドを見つめて何度も頷きながら、気持ちを込めてそう言った。
「これはクウィムの魔法のおかげだと思う。昨日の朝と同じ位の感覚だ」
カルドは上半身をやや起こしてから、背中の後方に位置していた左手を身体前に動かして、自分の両掌を見つめながら驚きの表情で呟いた。思わず両手を強く握り締め、体調が戻って力が
3人の盛り上がりに対して
「みんな、おはよっ」
「おはよっ」
「クウィム殿。貴殿の魔法ですこぶる体調が良いようだ。感謝申し上げる」
固い性格の彼らしい言い方だったが、クウィムは気に留めた様子もなく、
「あっ、元気になって良かったね。私の魔法が役に立ったのなら嬉しいよっ!」
と言って、カルドを見上げながら満面の笑みを返した。
全員で出発の準備を始めた。まずは干し肉を食べて腹を満たし、荷物を1日分の非常食と水だけに最小化して、武器や防具もそのほとんどを小屋に置いた。少しでも荷重を軽くしなければ、大陸と半島を分断する絶壁は登れないからだった。
これまで馬車を引いてくれた2頭の馬はここで解き放たれた。
小屋からは徒歩で絶壁に向かった。道は全くなくて、獣道さえも見当たらず、先頭の
絶壁を降りる時はロープを垂らしてそれに沿って少しずつ降下すれば良かったが、登るのはその何倍もの労力が必要だと思われた。絶壁の麓から見上げるとその頂上がはっきりとしなかった。
「これを…登るのかっ⁉︎」
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