第039話 懐疑
『満月の裏側は暗闇』
太陽の角度が西の空で低くなり、作り出す影が次第に長くなっていた。気温が真昼と比較すると下がっていたが、魔王の樹海は熱帯の為、その差を大きく感じるような事はなかった。
カルドが
カルドはそれに感謝しながら、自分を救ってくれた
そのカルドの横を
「心配だから念の為に行って来る」
と言ってから背を向けたまま上半身だけを捻って顔をティスタの方に向けて続けた。
「ティスタはカルドの介助を頼む」
それから
「かっ、彼女は安全なのか?」
重労働並みの移動で喉がカラカラになり声が出しにくかったが、心配で焦る気持ちを落ち着かせて、息を整えながらそう聞いた。高い攻撃能力があり破壊力と凶暴性を併せ持つ獣が追い込まれて「窮鼠猫を噛む」という状態で反撃をしてきた場合に恐ろしい被害が出るかもしれない。その可能性が消えている事が確認出来ていない状況で
「俺の魔法の威力を見ただろう⁉︎動ける筈がない。それにクウィムはよく分かっているから大丈夫だ」
その
「なっ⁉︎…、えっ⁉︎」
「止めるんだーー!!」
条件反射に近い反応で大きな声を出した
その1歩目を踏み出そうとしたが、右下腕部を
「何をするっっ!」
「このままでは獣が復活してしまう!」
そう言って右腕を振り回して
人間より小柄かつ華奢なエルフが日々鍛えている人間の剣士を片手で止めているのは驚きの光景で、
「レヴィスター!離してくれっ!!」
「人間の価値観だけを押し付けるのはやめろ」
その口調は強くはなかったが、その表情は厳しく、その視線は冷たく強烈な威圧感を放っていた。
「止めろーーーっっ!!!」
「思想は一つだけではない」
と言ってから
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