第033話 壊滅
『圧倒的な暴力がもたらしたもの』
張り出した廊下に上からの強烈な衝撃が加わり、瓦礫と粉塵をまき散らして建物の一部が崩壊したが、時間の経過とともに瓦礫の崩落は止まり、それからさらに時間が経過して粉塵は風に運ばれて大気中に散り、その濃度は希釈されていった。
エリスの
「そっ…、そんなっ…」
痛みと疲労で片膝を床に付いていたエリスはあふれる涙を止める事ができず、悲鳴を上げないように口を手で押さえて耐えていた。
瓦礫の中には廊下や天井の崩落に巻き込まれた筈のその者が何事もなかったように佇んで立っていた。石造の天井や壁がその者の頭上から降り注いだ筈なのに、負傷するどころか傷一つ見えなかった。奇跡的に瓦礫がその者を避けたように落ちたという事はなく、足元には無数の瓦礫が散乱していた。その者の妖しく赤く光る眼は2人の方に向けられているようで、その迫力はまるで
そしてその者の背後には
エリスは片膝をついたまま、声を殺して泣いていた。声を漏らさないように左手で口を強く押さえていた。その昔彼女は横にいる
静かにその者が左手を2人の方に向けて持ち上げた。それから聞き取れない言葉を呟き出した。恐らく呪文を詠唱しているようだった。その動きを見たエリスは本能的に反応して絶望感から離脱して、防御の為の呪文を唱え出した。
「絶大な御力のうちの僅かな恩恵を敬虔な申し子にもたらし給え。
その者よりも先に呪文を唱え終えると
「何をしてるのっ!!」
そしてその者が左手を2人の方に向けてかざし、手のひらから赤黒くて強い光が
膠着状態でほとんど動かなかった
この状況になると王都軍は
「退却の鐘を鳴らせ…」
苦虫を噛み潰したような表情で軍事卿のルードスは王都軍司令部の士官に指示を出した。王都軍は懸命の防衛で市民の脱出作戦を完遂させていたが、その後の市街地や王城の防衛は
合図の鐘に従った王都軍が北城門から退却を始め、順調に場外への脱出に成功していった。それは
その時、建屋の中から赤黒光がレーザー光線のように王城を突き抜けて、その光を中心に2階部分等を含む円形の大穴が開き、その円形部分が瓦礫となって王城前の庭園に飛び散った。その破壊力は火山が爆発したかのような強さで、王城一帯で地震が発生したように地面が揺れた。
崩壊していく王城東側から黒い影が飛び出した。落下してくる瓦礫や舞い上がる粉塵を物ともせず、翼を羽ばたかせた
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