第026話 禁秘
『禁じられたものに込められたものが混乱を生み出す』
得体の知れない悪臭が辺り一面に漂っていた。沢山の物がごちゃ混ぜになって突然焼却された為に例えようのない臭気になっていて、吐き気を催す程の醜悪な臭さだった。
王城の敷地内に入った
細心の注意を払って王城に近づいていったが、破壊の権化である
「ジョージ王陛下!ご無事で何よりです。しかし何故こちらへお越しなのですか?」
「エリス様も従者を連れておられず、お2人だけとは…」
矢継ぎ早に言葉を発していた王城の住人達は戦地を離れている2人に疑問を感じたようだった。その時住人達の後方から王妃が追い付いてきた。王妃は埃などで髪や顔や衣服が汚れていたが、毅然とした態度で夫である王の前に進み出た。
「非常時の為に慣例の作法は省かせて頂きます」と言ってから続けた。
「国王陛下におかれましてはご無事で何よりでございます。城が突然破壊されてしまい、留守を預かる者として痛恨の極みです。被害の状況はほとんど把握できておりませんが、東側にいた者は全員避難できた事は不幸中の幸いかと…」
王妃は昂る感情を必死に抑えて役割を果たそうとしていた。身体は小刻みに震え、顔面は蒼白になり、瞳には涙を溜めたまま、それでも国王への現状報告を精一杯に努めた。
「人に被害がなかったはそなた達のおかげだ。皆無事で何よりだ」
その言葉に王妃は堪え切れなくなって声を殺して涙を流した。それでも毅然とした態度は変わる事はなかった。
「王妃として当然の事をしたまでです。ただ西側にいた者達の安否は不明です。ほとんどの者が
王妃は震える声でもはっきりと聞こえやすい話し方で答えた。
「貴方とエリス様はどうなさるのですか?一緒に避難しないのですか?」
その顔は王妃ではなく、夫を心配する妻のものになっていた。
「
王妃は国王の表情や声の調子からただならぬ雰囲気を感じ、共に避難する事は叶わないと悟った。夫はこれまで多くの功績や戦績を上げて生還し続けて来た戦士であり、冒険王と市民から親しまれる立派な国王だ。王妃は彼等の武運を祈って送り出すしかないと決意した。
「かしこまりました、陛下。御武運を!」
そう言って、正式な儀礼の通りに会釈をしてから、国王に別れを告げた。その顔には優しい微笑みと涙を浮かべながら。
窓ガラスはその多くが割れて破片が至る所に飛散し、一部は壁や床に突き刺さっていた。その壁や床もたくさんのひび割れがあり、建物としての強度は著しく低下していると思われた。2人とも甲冑の一部として金属製の靴を履いていたので足裏を怪我する事はなかった。月明かりが割れた窓から差し込んで廊下や部屋を照らしていたので、暗闇で進めないという事はなかったのは神の思し召しに思われた。
通用口から数十歩進んだ場所で2人は歩みを止めた。正確には
エリスは急に立ち止まった
「突然止まってどうしたの?」
「…、あれを死守せねばならん。例え生命に代えても…」
エリスは自分に向けられていないような答え方に感じた。
「あれが、もしかして、ここにあるの?」
「まずはあれの無事を確認しなければ…」
そう言ってエリスを一瞥した
すぐに右膝を伸ばして立ち上がった
「敬愛する白き神々に謹んで申し上げる。御身の
呪文の内容から
濃白光はその色を次第に銀色に変えていき、放たれる光量ははさらに強くなっていったために、まぶしさに耐えていた
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