第025話 目的
『それぞれの思惑がそれぞれの目的を作る』
鼓膜を破りかねない凄まじい轟音と共に巨大で強力な雷が『
翼を羽ばたかせながら空中を浮遊していた
戦闘前の緊張状態にあった東城門付近からでも、王城の中心部分一帯がもろとも吹き飛ばされたのが分かった。それは
軍事卿のルードスは近衛兵団と入れ替わるように軍隊に指示を出し、
「陛下、先頭に立って頂いて全軍を鼓舞して戴き、誠にありがとうございます。陛下をお守りするにはもう少し後方で戦況を見守って戴けると幸いです」
と言って、
「そうか。ではすまぬが、この現場はそなたに任せて良いか?」
と言った。ルードスは心配事が霧散して少し肩透かしを喰らった気分になったが、彼の望んだ結果になった事に安堵していた。ルードスは
「
と大きな声で周囲の部隊に指示を出し、その指示はさざ波のようにさらに遠方の部隊に広がっていき、混乱しかけていた軍隊の規律や士気は次第に取り戻されていった。
「ファナルマークスよ、私はこれから王城に戻る。
その表情は鬼気迫るものがあり、ファナルマークスは気圧されそうになった。その圧力に、初めて王に謁見した時の緊張感を思い出していた。
「はっ、畏まりました!しかし陛下はなぜ今王城へ赴かれるのですか?確かに被害状況は気になりますが…」
近衛卿は王命を律儀に拝命しながらも、ふと不思議に感じた
「
それはファナルマークスの質問に回答した感じではなく、やや小さく低い声で独り言のようだった。しかし次の発声は大きくて力強かった。
「では、ここの死守を頼んだぞ!」
そう言った後、態勢を整えていた兵隊達の間をかき分けて進み、少し後方で
「どうしたの?前線を離れて…」
エリスの声は透き通った水のように清々しく、一瞬そこが戦場である事を忘れさせる程に精神を癒す力を持っているようだった。しかし、その声の雰囲気とは違って、彼女の表情はジョージに合わせて真剣なものになっていた。長い付き合いの中で彼がこのような雰囲気を身に纏った事は数える程しかなく、そのどれもが窮地に陥った時に発出されていた事を忘れていなかったからだった。
「…、あれを守らねばならん…」
王の表情を見て台詞を聞いたエリスは只事ではないと感じてすぐに、ある事を思い出した。その記憶は数々の修羅場を潜り抜けてきたエリスでさえ大きく動揺させた。
「えっ、あれって…。もしかして…!?」
エリスは血の気の引いた顔になり、急に体調を崩したかのように
「…、行かなきゃ…」
エリスは強い悲壮感を滲ませた表情で呟いた。そして側にいた
それからの2人の動きはとても速かった。馬を待機させていた前線の最後方まで全速力で駆けていき、すぐに馬に乗り王城へと
王城に近づくにつれてえぐられた部分がとても大きい事に気付かされた。東王城門の手前まで着くと2人は手綱を引いて馬を止めた。馬は長い距離を走ったために限界に近くなっていて、その場にへたり込んでしまった。その為2人はすぐに下馬して少しだけ馬を引いて、王城門の馬留に手綱を括り付けて休ませた。
東王城門からでも巨大な落雷を受けた王城の被害状況が甚大である事は一目で分かった。建屋の中央部分にあった塔がその周囲の建物と地面ごとえぐられてなくなっており、クレーターのようになっていた。えぐられた穴の最深部が見えないほどに深く、凄まじい破壊力だった事を物語っていた(もちろん2人には穴の大きさや深さが分かる事はなかったが)
「あれが目的となると、滅亡するかもな…」
「あれが目的だったなんて…」
2人は閉じてあった東王城門を開け、王城の敷地内へと入って行った。
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