第019話 破壊
『現実は想定を軽々と凌駕する』
今回の闘争の発端となったブルオードから
ヴェスが命を賭して情報をもたらしてくれたおかげだった。彼女によるとあのレヴァスター・ガイクスのおかげらしかった。
彼と一緒に大陸を隅々まで冒険していた頃に世界には現代の魔法レベルを凌駕する超魔法が存在すると聞かされていたが、剣士のエドワードにとってそれはあまり関心のない話だった。剣士にとって魔法とは実体の見えない不可思議なものであり、その分野に才能がないため実感を伴うことがほぼなかったからだ。
しかし今回は恐らくその魔法技術を活用して仕掛けを準備していたレヴァスターのおかげで、盟友の1人を失う事なく貴重な情報を得る事が出来たのだから、彼の魔法への知識と才能に感謝せざるを得なかった。
家屋3軒分の高さを誇る外壁は
外壁の上部は人が横に並んで5人歩ける程の幅があって外壁上を一周でき、そこを警備兵がひっきりなしに周回して
太陽が沈み込む手前で空を赤々と染め上げていた。平時であれば美しく感じるであろう夕焼けだが、緊急時の今は不吉な色に感じられた。
西側以外の全ての外壁門が金属が軋む独特の轟音を立てながら閉じられようとしていた。外壁の外へ出ていた市民が急いで外壁門をくぐって中へ入ってきた。門の警備兵は壁内に入り損ねた人がいないのを確認して門扉を閉じた。全ての外壁門が閉じられるのはかなり久し振りの事で、ジョージ王の御代では初めての事だった。事態はかつてない程に緊迫していることを物語っていた。
外壁上の屋上通路には篝火を焚く準備がされており、日没に合わせて火がつけられた。その炎が放つ光は揺らめきながら周囲を照らし、外壁の輪郭を綺麗に映し出していた。それは緊急事態宣言が発令されているこの状況には似つかわしくない光景に思われた。もしも上空から
篝火がパチパチと音を立てながら爆ぜた。ほとんど無音の静かな夜の闇の中ではそれは大きな音だった。敵国に侵攻されているこの状況で貴重な静寂の夜だった。外壁上で警備に当たる兵達の中で
静かに過ぎていた時間が切り裂かれたのは深夜に近い時間だった。ブルオードとは反対の東側の外壁門付近にバサバサと何かが羽ばたく音が響いていた。門の上部通路で警備する兵達の眼にかろうじて映ったのは暗がりの中で羽ばたきながら浮かぶ巨大な生物だった。
それはこの世界の支配者、
本来であれば発見した兵士達は大声で叫ぶなどして敵襲を知らせなければならなかったが、
それから更に目を覆いたくなる前代未聞の事態が発生した。
有史以来発生した事がないと思われる合計4体の支配者による蹂躙によって
もはや人間に対抗する術はなく、天災が過ぎ去る事を祈りながら絶望するしかないと思われた。
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