第005話 魔王
『圧倒的な力に人は恐怖する』
最大限の敬意を払って依頼をしてきた
彼の属する王国・
「断る」
レヴィスターはエドワード王子の正式な申入れを素っ気なく、かつ、冷めた回答で拒絶した。大きな期待を寄せていた
「無礼だぞっ!レヴィスター!!こちらは王族自ら出向いて正式に依頼しているのだっ!これは国王のジョージ様の御意志であり、そなたには国王様から受けた恩義もあるであろう!」
カルドは鍛え上げた身体を震わせながら最敬礼の姿勢を解いて素早く立ち上がり、銀髪の
「そちらの誠意ある態度は分かっている。立ち話も疲れる。ソファに座るがいい」
冷静で冷ややかな口調は変わらないが、レヴィスターは3名を諭すようにして円卓の周囲に座らせた。そしてすぐにクウィムに何かを指示した。彼女は指示に従ったようで応接室から出た。
「彼女がいても支障はなかったが…」
エドワードが二の句を継ぐ前に
「客人をもてなすために準備を頼んだだけだ。気にしなくていい」
とレヴィスターに流れを遮られ
「人間共の醜い争いに俺が興味を示すと思ったのか?だとしたら、ジョーも歳をとったな…」
相変わらずの抑揚のない口調でそう呟いた。自国の王を侮辱されたと感じたカルドが再び立ち上がってレヴィスターの台詞に反論しようとしたが、またしてもエドワードに制されてしまった。
「
そう言われた
「レヴィスター。僕は貴方が王国の戦争に興味を持たない事は重々承知している」
エドワードは自分が子供だった頃の話し方に切り替えたが、レヴィスターは冷気を帯びたような視線を変えずに微動だにしない。
「2ヶ月ほど前から我が国と
エドワードは視線をそらさずに続けた。
「そしてその戦線で我々は苦戦している。僕は援軍を連れて王都に向かう途中で父からの早馬の伝達を受けて、援軍を弟に任せてここに来た」
レヴィスターの表情に変化があったように感じたのはエドワードだけだったようだ。
「父からの伝達は『魔王を召喚せよ』だった」
カルドとティスタにも分かるくらいにレヴィスターの表情が険しくなった。
「そして早馬は『王都陥落』とも言った」
銀髪の剣士の表情は固まったかのように変わらなかった。エドワードは変わらない口調で続けようとしたが、無意識の内に次第に熱を帯びた話し方に変わっていった
「あの父が貴方を『魔王』と呼んだ事。そして王都が陥落した事。僕が王都を離れる際に父からこの二つの条件が揃った時、ここに来て貴方に助けを請えと耳打ちされていた」
王子は自らの熱の昂りに誘われておもむろに立ち上り、両拳に力を込めて叫んでいた。
「僕は父の耳打ちを信じて配下の精鋭を10人も失いながらここに来た!彼らの英霊に報いるために手ぶらでは帰れない!長い歴史の中でこれほど戦況が悪かった事はないんだ!これはもう王国の存亡がかかっている命を賭けたお願いなんだ!!」
レヴィスターはソファに座ったままエドワードを見上げて呟いた。
「そうか、ジョーの意図は分かった」と。
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