第004話 依頼
『期待の大きさは絶望を大きくする』
草と樹木の枝葉による鬱陶しい程の緑の壁と高い樹木が落とす影によって薄暗い緑色の空間が続いていたが、歩くのにやや疲れを感じていたころに前方から光が差してくるのが見え、前方に開けた空間があるのが分かった。それだけで少し疲れが軽くなった気がした。
レヴィスターの邸宅はその湖畔にあったが、それは家ではなく城の規模の大きさで、レンガ造りの高く分厚い城壁があり、壁の中央には大きな鉄の門が構えてあり、門から中の様子はうかがい知る事は出来なかった。城壁は翼を持つ生物でなければ越える事が出来ないほど高く、
壁の中央にある門に差し掛かったところで先頭を歩くレヴィスターが足を止め、おもむろに左の手のひらを門に向けて目線の高さまで上げて「解錠せよ」と呟くと、重たいはずの鉄製の門扉が金属のこすれ合う音をたてながら奥に向けてゆっくりと開いた。開かれた門から全員が敷地内に入ると、レヴィスターは振り向いて開門した時と同じ体勢をとり「施錠せよ」と呟き、鉄の門は館主の声に忠実に従った。門から先は石畳の道が真っすぐ伸びていて、道の両脇には先程まで歩いていた
エドワードに付き従う
ティスタは銀髪の『魔法』剣士に背筋が凍る恐怖に似た驚異の念を感じざるを得なかった。
石畳の真っすぐな道を抜けた先に白と黒の大理石を基調とした1階建ての豪華な邸宅が姿を現した。それは王国の地方領主が住んでいてもおかしくない佇まいで、レヴィスターとクウィムだけで住むには大きすぎる規模に思われた。黒大理石の枠に黒い金属製の扉で出来た玄関をくぐり、円形をした応接室に通された。部屋の中心には円卓があり、それを囲むように同じ円形の重厚なソファが置かれていた。ソファは出入りが出来るように2箇所の空間を設けるように配置されていた。
レヴィスターはエドワード達をそのソファに誘導したが、エドワード達3名はそれを遠慮するように応接室の入り口で何かを思いつめた顔で立ち尽くしていた。それはとても重苦しい雰囲気の尋常ではない表情で、彼らの抱えている事情が非常に切迫している事をうかがわせた。白衣の剣士は意を決したようにして左膝を立てて右膝を床につけて屈み、右手で作った拳を垂直に立てた左の手のひらに合わせて胸の前に掲げて、やや首を垂れて視線を落とした。それは儀礼に則した最大の敬意を払う姿勢だった。一つ後ろに付き従うカルドとティスタも同じ姿勢をとった。
そして静かに、しかししっかりと響く声で次のような口上を述べた。
「
最大限の誠意を示す姿勢と口上は
口上の余韻が応接室に残る中、エドワードは静かに目を閉じ、レヴィスターの回答を待った。
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