第27話 サブエピソード「魔術師の告白」
「おい!ネタは上がってんだ、さっさと白状しろ!そうすれば日本じゃ刑が軽くなるんだ。
おまえにとっても美味しい話だろ。身元は保証してやるから」
暗くて四角い無機質な部屋で、机と椅子が二つ、机には数々の証拠物件を載せた写真の数々。警察庁の尋問室だ。
机に並べられた痛々しい写真は、彼を確実に追い詰めているはずなのに、なぜか彼は笑っている。
「俺も魔術というものが本当にあるのかは分からないがそれでもおまえが使った手裏剣のようなものは完全に傷害罪、殺人未遂、銃刀法違反になる。あるいは死刑になるかもしれんな?ええ?」
魔術師は、気持ちの悪い薄ら笑いをしながらヘラヘラしている。魔術師の意識は刑事たちに向いてはいない。自分の頭のなかで何者かと話しているのだ。
だが、突然こっちを見て、ギロリと目を動かすとこう言い放った。
「ひひひ、ははっははっくひひ!お前らは何もわかっちゃいない。どうせ、この世ももう終わりだ。残りの人生せいぜい楽しく暮らすんだな」
「そんなことは聞いていない!」
「おい、ちょっと待て」別の刑事が横槍を入れる
「なんだ?」
「おまえ、なんでそんなに断言できる?俺たちもことの全容はあらかた掴んでいる、なぜだ?なにが違う?俺たちとおまえ」
魔術師は、豪快に机の上に足を投げ出して、椅子をキイキイ言わせながら傾けている。
「あーだりぃ。俺の世界じゃ、いったん敵に捕まえられたら地獄の拷問が待っている。そういう世界を生きてきた俺がこんなぬるい奴らに。はあ、あんまりぬるすぎるんでヒントはやる」
「分かった、この供述は録音されるがいいか?」
「構わねえな、いいかそもそもこの世は当初、これほどの紛争や思想や混乱が起きるようには設定されてなかった。神は完全な調和をこの地に与えそして来るべき時の邪悪な神に打ち勝つための用意をしていた。つまり俺たちのいるこの世界は神が邪悪なすべての者と決着をつけるために用意した世界だった。しかし人間たちは百人いれば百通りの考えを出した、それは神が楽園のリンゴを邪悪な神々の手勢であるサタンに人間に食べるようそそのかしたからだ」
「ふむ、なるほど、で?どうしてこんな暴挙に出た?」
「はは、大方なにかの悪魔崇拝の邪教との妄言としか思ってないな?いやそれでいい、これはその程度の真実がお似合いの話だからな、まあ俺なりにアレンジした創世記の話さ、マジな話をすると俺を雇っている側が何を言い出すかわからないんでねえ」
「うるせえ、てめえの妄言なんざどうでもいい、それでなんでこんな真似をしたこれから何を起こそうとしてやがる」
「おれは、お告げを受けたのさ。神に従うものがいるように神に反するものがいる。協会側がこれ以上ない他宗教との結託を選択した。神は近々この世に審判を決しようとしているとな。けれども俺に話しかけてきたものはまったく違うことをいった
くくく、と俯きながら射ぬくような目でギラリと見つめてくる。そいつの言ってることはどこか狂っている。だがなにか説得力がある気がしてしまう。
「ふう、そういうことか、こっちとしては迷惑な話だが日本は日本だ。宗教に対してわりと自由な国だ。だからおとなりで紛争があっても心配はするがそんなことがあるとしか気にしない。今、日本の人間たちは今も銃や弾丸が飛び交う戦場を知らない」
「そういうことだよ、でついでに教えておいてやろう。あの小娘のことだ」
「何ぃ?貴様!」
「あの織花という娘にちょいと手品をしこんだ。そろそろ発動してるころだぜ?俺からのプレゼントだ。ありがたく受け取ってくれ」
「しまった。おい空母の方に連絡入れろ!」
時すでに遅しちょうど賢治たちが世界の底の降りたところだった。
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