「戦火の暗殺者」

第16話「放課後の戯れ」

 放課後、生徒たちが勉強の緊張から解放されて威勢良く部活へ向かう者や下校する者であふれていた。豊村 伊佐は、桜花 友恵と一緒に剣道部に向かっていた。剣道部の見学ついでに桜花 友恵はこのなんだか底知れないクラス一の美女に一緒に歩くだけでも顔が赤くなってどうしようもないのだが、天拳流古武術の師匠の孫娘と手合わせできるとなると物心ついたときには竹刀を握っていた少女剣士は、不思議と気迫がみなぎってくる。。

「豊村さん、天源流ではどんな稽古するんです?」桜花 友恵はそんなことを聞いた。

「ああ、まず体力と筋力をつけるんだ。といってもわたしも女だからその、ボディビルダーのような体はいやだから自分自身で細身だけど瞬発力とパワーと持久力のある筋肉をゆっくりゆっくりつけていくんだ。そうすると細くて女らしい柔軟で引き締まった筋肉がつく」

「ええっ、伊佐さんぜんぜんスタイルいいし、触るとやわらかいしこれでもそういえば300kgを片手で上げてましたよね。すごいどうなってるの?」

「まあ、生まれたときからやらなかったら無理な鍛え方だよ。だけど体力と筋力は基本中の基本。そこから技に入って打投極の一つ一つを極めていく。でも、天源流の真の技は一つだけ。小さい頃からずっと練習してできるようになる。それを知るための技を、名を『神技』と呼ばれるものの習得が真髄。そしてそれを経て知ったことを奥義とする」

「『神技』・・・・・・ですか?」

「そう、人間の究極的な所に存在する技。神に通づる技。たとえば、たちどころに病気の人を治す。水の上を歩く。千里の彼方を見通す。目を閉じて全てを察知する。壁を歩く。宙に浮く。飛ぶ。触れていないものを動かす。といったものだよ」

「それ・・・・・・人間に可能なんですか?」

「うーん、私の流派でいうと正確には無理なんだけど。だって神様が決めた法則を人間も森羅万象もその法則にそって動いてるんだから。でも天源流というくらいだからね、天の源を知ることがわが流派の奥義なんだ。だからね『神技』の習得はけっして必須じゃない。天源流が示す真の技、‘一なるもの’と呼ばれるものを知ることを奥義とする」

「うー、難しいなー。単純に強くなればいいんじゃないんですか?」

「まあ、今だだれもその奥義に到達してないから内の門派の誰もね、‘一なるもの’もただの名前で奥義そのものを言うものではないから。そうだな、内のご先祖様の我が流派の創始者と明治の継承者の一人が、それに一番近づいたとは言われてはいる」

「えーと天源流の明治の達人って、豊村 光臨?」

「そう、その人。彼は、『神技』の一つを体現した人で、相手を触れただけで力自慢だろうが武術の達者なものだろうが自由自在に操ったといわれてる。小さい頃から鳥や獣と話が出来て遊んでいたというし。ものすごい人格者だったから指導者としても名前が残っている」

「知ってます、その人の映像見たことあります。ネットで動画がアップされてて。最初はただの催眠術かなとおもったんだけど、わたしも剣の腕前が上達していってだんだんどうやってるのか分かったんですよね。でも同じ事をやれっていわれたら出来ないです」

まあ、天源流を十年間やると一人前とみなされて拳士の称号を与えられる。公的にも称号が資格と同一視されてるから、拳士になれば、いろんな国の権利を使えるし。習得しようとする人は多いけど、みんな邪心があるとどうしても技が濁るから、そういう人は十年ももたないよ。孫娘の私は必然的に他の弟子より強くなくちゃいけないからそもそも目指してるところが違うし。もうなんていうか、そこからはまあ家の秘伝だから教えられないな。けどわたしも最終的には現在わたしよりも技のある奴はほれ、あの金髪の私の連れくらいだから跡を継ぐことになるかも」

「え、ちょっと待ってくださいあのふ、藤沢なんとかっていう不良の人はそんなに強いんですか?」

「うん、たった一ヵ月でじいちゃんに教えることはもうないと言わせたほどだからな」

「へえー、あんな不良が。へえ、って!そんなに強くなっちゃったら反則じゃないですか!きっと技を悪用しますよ!?それに伊佐さんより強いなんてちょっと信じられないし信じたくありません!」

「あのだからね、賢治は不良じゃないし、そもそもあの金髪も地毛だし、それに邪心のある奴はもたないっていったじゃないか」

「伊佐さん、この世にはどうしても絶対にはびこってしまう悪というものがあるのです。あの人はさしずめそれです。伊佐さんもあんな危ない男と一緒にいるとなにをされるかわからないですよ。もうていうか伊佐さんともあろう人があんな男と一緒にいるなんて悪夢ですよ。伊佐さんはすこし頭が良すぎるから男を勘違いしてるんです!伊佐さんの優しい心につけこみやがってー!あんなやつ、私が竹刀で一発灸を据えてやります」

「あいつはどう説明しても不良として認知されてしまうのか。なんという可哀想な奴なんだろう」

「ああ、またいくら伊佐さんは心が広いからってあんなクズにも情けをかけるんですか?やはり私の目標である伊佐さんはすごいです」

「え、わ、私が目標?」

「そうですよ。わたし、ひそかにいろんなことで伊佐さんの記録に挑戦してるんです。知らないんですか?この町では伊佐ギネスなるものがあってぜんぜん学校の表にはでないけどここは結構いろんな分野の専門の先生が、伊佐さんの発言やノートや記録はいろんな技術者が驚愕してるんですよ。ここは結構、そういう意味ではいろんな才能のある生徒をあつめてるんです。で結局のところ、挑戦した記録全部完敗なんです、簡単なところからいくと握力で300キログラム、このときは正式に記録したわけじゃなく伊佐さんに清掃委員の人が缶を捨てといてって頼んだ時に先生が合金製の超硬度の缶を発明してそれがごみの缶の中に混ざってしまってて伊佐さんが捨て終わったところにいったら全部、小指ほどに圧縮されたあとがあってその合金製の缶もちゃんと小指ほどに小さくなっていたので発明のかわりにギネスに記録として提示したんですってその缶をそのまま。でも非公式の記録なので推定300kgということしか分からなかったらしいです」

「そうなのか、なんかいろいろ申し訳ないことしてるんだな」

「いや、それからその先生は三百kgの圧力に耐えるもっと凄い缶を発明したんですけどまた伊佐さんに握りつぶされることになったら目も当てられないのでそのまま、発表して有名になったみたいです。けど、噂じゃその缶がある機関では研究され続けてていまでは深海に落としてもへこまないほどの強度になってるらしいです。でも伊佐さんに一度さりげなくごみの缶と一緒にしておいたらやっぱり小指くらいに圧縮されちゃったらしく、そしてそれから今でも伊佐さんとのいたちごっごが続いてるとかいう話です」

「そういうのどこから仕入れてくるんだ?」

「えっと、それは・・・・・・内緒です」

「ふーん、まあいいや」

「え、伊佐さん。怒らないんですか?」

「いや、それなら毎週の土曜日が楽しみになってきたよ。いまどのへんの強度になってるのかな?これからは、かならず土曜日の缶のごみ捨ては私が引き受けよう」

「伊佐さん。なんだかほんとになんでもポジティブなんですね」

「だって、あっちはそれをかなりのお金出して作ってるんだろ。わたしが握りつぶすことでどんどん研究は深まるんだからやってそんはないじゃないか」

「ま、そうですけど。あ、そろそろ剣道部に着きますよ。道場が地下二階のフロアなので移動が大変なんですよ。ランニングに出る時は階段からスタートするんですよ?」

「そっか、じゃあよろしくね、というか剣道部では友ちゃんが先輩か。じゃよろしくお願いします、先輩」

「は、はい、胸をお借りします」

「ねえ。でちなみに友ちゃんは握力いくつ?」

「・・・・・・な、78キロ弱です。先週ようやくリンゴを潰せるようになりました・・・・・・」

「おお、ちゃんと努力してるんだ」

「でも、勝ちたいのはそこじゃなくて実はここだけの話ですよ?・・・・・・その、きょ、胸囲なんです」ここだけ、すごく小声になる友恵。

「へ?胸囲?」

「だって伊佐さんすごくスタイルいいじゃないですか、私なんか、それに比べたら・・・・・・」

「あのな、友恵、いいかたしかに私のバストは、Eカップだがただ大きければ言いという問題じゃない」

「E!?そんなに、しょ、勝負にならない・・・・・・」

「胸がないからって魅力的じゃないていうわけじゃないんぞ?友恵は剣道しているせいか身長たかくてすらっとしていて姿勢がいい。背骨もちゃんとS字を描いてるし、友ちゃんは胸はないけど顔も凛と整ってて、一番いいのは足がすらっと長いところだ、友ちゃん、ちゃんと自分のスタイルのいいところ意識して服とか化粧とかすれば、うん、モデルさんみたいになれるぞ」

「え、えそうなんですか、でも伊佐さんは・・・・・・なんていうか、高校生じゃないみたいで、女性としては見たことがないくらいきれいなんだもの。立ち姿をふと見ると一瞬感動してる自分がいるんです。その女神っていうのはこんな感じかなって」

「ふむ、たしかに私は、子供の時から際立ってみんなの視線をあつめてしまうところがあったけど、わたしは、これはわたしのなかのあいつがやってることだと思う」

「え、どういうことです」

「知りたい?」

「はい!」

「友ちゃん、ちょっとこっちきて」

「え、えっ、ちょっとそっちは誰も使ってない更衣室」

友恵はとまどいながら手を引かれて更衣室に引っ張り込まれた。やっぱり伊佐さん、どうしてこんな細い体でこんなに力が強いの?私の足腰は剣道部で鍛えている並の男子でもその場から動かすこともできないほどバランス感覚がいいんだけど。逆にこっちがちょいと引っ張れば男子の方がけっ躓くくらいだし、けど、それを伊佐さんはなんなく引っ張っていってしまうのだ。

二人だけの更衣室はとてもひろかった。おもむろに、伊佐は自分の制服のボタンに手を伸ばす。

「え?い、伊佐さん?」

 次々と衣服を脱ぎ始めた伊佐に顔をまっかにしてとめようとする友恵。だけど伊佐ははずかしげもなく全部脱ぎ捨ててしまった。

「い、伊佐さん、なにを?」

「こうしないと力がうまく伝わらないんだ、友恵、手を・・・・・・」

 輝きだすような美しくて綺麗な伊佐の裸体になんだか手を差し伸べるのも許されないような感覚になる、友恵が言われたとおりおそるおそる出した手を伊佐はパッととって自分の胸の谷間にあてる。

「ひゃっ、伊佐さん!?何をっ!?」

 驚くほどやわらかで滑らかな感触に友恵の体が熱くなる。

「こうすると、今からちょっと不思議なことが起こる」伊佐の周りの輝きが徐々に腕を通して友恵の体に流れ込んでいる。

「おそらく、バハムートはその本能によって自分をもっと巨大で頑強な肉体を作る意思をもっている。あいつは一日で宇宙の端から宇宙のもう一方の端まで泳ぎきる。太陽を一日に三千個食らって無限に大きくなる。だが大きくなるということは質的にも精神的にも大きくなる必要がある。体だけが成長していってはバランスを崩す。だからバハムートは、美しさというものに目をつけた。美しさというものはあらゆるものを統制していく力がある。知恵や精神さえもあらゆるものを最適に鍛えていく。そのおかげで、バハムートは雄雄しくとても賢く偉大な精神的存在になった。バハムートが私の中にいることで私は人間の女性として限りなく美しく知性的で心が強く逞しい体を持つ女になるようになった、バハムートが私の中にいるかぎり私は、限りなく美しくなっていく、だが人間は成長に時間をかけるもの、バハムートの生きている時間を人間の体が許容するには、その成長にかかる時間で最大限の成長をしていくしかない。私の体は自然とどんどん男を魅了するような美しい体になるように初めから決められていたんだ」」

友恵に流れ込んでくるこのなにか熱いものが体の中で異変を起こし始めた。眠っていた体の意識を掘り起こし、自分でも知らなかった体の意思にしたがってそして自分自身の意識そのものが強くはっきりしたものになっていく、その意識は自分の体のメカニズムにそった意思を与えていく。意思を与えられた体は、すぐに成長をはじめまるで時間が早くなるような感覚を覚えた。そして、その異変は、容易に感じられるくらいになる、体の中にあった成長を疎外するものはどんどん体の外へと排出され、胸がきゅっとしまり、形がよりくっきりと現れ、足や腕がきゅんと胸のあついところにひっぱられて長く美しくしまっていく。背骨が、使えていない筋肉を押し伸ばし、伸び上がっていく。自然とおなか周りがくびれてひきしまり、内臓もまるで生まれた時のように新しくそれが肌にキメこまかなハリをあたえる。もともとすらっとしていた足はさらに魅力的にきゅっと引き締まった。背骨が伸び、骨盤が自由になることでまるで、足が地面にすいつくように安定した、すらっとした足にいままで感じたことのない力強さを感じる。

すると頃合を見計らって伊佐は友恵の手を離す。

「伊佐さん、・・・・・・私いまどう見えますか?」

「鏡を見てみなよ」更衣室の縦長の鏡に自分を映すとそこにはまるで違った自分がいた。もともと整った顔にくっきりと目鼻がたち、意志の強い瞳に流れるような眉。あふれほどの輝きが与えられ、制服の上からでも胸は小さいが細身できゅっとしまった胸からくびれた腹部に引き締まった腰つきへと流れるような細身のボディラインを見せる。くびれるあまりに引き締まって体を捻ると腹部と腰が魅力的な線を作る。制服があまりの体の変化に引っ張られてきゅっと引っ張られて、胸がこころなしか制服に健康なふくらみを与え、腰つきもふっくらとしていて肌も見違えるように澄み切った綺麗なハリを称え、墨のように綺麗な髪が流れるようにボディラインをなぞっている。

「・・・・・・私じゃないみたい」

「でもこれが友ちゃんさ、わたしみたいにグラマーな感じじゃなくて、細い感じで胸や腰や腹部が引き締まって、ほら、動くと制服の上からでも体の線が浮き出る。胸は引き締まってメリハリがあると小さくても魅力的な体をみせてくれるんだ。それにすこし脂肪をもたせて、体に健康的なやわらかさを与えてるんだ。たぶん、友ちゃんは良く食べて良く動くから体も最適な脂肪のつき方になる。で、自然スレンダーな魅力の体が出来上がる。わたしの胸を伝ってバハムートの力を友恵にちょっと注いで友恵の体の持つ魅力をひきだしてみた」

「伊佐さんが言ったことがわかります。本当に、すごい。でもわたしなんかになんで教えてくれたんですか?」

「友達だし信頼してるから、それに友ちゃんだってこれくらいきれいになれるんだって知って欲しかったし、友ちゃんには友ちゃんらしい綺麗さがあるんだよ。それに……」

「それに?」

「ふ、藤沢の奴に聞いたんだが、私というのは、いるだけで周りの男にはものすごい負担をかけてるらしいんだ。なんだ、そんなことかと初めは思っていたが、今日の授業でノートを集めた時、私に差し出されたノートを持つ手が震えていた男子がいたんだ。でどうしたんだと尋ねると……」

「尋ねると?」

「顔を真っ赤にさせて、あわててノートを落として、泣き出してしまったんだ」

「ええ?どうして?」

「それがなぁ、その後ろの男子はとても純な奴でわたしがあまりに男子に対して無頓着だったのでその、いろいろそいつの反応が面白くて一挙手一動作を何故そんなことをするのか、問い詰めたりしてしまったりしてな、ついに自分が恥ずかしくなって泣き出してしまったんだと。あとですごく悪いことしたと謝ったんだけど、『伊佐さんは一つも悪くない、情けないのは男としての自分だ』って言い出して聞かないんだ。困ったよ。だがこれで少しそういうことも減る。なぜなら、私と双璧をなす美女が、あのクラスにいきなり現れるのだからな。みんな、お前に注目してわたしのことを少し気にしなくなってほしいのだよ」

「あー、私は、つまり伊佐さんの弾除けって訳ですか?・・・・・・そうですね、胸なんかで競ってた自分が馬鹿みたいです」

「いや、あれはあれでいいんじゃない?友ちゃんの個性だろ?それより更衣室をでるときは気をつけろ。今の友は一発で男をノックダウンさせる破壊兵器だ。なあ、まあこんなに見違えるほど美人なれたんだし、いいじゃないか!」

「はい……あ、ちょっとまったこれから剣道場へいくんじゃないですか!なんか恥ずかしいなあ。それに体が少し変ったからどう動かせばいいかわかるかな」

「だいじょうぶ、多分、剣道の腕も数段上がっているから。まあ、美貌のほうは、少し騒ぎになるだろな」

「うー、緊張するなー、しかし試合は手を抜きませんからね」

「おう、ドンとこい!」

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