フクロウのフクロウによるフクロウのための文学的創作(捜索)活動、あるいは青いフクロウ

南乃 展示

第1話

 

 土曜の朝、私は目を剥いていた。


 自身のiPhone Xで日課のごとく開いたWebサイト、“カクヨム”を見てのことだった。


 カクヨムは、“フクロウ”の文字で埋め尽くされていた。


 トップページを見れば“注目の作品”にフクロウの名前がちらほらと並び、新着小説にはフクロウの4文字が踊り狂い、果てはフォローさせて戴いている小説家の先輩方も息を揃えたかのように次々とフクロウと題された短編を投稿している。

 そのさまはまるで、文字のフクロウの群れががばっさばっさと飛び交っているかのよう。


 なぜ。


 なぜフクロウなんだ。


 驚きでうっかり朝食のコーンフレークの容器にiPhone Xを落っことしつつも自身の小説を冷静に投稿してから、私はそのゲインを、いや原因を探ることにした。

 私は努めて平静である。


 はたして、原因はすぐに判明した。


 カクヨム三周年記念。


 そのお題が何を隠そう、“切り札はフクロウ”だったのだ。


 いや、皆がこぞって題材にしたら切り札も何もないんじゃないかとか、フクロウなんて題材をどう使うんだとか、そう言う疑問はどうでも良かった。


 ただ、私もフクロウのキーホルダーが欲しかったのだ。

 かわいい。


 すぐに私も行動を開始した。

 まずはフクロウについて知る必要がある。

 こういう時は自身も現代っ子、すぐにネットで調べてしまうのであった。


 フクロウ、梟。

 学名でStrix uralensis。

 フクロウ目フクロウ科フクロウ属。


 夜行性の鳥。

 体重は成鳥でおよそ1キログラムに届かないくらいで、翼を広げなければ体長は50〜70センチほど。


 もちろんWikipedia情報である。


 しかしこれだけては分からないので、さらに画像検索でフクロウ画像を漁る。

 かわいかった。


 まだ分からないので、今度はYouTubeで“フクロウ”、“おもしろ”と検索をかける。

 すごい数でヒットするおもしろ動物動画。

 おもしろかわいかったのは言うまでもないだろう。


 小1時間ほど動画を気持ち悪い笑顔で眺め、しかし、自分のYouTube検索履歴に列挙されたバーチャルYouTuberの履歴の中にフクロウ動画を混入させてからはたと気付く。


 これで私はフクロウを真に理解できたと言えるのだろうか?


 フクロウについての究極の小説を書けるのか?


 途端に不安になった。


 物書きというのは、あらゆる知識をまずインプットし、その後にアウトプットするものである。

 これだけでは全然足りない。

 やはり生の情報、つまり実物を目に収め、しかと観察して学ばなければなるまいて。


 私は行動を開始した。


 土曜の昼、私は近所のペットショップの前に立っていた。

 小さなペットショップだ。

 ちなみに一緒に来てくれるような親しい人はいない。

 私も小さな人間なのだ。


 意気揚々とペットショップに入り、店員さんと目が合ってすぐにへりくだる。

 ペットショップに入る人は、おおよそがペットの購入を考えているか、あるいはもう購入を決断した者達だ。


 まさか「フクロウのキーホルダーが欲しくて、実在のフクロウを舐めまわさんばかりに眺めに来ました☆」などとは言えるまい。

 慌てて自身は、フクロウをさも飼いたがっている無類の鳥類好きを取り繕うことにした。


 鳥を飼いたいことを猛烈にアピール。

 笑顔で相槌を打ってくれる店員氏。


 しかしそこにフクロウはいなかった。

 売られていなかったのだ。


 私は他のペットを2時間ほどに渡って勧められ、小さなインコを売りつけられそうになり、インコかわいいな、最終的にはマックに寄り、ゲーセンに寄って最近ハマっているボンバーガールでボロ負けしてから帰路に着いた。

 インコはかわいかった。


 もうダメだ、と気付いたのは次の日の日曜である。

 一文字も書けていないどころか、後半がインコの情報しかないではないか。


 こんなのでどうしろと。


 悩み、悩み、最後にカクヨムを開く。


 そこで気付く。

 フクロウはここに居たのだ!


 並ぶフクロウを題材にした小説たち!

 生きる本物と引けを取らない、もしかすると実物よりも精彩さを持つ表現に富んだ話の数々!


 そうだ、フクロウはここに居たのだ!


 皆も先輩方のフクロウの話、読もう!


 以上です。


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