第7話 KAC7 フクロウエフェクト
フクロウ支援法は、住宅手当や無料でシッターを派遣する制度など、その後もさまざまな支援が追加され、日本は世界屈指の子育て先進国となっていた。
私達は結婚したのですべての恩恵を受けられる訳ではなかったが、それでも手厚い手当や支援のおかげて子供にかかる費用は随分軽減されている。元より金には困っていなかったが、逆に浮いた金で余計なことをしないように気をつけるようになった。
今の富裕層の間では子供にもエステやネイルなど美容に金をかけたり、修学旅行は親も一緒に豪華客船で旅するなど、訳のわからないことになっている。
フクロウはペット市場の1/4を占めるほど膨らんでいた。フクロウに服を着せたり、エサもオーガニックや高級とうもろこしを使ったものなど多岐に渡り、その経済効果は存在感を増している。
フクロウ島が跡形もなく消えてしまった原因は、海底噴火によるマグマ流出によるものだと報道された。地震発生が30分も前に予測されたことについては何も言及されず、どこの新聞も取り上げなかった。それが返って不気味だった。
フクロウ島のフクロウ達は逃げ出してはいたものの、フクロウ島の固有種であるため島以外での生息は難しく、数が激減している。
稀に人の頭の上で卵を産むこともあるが、減ってゆくスピードのほうが早い。
そしてその日は来た。
『関東の養鶏場で鳥インフルエンザが発生しました』
何万羽もの鶏がバタバタと死んでゆき、その死骸の中に一羽のフクロウの死骸が見つかった。その2日後、養鶏場の職員達が次々と倒れはじめた。新型だった──
恐れていた事がはじまった。
誰も免疫を持たない新型ウィルスは都市部にほど近かった養鶏場から瞬く間に広がり交通機関はすべて停止空港は閉鎖されすべての人と物の流れが止められた。
『警報が発令されています。不要不急の外出は控えてください』
インフルエンザは猛威を奮い、人もフクロウもバタバタと倒れていった。そんな中、数日間でワクチンが精製され全国に配布された。いつもは数ヶ月かかる精製が数日で?
また引っ掛かりを覚えるが、とにかく一刻を争う事態だ。みんなこぞってワクチンを摂取する。
その後、フクロウはすべて殺処分されこの世から姿を消した。それに伴いフクロウ支援法は現行を除き廃止され、3年に及ぶ『フクロウエフェクト』は幕を閉じた。
元に戻ったのだ。
奇しくもそれは出生率1.8%を達成した翌月のことだった。出来すぎている。
私の会社が一斉退社を決定したのは交通機関が止められる少し前のことだった。ヨシ子とサチ子には絶対に外に出ないように連絡し、私は急いで会社を出た。
駅は混雑していた。列車がホームに到着し、人々が我先にと乗り込もうとした時、強い目眩に襲われ私は倒れ込んだ。すし詰めの列車が出た後、ホームに倒れる私は発見され病院へ運ばれた。遅かったのだ。発症していた。
意識を失った私は40度以上の発熱があったためすぐさま特効薬が点滴された。
長い長い夢を見ていたような気がする。
「ヒロミさん!ヒロミさん!」
誰かに呼ばれて目を覚ました。
「良かった、気がついた。大丈夫ですか?」
目の前に、カナが居た。
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