第5話 KAC5ルール
時田が2羽目のフクロウを乗せた後、時田の中で一体ナニが起動したのか?
『死んだ毛根が再起動する』『邪気眼が起動する』など諸説あるが、フクロウの数が少ない中、複数乗せている者は少なくその作用は確認されていなかった。しかし──あの時会った時田は『ペンギン』ではなかった。頭は変わらなかったが、体は引き締まり、服の上からでも筋肉質なことが分かった。フクロウと何か関係があるのだろうか?
あれから私は『ナシ』のままで相変わらずモテはしないが、仕事帰りに職場の仲間と飲み歩いたり、休日は趣味に没頭したり、なかなか充実した日々を送っている。
時田達は相変わらずのさばっており、婚外子を量産し続けている。法整備がされず野放しになってはいるが、そのうち規制されるだろうと思っていたら信じられない事が起こった。
『フクロウ支援法』
野鳥の保護ではない。
『アリ』達のつくった婚外子を支援する法案が出た。医療費、教育費の無償化に加え、彼らの母親であるシングルマザーにはベーシックインカムが適用され、働かずとも生活ができる。私達の税金でだ。それが新しい『
フクロウのフクロウによるフクロウのための政治が始まる──
そういえば首相の頭にもフクロウが乗っている。あの人ハイスペじゃないのか?
野党が不平等だと散々やったおかげでフクロウだけでなく、全ての母子家庭に適用されるということで可決した。離婚する人が続出しそうだ。
その頃から、高齢者でもフクロウを乗せるものが現れた。しかも、彼らの頭には2羽ずつ乗っている……。2羽いれば、70代でも現役らしい。フクロウはバイ○グラだったのか?これで高齢者までモテ始め、私達はますます隅に追いやられた。
何故こんなことが起こってる?
国はどうしてフクロウを歓迎しているんだ?
フクロウに関しては未だに謎が多く、研究はされているようだが情報は入ってこない。
今言われているのは、フクロウは国が作ったものではないかということ。遺伝子が初期化されたり、高齢者まで現役になったり、そういうものを世の中に出して、少々手荒だけれどもこれで子供が増えれば少子化が防げる。
今や少子化はこの国最大の難問だ。フクロウは正しく少子化問題の切り札だった。しかし、子供は増えるが結婚制度は崩壊し家族の形も変わってしまった。それにイケメン、ハイスペが弾かれたのは予想外だったのでは?
それから2年後、それは予想外ではなくシナリオ通りだったことを知る。
「ねぇパパ、この子今笑ったわよ!」
「え!?見逃した!ほぉら、パパでちゅよぉ」
「ふふ、ヒロミさん顔がトロけちゃってるわよ」
「だって……自分の子がこんなに可愛いとは思わなかった」
モテなくはなったが、全く相手にされない訳ではなかった。ヨシ子は若いが見た目はオバサンのようだ。以前なら絶対に付き合ったりしないタイプだった。だけど、心根が優しく私のことを心から愛してくれている。
『ナシ』になってから価値観が大きく変わった。仕事や趣味に生きるのは楽しいが、楽しい=幸せではなかった。家に帰り、一人でいることはやはり寂しい。仕事を退職し、趣味も体力が続かなくなったら……。
私はヨシ子と結婚した。
結婚制度は崩壊していたが、無くなってはいなかった。私は結婚したかった。
きっと、フクロウが現れずにいたら私は結婚なんてしていなかっただろう。
子供も生まれ、私は幸せを噛み締めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます