第2話 KAC2 2番目の男

このbarに入ってきた2番目の男。

つまり、私の次に入ってきた男もフクロウに驚いていた。私はその2番目の男に声を掛け、二人で店を出た。


「一体どうなっているんだ?」


「どうやら、頭にフクロウを乗せることか流行っているらしい」


「何のために?」


「よく分からない。女性にはモテるみたいだが」


私達が話ながら歩く間も、すれ違う男性はみんな頭にフクロウを乗せている。

スクランブル交差点の巨大スクリーンに写し出されたニュースキャスターの頭にフクロウが乗っている。国会答弁中の首相の頭にさえ……。


周りからの視線が痛い。

頭にフクロウが乗っていないのは私達だけのようだ。なんだか居たたまれない。


「とにかく、フクロウを探しに行こう」


「俺はフクロウなんて乗せたくない!」


「私もそうだけど、とりあえず乗せてから考えよう。乗せてないとヘンな目で見られる」


「フクロウなんて、何処にいるんだ?」


「それが……これを見てみろ」


スマホの画面に写し出されたそれは、海に浮かぶ小さな緑の島。


「フクロウ島?」


「そうだ。東京湾にあるらしい」


「は?東京湾にそんなものあったか?」


「私も初耳だ。しかし、フクロウはみんなここで捕まえてくるらしい」


ますます怪しい。こんな島、聞いたことがない。いつの間に出来たんだ?あれは本当にフクロウなのか?こうなってくると未知の生命体路線が濃厚じゃないか。やっぱり乗せたくない。嫌な予感しかしない。だがしかし……


「とにかく、その島に行ってみよう」


私達はまず、フクロウ捕獲用の道具を調達しにハンズへ向かった。


『フクロウ捕獲セット5000円』


なんて用意がいいんだ。

網や鳥かごにエサ。エサ?

エサって、これが?


「なんでポップコーンなんだ?」


「フクロウ島のフクロウはポップコーンが好物らしい」


「それじゃハトじゃないか」


「本当なら生きたネズミなんかを食べるんだから、それに比べたら良心的だろ」


セットを2つ購入して、水上バス乗り場へ向かった。浜松町からゆりかもめに乗り、芝浦埠頭へ向かう。

もうすっかり夜は更けているが、フクロウは夜行性なので捕獲は夜がいいらしい。そのため、水上バスも夜間の運行がメインだ。

私達の他にも数人、サラリーマン風の男が乗っている。みんな頭にフクロウはおらず、なんだか目を反らし合いバラバラに座っている。15分ほどで到着した。本当に島が出来ている。こんな近くにいつの間に?


島には木々がうっそうと生い茂り、森の中は一層暗く不気味だった。フクロウは暗闇でもしっかり見えるはずだ。そんなの相手に捕まえられるのだろうか?


闇に目が馴染んできた頃


「ホーホー」


フクロウの鳴き声だ。


私はエサのポップコーンを撒いた。


「バサバサバサバサ」


周りの木々からたくさんの鳥らしきものが舞い降りてきたが、フクロウって羽音する?

警戒されないようにライトは消しているからフクロウなのかどうか分からない。

私が躊躇していると、二番目の男が網を振り回して走り込んだ。


「バシッ」


「ヨシッ、捕まえたぞ!」


確かに男の網に何かが入っている。私が慌ててライトを付けてみると


「くるっポー」


「やっぱりハトじゃないか!」


フクロウ島が出来てから、都内からハトが消えたらしい。ここで夜な夜な撒かれるポップコーンを目当てに、ハトが移住してきたのだ。このハトのおかげでフクロウ捕獲が難しくなっているとニュースサイトに書いてあった。


「フクロウは何処なんだ!」


フクロウ島のフクロウは体長10cmと、とても小さい。ハトに紛れると見つかりにくく、

あーホントにハトが邪魔くさい!

そんなハトだらけの集団の中に、一際大きな丸い影が見えた。アレは何だ?


「モクロー!ポケ○ンのモクローじゃないのか?あれならフクロウよりいいんじゃないか?」


「いや、モクローはフクロウじゃないから……」


「ポケ○ンだぞ!ポケ○ンG○でもないのに捕まえられるって、そのほうがすごいだろうよ」


「グーグルによると『子供っぽくて人気は低い』らしい」


「誰に対しての人気だよ!」


「それに、モクローは頭に乗せるにはデカ過ぎる」


「まあ……確かに」



それからも何度もチャレンジするが捕まるのはハトばかりで、なかなかフクロウは捕まらない。エサも尽きてきた。


「そうだ、もう頭にポップコーンを乗せて、ダイレクトにフクロウを乗せればいいんだ」


二番目の男は自分の頭の上にポップコーンを乗せ、残りを足元に撒くように私に頼んだ。


「バサバサバサバサ」


鳥達がやってきた。


「はっ‼」


二番目の男の頭の上に、小さな影が見える。

やった!成功だ!

しかし、このまま飛ばずに頭の上に居てくれるのだろうか?



『カチッ』



カチッ?シートベルトを締めた時のような、何かがガッチリハマる音。



二番目の男は微動だにしない。


「おい、どうした?」


頭の上のフクロウの目が光った。


同時に男の目も光る。


『ショキカシマス』


ショキカ?初期化?誰の声?


な、何を初期化するんだ……?






※野鳥は捕獲してはいけません。

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