勇者に振り回されて、胃が痛い･･････

02 ～勇者召喚～

あー、緊張します。

　2日前にメイド長から、勇者召喚が行われると聞き、昨日、個人的に勇者のお付きメイドになるようにと言われました。つまり、勇者への貢ぎ物になったわけです。

　正直、この世界の人類自体もうだめだと思っていたので、自分の身に何があろうと気にはならないんですけどね。

　セリアメイド長、さすがに見たこともない人の奴隷はキツいですよ･･････

　出来れば、普通の人が良いですね。

　伝承通りなら、見た目は人と同じらしいですし、男性が大半とは聞いてますから、女を使ってなんとかするのは当然というか、それが一番手っ取り早いんでしょうけど･･････

　そんなことを考えていたら、どうやら勇者召喚が終わってたっぽいです。

　魔方陣の上に上下黒い服を着た男性が立ってます。多分、あの人が勇者なんでしょう。

　というか、なんですかあのボタン。全部金色とか丼だけ金が好きなんですか。

　黒い服なので、所々にある金色のボタンがにあってますが、かなりお金が掛かってそうですね。

　あの金のボタンを付けるために黒の服を仕立てたように見えますけど、派手じゃないですが、一周回って成金っぽい感じまでしそうです。

　「えっと、ここは?」

　おや、それほど混乱していないのでしょうか。

　向こうの世界だと召喚されることが古宇なのか、そういう訓練をされているんでしょうか。

　もしかしたら慌てすぎて、とっさに出てきた言葉がアレとかもありますね。

　顔は･･････まあ、悪くないってところでしょうか。容姿はそこそこなので、一応最低ラインはクリアですね。

　まあ、あの人のそばであれば少なくとも当面の安全は保証されるでしょうし、後は性格がまともなら上々ってところですかね。

「ここ、ミルレーク王国の国王、ヴィアル・シュア・ミルレークである」

「えっと･･････王様?」

　のろのろとした動きではありますが、国王と分かると勇者は片膝を突き、頭を下げました。

　一応、その辺りの教養はあると言うことなのでしょう。召喚に対する知識があるのか、勇者のいた国が君主制だったと言うことでしょうか。君主制だとしたら、服装からしてもそれなりの身分にあった、と言うことでしょう。

　やっぱり、どこかのお坊ちゃんとか?

　･･････報復とかされないですよね?

　このタイミングで新たな敵が増えたら、この世界の人類は滅亡待ったなしですよ。

「私は柳田（やなぎだ） 光佑（こうすけ）と申します」

「光佑殿、召喚に応じていただいたこと感謝する。単刀直入に言うが、この国を助けるために、その知恵と力を貸してほしい。申し訳ないが、歓迎の宴すら開く余裕がない。既にこの国は勇者に頼るしかなくなっていたのだ。申し訳ないが分かってくれ」

　驚いたことに、国王様は事実を淡々と述べていた。

　きっと昨晩にでも、ニーア様に色々言われたのだろう。

　というか、王宮にあった備蓄は前線の兵士や、一般民のために相当量放出しているので、自分たちの食べるものすらキツい。高級食材だった物も何かしらの原料にしてしまい、平民から国王まで食べるのはパサついた非常食のような物が大半だ。

　なんなら農家や牧場主の方が良いものを食べているだろう。

「いえ、そのお言葉だけで十分にございます。それで、此度の危機というのは、魔王が誕生し戦闘状態にある。私はその討伐補助と言うことでよろしいでしょうか?」

　すっげー場慣れした感があるんですが。それに、状況まで言い当てられてるんですけど･･････

　なに? あんたの国って召喚されるのが普通の世界なの? なんか、すごい世界だね。

「あ、ああ、話が早くて助かる。頼めるだろうか」

　さすがの国王様でも驚いてる。

　まあ、飲み込みが早すぎて、事前に用意した物をすっ飛ばしたんだし、仕方ないかな。

「もちろん、と言いたいところではございますが、何分私には武力がございませんので、基本は後方にて技術支援、戦術支援とさせていただきたく･･････」

「承知した。そのように手配しよう」

　あ、勇者が心の中ですっごく喜んでるような気がした。

　なに、侵略でもする気なの?

　国王様は、すごく胃が痛そうだ。

　ストレスがマッハで溜まってるのが見て分かる。

　ああ、なんとなくヤバそうだよ･･････

こんな人のお付きメイドとか

「胃が痛い･･････」