勇者に振り回されて、胃が痛い・・・・・・

yoshikei

01 ~召喚前の会談~

 ここはミルレーク王国の王城内にある一室

そこには、国王や有力貴族の当主達が集まっていました。


「王よ、この世界の問題を異世界の者に任せるのは・・・・・・」


 宰相であるアンドレ様が進言しますが、国王の顔色は変わりません。

 この国、この世界では今、魔族と人が争っています。争いが始まったのはほんの数年前で、それまでは互いに不干渉だったのですが、マオウが生まれたらしく宣戦布告をされました。

 魔族は人間と比べ身体能力や魔法適性が高く、基礎能力が違いすぎるので1人倒すだけでも熟練の1個小隊でギリギリと言ったところ。らしいです。

 というか、人が魔族に勝てるところなんて出生率くらいなのに、不作や強力な魔物の出現によって色々と不足していたところに宣戦布告されたら、勝ち目なんてあるわけ無いじゃないですか。

 まあ私が公でこれを言ってしまうと、かなりマズいので絶対に言えませんが・・・・・・


 とはいえ、降伏した先には魔族の家畜として生きる以外にはないでしょうし、それを回避するために今も戦っているわけですが、全く勝てる見込みがないです。

 まあ、そんな状況下でなんの会議をしているかというと


「いや、勇者召喚の儀は必ず執り行う。日程は1週間後だ」

「しかし・・・・・・」


 そういうことです。

 この国は王国の秘技と言われた勇者召喚を行おうとしています。

 禁忌の技として受け継がれて来ましたが、人類滅亡、とまでは行かないでしょうけど、自由を守るためには使える物は何でも使うしかないのです。


 ちなみに、このことは極秘で勇者召喚についてはこの会議が始まるとき、王が決定事項として話されました。


「アンドレの言うことはもちろん分かる。私も一人の人間としてならば、そう答えただろう。無関係な者に頼るのはおかしい、と。しかし、私は国王なのだ。私にとっては、異世界すべてより国民一人の命の方が重いのだよ」


 勇者召喚で呼び出した時、勇者のいた世界が滅ぶ、とかそんなことはないはず。

 少数の生命体が世界をわたったからと言って、世界が壊れるほどもろいとは思えない。どのみち、観測するすべはないから分からないけど。


「・・・・・・分かりました。不肖カルク・ルタ・シルファン、微力ながらご助力させていただきます」

「カルク様まで・・・・・・分かりました。直ちに人員を集めさせていただきます」

「皆、すまない・・・・・・」


 国王は深々と頭を下げられていました。他の方は情けなさと悔しさが入り交じった顔で、うつむいています。

 やっぱり、苦しいんでしょうね。私も相談されたときはとても悩みました。

 しかし、今の私は決定権も指揮権もないのに現状の深刻さがはっきりと分かってしまう立場にあるので、利用できる者は利用するべきだと考えてしまいます。


「これで会議は終了とする。一週間後、神殿に集合せよ」

「「「「はっ!!」」」」


 私もなにか声をかけた方が良さそうですね。


「皆様にこのような重責を掛けてしまい、申し訳なく思います。しかし、この世界のため、人類のために、どうかよろしくお願いいたします」


 そう言って、頭を下げる。

 それなりに綺麗でないとこの仕事は回らないこともありますので、容姿には自信があります。

 男性は女性に言われた方が嬉しいでしょうから、少しでも皆様の心を軽くするためにも、これくらいはしないとですよね。




 しばらくして、国王と私だけになりました。

 ようやく頭を上げることが出来ます。


「ニーアも、すまないな」

「いえ、これが私の役目ですので。それに、この国のことを思うのは私も同じです」

「本当に、これで良かったのだろうか・・・・・・」

「ヴィアルさん、今は私たちの危機です。他の方を心配しているような余裕はありません」

「・・・・・・そうだな」


 あなたは気づいてないでしょうけど、いろんな事を一人で抱え込むから、私は心配なんですよ?

 すべての責任を背負い込もうとするのは悪い癖って、昔から言ってたのにやっぱり直らないんですね。


「私はずっとここにいますから。なにがあっても、あなたと一緒です」

「・・・・・・ありがとう」


 もう少し甘えさせて上げたいところですが、これ以上は夜に回さないと他の業務が遅れそうですね。

 仕方ないです。


「ほら、仕事に戻らないと。まだまだ溜まってる物もあるって聞きましたよ」


 ああ、そういえば私の方でもやることがあるんでした・・・・・・





―――――同日 夜・医務室にて―――――


「「先生、胃が痛いです・・・・・・」」

「ヴィアル国王に、ニーア王妃まで・・・・・・」

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