第649話 補助魔法使い、もう一人の祖母を知る
「まずはどこから話をしたもんかな」
「娘達からの質問に答えて行くのがいいと思うわよ。下手にユーリが喋ると、話してはいけない話もしそうだし」
「それもそうだな」
お母さんの言葉にお父さんが頷きました。
今の話からすると、全ての話を聞かせて貰える訳ではないみたいですね。
「それじゃ、まずは何から聞きたい?」
「そうですね……」
んー……。
こうして僕たちからの質問タイムが始まったのですが、早速困りましたね。
質問するにしても、聞きたい事は沢山ありますし、片っ端から聞くと僕の頭が追い付かないような気もするのです。
「何でもいいの?」
「答えられる事ならな」
僕が迷っていると、シアさんが小さく手を挙げました。
シアさんが積極的に質問するのは珍しいですね。
普段なら僕やスノーさんに任せてシアさんは大人しく話を聞いているか、半分寝ているだけですからね。
そんなシアさんが質問するのです。
僕は邪魔をしないようにシアさんの質問をお茶を飲みながら静かに聞いていると。
「ユアンとの子供が欲しい。どうやって作ればいいの?」
「っ!? ゴホッ、ゴホッ!」
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。ちょっと、びっくりしただけですので……」
まさかあんな質問をするとは思っていなかったので、完全に不意をつかれましたね。
で、でも……その質問はかなり重要ですよね。
今はまだ早いと思いますが、魔力至上主義の問題が終わり、生活が落ち着いたらいずれかは子供は欲しいですので。
「子供かぁ、まだ早いんじゃないか?」
「そう?」
「まだ二人は結婚して一年も経っていないのでしょ? 今は結婚生活を楽しむのがいいと思うわよ。人生は長い訳だし」
「でも、何があるかわからない。知識として知っておきたい」
「それもそうか。まぁ、それはそれで後で教えてやるよ。言葉で説明するよりも、実際に体験した方が早いからな」
「もちろん体験といっても、実際に子供を作る訳ではないから安心していいわよ」
体験と聞いてびっくりしましたが、どうやら魔力だまりの探し方や魔法陣を教えてくれるみたいです。
という訳で、最初の質問は後回しになったので、本題となる部分を聞いていきましょうか。
「では、サンドラちゃんとお母さん達の関係を聞いてもいいですか?」
「構わないぜ。といっても、俺から言えるのは人しかないけどな」
「一つ?」
「あぁ、サンドラは言ってしまえば身内だ」
「身内? それは、血の繋がりって意味でですか?」
「そうなるな。だって…………サンドラはユアンの血を引いているだろ?」
「一応はそうなるのですかね?」
今の姿になる前のサンドラちゃんはドラゴンゾンビとしてダンジョンマスターしていました。
その後、僕たちはサンドラちゃんを倒し、サンドラちゃんの手を借りて、転生といえばいいのですかね?
火龍の心臓を使い、今のサンドラちゃんとなったのですが、その時に僕達から血を少しずつ奪っていったのですよね。
そういう意味では僕達の血を引いているとも言えます。
「な? 身内だろ?」
「そうですね。ですが、それは僕達との関係であって、お父さん達との関係ではありませんよね?」
「まぁな」
「僕が知りたいのはそこです」
どうしてお父さんたちがサンドラちゃん……まぁ、あの時はダンジョンマスターであった古龍さん。
もっといえば、龍人族の巫女を知っていたのかを知りたいのです。
「そうだなぁ……ま、仕方ねぇか。どっちにしろ、近々知ることになるだろうし、そろそろ接触してくる頃だろうしな」
お父さんの表情が変わりました。
さっきまで柔らかかった目元がきゅっと引き締まったように思えるのです。
それに、お父さんから凄く気になる言葉が出ました。
「接触ですか?」
「ん? あぁ、そろそろだろうな」
「えっと、誰がですか?」
「誰がって……お前の婆さんで、俺の母親だな」
「僕のおばあちゃんですか? おじいちゃんではなくて?」
「あぁ、婆さんだよ」
「でも、僕のおばあちゃんはチヨリさんですよ?」
「片方はな。俺が言っているのはもう片方の母親の事だ」
お父さんのお母さんはチヨリさんだと思っていましたが、お父さんの口ぶりからすると、二人ともおばあちゃんという事になるのですかね?
まぁ、僕のお父さんとお母さんが二人とも女性ですし、僕だってシアさんと結婚しているくらいですし、そこは大きな問題ではありませんね。
問題はもう一人のおばあちゃんが誰かって話ですが……僕が尋ねたのはお母さん達とサンドラちゃんの関係です。
そこからおばあちゃんの話しへと発展するという事は、サンドラちゃんも関わっているという事ですね。
つまりは……。
「僕のもう一人のおばあちゃんは龍人族という事ですか?」
「そういう事になるな」
僕の予想は当たりました。
ですが、それだけでは終わりませんでした。
「で、問題はその龍人族が誰かって話になるのだが……」
お父さんはそこで言葉を切り、サンドラちゃんを見つめました。
「えっ、もしかして……サンドラちゃんが僕のおばあちゃんだったのですか?」
「違うぞー!」
あっ、違うのですか。
「それじゃ、一体誰なのですか?」
「まだわからないか?」
「はい。わからないです」
そもそも龍人族で知っている人といえば、サンドラちゃんとクジャ様くらいですからね。
まぁ、それ以外にもルード帝国のお城にいたメイドさんやサンドラちゃんのお姉さんである……。
「っ!」
突然、頭の中に映像が流れました。
それは、とても残酷な、目を覆いたくなる映像だった。
そして、その映像が流れた瞬間、頭が割れるかと思うくらい強い痛みが走り、私は頭を抑え机に突っ伏す事になった。
「ユアン!」
「大丈夫、だよ」
シアの慌てた声が響く。
「でも……」
「本当に平気。心配してくれてありがとう」
しかし、その痛みも映像も一瞬だった。
それと同時に私は理解した。
「そうですか、もう一人のおばあちゃんは龍姫さんだったのですね」
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