第631話 弓月の刻、スノーとキアラの今後の予定を聞く
「となると、結婚式はまだまだ先になるのですね」
「そうなるね」
「さすがにこればかりは私達だけの都合ではできないませんので」
スノーさんの実家へ足を運んだ結果、無事にスノーさんとキアラちゃんの結婚は認められる事になりました。
ただし、結婚は認められましたが、式をあげるのはまだまだ先になります。
というのも。
「改めてユアンが如何に便利で非常識だったかというのがわかるよね」
「非常識は酷いですよ」
「でもさ、実際にそうじゃない? 転移魔法がなかったらこうして色んな場所にいけないんだからさ」
結婚式を挙げるには、色んな段取りを組まなければいけないからです。
「そうですね。だけど、転移魔法を使えるのは僕だけではないですし、僕が特別非常識って訳ではないですよ?」
「それはわかってるよ。私が言いたいのは、実際に転移魔法を使えないとなると、凄く不便だなって事」
確かに転移魔法を使う事が当たり前となってしまった僕たちからすると、転移魔法が使えない生活はありえませんからね。
ですが、転移魔法というのは本来であれば出来るだけ内緒にしなければいけないですし、普通の人は使えません。
そういった理由もあり、スノーさんの身内はまだしも、それ以外の人を結婚式に招待するとなると直ぐに結婚式を挙げるのは無理という結論に至りました。
「身内だけでやればいい」
「そうできたら楽なんだけどね」
「ダメなのですか?」
「流石にね。これでもルード帝国の貴族だし、親の関係で招待しないとマズい人も何人からいるからね。貴族としての見栄を張らなければいけない所もあるし」
スノーさんとキアラちゃんは仲のいい人達だけでひっそりとした結婚式を挙げる事を希望したみたいですが、それはスノーさんの父親に却下されることになりました。
なんでも、娘の結婚式も盛大に祝えないのは貴族の沽券にかかわるとの事で、それほどに財力に余裕がないのかと、思われる事に繋がるようです。
「やっぱり貴族って面倒ですね」
「貴族っていうよりも父上が面倒なだけだよ。今だにそんな古い風習とらわれているくらいだし」
「でもなー、風習を守る事は悪い事ではないぞー?」
「まぁね。だけど、私は折角の結婚式なんだし、キアラと好きにやりたいよ」
「確かに。私も一から計画して結婚式をやりたい」
「そうですね。流れで結婚式をやってしまいましたからね」
それが悪いかというと悪くはなかったですけどね。
もしシノさん達が半ば強引に僕たちの結婚式を進めなかったら、未だに僕とシアさんは結婚していなかった可能性も十分にありえますし、むしろあの形であったからこそ、僕たちは結婚できたとも思えます。
でも、それはそれとして、僕とシアさんで話合って結婚式を挙げるのもやってみたかったという気持ちもあります。
「でも、実際に計画を立ててやるのは大変そうだなー」
「大変だと思いますよ」
「大変だろうね。特に人を呼ぶのが苦労すると思うよ」
「お金も凄くかかると思うの」
「かかるだろうね」
何処でやるかにもよりますよね。
もしナナシキでスノーの結婚式を挙げるとしたら、ルード帝国から人を呼ぶとなると、、それだけで数ヶ月はかかりますし、招待した人の旅費等を負担するとなれば、莫大なお金になる事は間違いありません。
まぁ、その辺りは招待する貴族によると思いますけどね、見栄を張りたい貴族ともなれば自腹を切ってくるでしょうし。
その辺りの事は詳しくないのでわかりませんけどね。
「ま、とりあえず私達の結婚式は当分先になった訳だよ」
「仕方ない。だけど、結婚だけなら式をあげなくてもできる」
確かにそうですね。
結婚式というのは結婚を祝うための式典であり、それをあげなければ結婚できない訳ではないですからね。
「そうだね。一応だけど、先に籍だけはいれるつもりだよ」
「そうだったのですね。いつですか?」
「魔族領に向かう前には入籍するつもりだよ」
「それなら直ぐですね! おめでとうございます!」
「ふふっ、ありがとうございます」
「なー……結婚していないのは私だけになったなー」
キアラちゃんとスノーさんの事を羨ましそうにサンドラちゃんが見ています。
「サンドラちゃんも誰かと結婚したいとか思うのですね」
「別に思わないぞー? ただ、仲間外れなのが嫌なだけだなー」
「そっちでしたか」
まぁ、僕でも早すぎると思ったくらいですし、僕より年下の……実際には年上ですけど、見た目上は年下のサンドラちゃんに結婚は早すぎますね。
「うんー。それにこのままいったら、リコとジーアも結婚しそうだしなー」
そういえば、あの二人も恋仲に進展したのでしたね。
それもあって、二人の生活もがらりと……という訳ではありませんが、少し変わりました。
元々、リコさんとジーアさんは住み込みで僕たちのお家で暮らしていましたが、ついに引っ越す事が決まりました。
といっても、別館の使用人のお部屋から本館の空き部屋に移動しただけですけどね。
ですが、その本館と別館の些細な違いは僕たちにとってはとても大きな差でもあります。
「これで、ジーアも身内みたいなもの」
「ですね!」
別館はお客さん用で本館が僕たちのお家というのが僕たちの認識で、今までは別館で暮らしていたリコさん達にどこか距離を感じている気がしていました。
実際にはそんな事はないのですが、別館と本館が離れている為にそんな気がしてしまったのです。
ですが、最近発覚した事実。
なんと、リコさんはお父さんの妹で僕の叔母にあたる人だったのです!
なので、僕の身内でもあり、みんなからの信頼が厚いとの事で本館へと移って貰ったのです。
まぁ、別館の部屋に空きがあまりないというのも理由の一つです、前々からそういった話を二人にはしていたので、今更ではありますけどね。
「出来る事なら二人の結婚式も挙げてあげたいですけどね」
「そうですね。二人は遠慮すると思いますけど」
二人のというよりも、ジーアさんの性格を考えれば遠慮しそうですね。
ですが、最終的にはリコさんに流されてしまう未来がみえますけどね。
「そう考えると、なんだか、ナナシキに結婚ブームみたいなのが起きそうな気もしてきますね」
「そんなにいっぱいカップルがいるの?」
「結構いますよ。ナグサさんとティロさんだっていますし、シノさんとルリちゃんもですよね?」
シノさんに関しては二回目の結婚式になりますが、それでもルリちゃんの為には絶対に結婚式をあげてあげなきゃですからね。
「後はユアンも二人ほど控えているでしょ?」
「控えてませんよ! まぁ、約束でデートとかはしなければいけませんけどね」
だからといって結婚する訳ではないですからね。
「あまり期待ばかりさせないようにね?」
「わかっていますよ。そのうち、ちゃんと伝えるつもりですよ」
「そのうちねぇ……」
「その時には手遅れになってる気がするの」
「既に手遅れだと思うけどなー」
「うん。第二夫人がどっちになるか楽しみ」
「他人事だからって簡単に言わないでくださいよ……」
実際にどうしていいのか僕が一番困っているのですからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます