第625話 補助魔法使い、報告をする
「それではまずは報告から聞こうか。エレン」
「はい」
事前に知らされてたとはいえ、やはりこういった場は緊張しますね。
ですが、幸いな事についに始まってしまった同盟国会議……でいいのですかね?
きっとクジャ様がそう言っていたので間違いないと思うのですが、その同盟国会議の進行はクジャ様がやってくれるみたいなので、まずは会議がどんなものなのかを知るために僕はエレン様とクジャ様のやりとりを見守りました。
きっと僕に話を振られた時の参考になりますからね!
「
「砂船?」
「お前たちがリアビラに向かうために乗った船の事だ」
「あぁ、あれの事でしたか。そうですね……」
ふむふむ。
クジャ様がそうやって質問してくれるのであれば、それに答えるだけなので少しは楽ですね。
問題は、どういった答えを示すのかが肝心ですけどね。
なので早速ですけど、エレン様をお手本にさせて頂こうと思います!
そう思いながら、エレン様とクジャ様のやりとりを見守っていると。
「また乗りたいと思えるほどには楽しかったですよ」
エレン様はクジャ様にそう返しました。
えっと……なんか求められている答えじゃないと思うのは僕だけでしょうか?
「エレン、もう一度だけ聞く。砂船はどうであった?」
「また乗りたいと思えるほどには楽しかったですよ? ですが、一つ。私も運転したかったのにさせて頂けなかったのは少し不服ではありましたが、概ね楽しめたと思います」
「…………わかった」
うん。
どうやら僕だけではないみたいですね。
隣のローゼさんからはため息が漏れていますし、クジャ様も「エレンに確認するだけ無駄だったな」と聞いてはいけない言葉を聞いてしまいましたかね。
となると、エレン様は宛てにならなさそうなので……。
「では次はお前だ。エレンの分も報告を頼む」
「ぼ……私が、ですか?」
「そうだ。他にいないだろ?」
「わかりました」
いきなり話を振られて凄くびっくりしました。
ですが、これは予想と準備していたので大丈夫です。
あの船は砂船というみたいですが、あれの実用性の報告を後でして貰うとシノさんから言われていましたからね。
その準備はちゃんとしてあります!
なので、クジャ様の視線がエレン様から僕へと移ったので、僕は収納魔法から資料を取り出します。
「えっと……では、ただいまより
「そういう面倒なのはのはいいぞ。普段通りにやってくれ」
「いいのですか? 後で怒ったりしませんか?」
「しない。むしろ、自分の伝えやすい言葉で伝えてくれた方が助かる。無理に難しい言葉を使おうとして、伝えたい事を正確に伝えられない方が迷惑だ」
確かに言葉ってかなり繊細ですので、僕の話し方、発音の一つ一つで誤った情報を伝えてしまう恐れがあるので、ここはクジャ様の好意に甘えさせて貰った方が良さそうですね。
「では、言葉を崩させて報告させて貰います」
といっても、どちらにしても僕がやることは予め纏めておいた資料を読み上げる事くらいですけどね。
「まずは速度。こちらは問題ないと思います」
むしろあの大きさであれだけの速度を出せるのであれば十分です」
少なくとも場所以上の速度は出ていましたからね。
そう考えると、あれ以上速度を上げるのは無謀だとも思えます。
砂の上というのは意外と不安定ですし、波のように砂の起伏も激しかったりしますからね。
「次に安定性ですが、こちらも問題ないと思います。ですが、どうしても起伏が激しい場所などもあるので、家具の固定などはもっと強化してもいいかと思いました」
固定が甘くて机などが移動したら凄く危ないですからね。
その後も僕は砂船の良い点と改良点をクジャ様に報告をしていきます。
「なるほど。一番の問題は魔石の交換の時だな」
「そうですね。どうしてもあの時は無防備になりますので、対策は絶対に必要だと思います。それと地図の精度を上げる事をお勧めします」
「理由は?」
「砂漠の景色がほとんど変わらないからです」
辺り一面が砂になると方向すらわからなくなりますからね。
まぁ、方位磁針がありますし、古いとはいえ地図もあるので一応は迷わずに進めますが、どうしてもそれが本当に正しいのか不安になると思います。
「僕たちは鳥の使い魔が居ますので、使い魔を頼りに進めますが、全員がそう出来る訳ではないので対策した方がいいと思いますよ」
誰が使用しても同じ成果をあげられるようにするのはどうすればいいのか。
僕たちが求められている答えは多分これです。
基準を龍人族や僕たちに合わせないで、普通の人の目線で考える事が大事なのだと思います。
だって、普通人は空を飛べないですからね。
「なるほどな。そちらも早急に改良が必要そうだな」
「窓もですね。こちらと同じでは駄目だとは思いもしませんでした」
窓も重要ですね。
サンドラちゃんが船酔いしたので、窓を開けたた時があったのですが、その時に大量の砂が風と共に侵入してきて凄く大変でした。
そんな感じで資料にはないちょっとした事も思い出しつつ砂船の報告を続けたのですが、少なくとも僕たちがまとめた意見は少しは役に立っているみたいです。
エメリア様が僕たちから聞いた意見をサラサラと紙に纏めているのが見えますからね。
「お父様、どうでしょうか?」
「とりあえずはこんなものだろうな……おい」
「はい」
「これを至急大工さんの元へと届けてください」
「畏まりました」
エメリア様がメモした用紙をメイドさんに渡すとメイドさんは直ぐに部屋から出ていってしまいました。
「えっと、そんなに急ぎだったのですか?」
「ああいうのは早い方がいいからな」
「それなら、先に資料だけでも届けた方が良かったですね。すみません」
「いえ、ユアン殿の口から聞いた方が確実でしたので、気になさらないでください」
「わかりました」
ですが、次回からはこういうのは出来る限り伝えた方が良さそうですね。
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