第616話 補助魔法使い、チヨリから話を聞く2

 チヨリさんの口から驚きの真実が語られました。


 「ジーアさんと同じ一族なのですか?」

 「うむー」

 「でも、ジーアさん達の髪の色とチヨリさんの髪の色は全然違いますよ?」


 ジーアさんの一族の髪の色は全体的に白色で、耳の先端だけ黒という凄く特徴的な色をしています。

 ですが、チヨリさんの髪の色は狐族に多い金色の髪です。


 「髪の色は確かに違うなー。だけど、金色の髪の者も居ただろー?」

 「あっ……そういえばリコさんがそうでしたね」


 今こそ僕たちのお家でメイドさんをしてくれていますが、リコさんの元々の立場はジーアさん達の村の代表者でしたね。


 「でも、どうしてリコさんだけが金髪なのですか?」

 「二手に分かれたからだなー」

 「という事は、元々はリコさんだけではなかったという事ですか?」

 「うむー。そういう事になるなー」


 そこからチヨリさんが詳しく説明をしてくれたのですが、驚く事に僕の親衛隊の人達は全員あの村の出身だったみたいです。

 流れとしては、海を渡ってアルティカ共和国へと辿り着いたチヨリさん達はこっそりとあの場所へと住み着いたみたいです。

 ですが、あの場所へと住んでみたものの、環境はとてもいいとはいえず、魔物も動物もまともに狩れず、畑などもないので苦しい生活をしながらもどうにか生活をしていたみたいです。


 「そこでユーリが連れてきたのがアンジュ様だったんだなー」

 

 それは偶然だったみたいですね。

 たまたまユーリお父さんが山を下りて食料となりそうなものを探している時に、魔物に襲われているアンジュお母さんを助けたのが二人の出会いであり、その時にチヨリさん達の一族をアンジュお母さんが知り、チヨリさん達の村を援助する代わりに戦力として引き入れたみたいです。

 

 「それが分かれた理由なのですね」

 「うむー」

 

 それで、ナナシキとジーアさん達の村が近くにあったのですね。

 ですが、それだと色々と疑問が残りますね。


 「僕が聞いた話だと、ジーアさんの一族はあの場所を守っていると言っていましたが、実際の所はどうなのですか?」


 あの場所には龍人族の街とダンジョンがあり、リコさんは巫女で龍人族を祀っていると言っていました。


 「その通りだぞー」

 「でも、チヨリさん達は海から渡ってきたのですよね? そのチヨリさん達がどうしてあの場所を守っていたのですか?」


 何らかの繋がりがあったからこそあの場所を守るように住み着いたという事になりますからね。


 「光の龍神様が関係しているからだなー」

 「そっちの繋がりでしたか。という事は、リコさんが関係していたという事なのですね」

 「元々は違うぞー」

 「違うのですか?」

 「うむー。まー、簡単にいえば、わっちが原因だなー」

 「チヨリさんがですか?」

 「うむー。もともと、光の龍神様を宿していたのはわっちだからなー」


 ここにきてまた新たな真実が発覚しました!


 「わっち達は海を渡ってきたと言ったがけど、それはわっちがあの場所に導かれ、皆を呼んだのが始まりだからでなー」


 どうやら海の向こうから移動する前に先行してチヨリさんがこちらの大陸に移動し、あの場所に導かれ、みんなを呼んだのが始まりみたいですね。


 「ちなみにユーリとリコが生まれたのもその時期だぞー」

 「という事は、あの村の始まりはチヨリさんとお父さんとリコさんが始まり……ん? リコさんですか?」

 「うむー。リコは私の娘だからなー」

 「えっ、リコさんがですか!?」


 今日一番の驚きかもしれません!

 

 「そうだぞー? 光の龍神様を身に宿しているのは娘だからだぞー」

 

 だからさっき元々は違うと言ったのですね。

 

 「うむー。リコが生まれた時に光の龍神様を移したからなー」


 そんな事が出来るのですね。

 えっと、まとめてみると……。

 ジーアさんの一族とチヨリさん達は同じ一族で、ユーリお父さんとリコさんはチヨリさんの娘で、ジーアさんの一族があの場所に住んでいたのはチヨリさんが導かれたからという事ですかね?

 

 「大体そんな感じだなー」

 

 それでもまだ語られていない事は沢山ありますけどね。

 チヨリさんの相方が誰なのかを聞いてもチヨリさんははぐらかしてきますし、未だにもう一人のおばあちゃん? もしくはおじいちゃんはわからないままです。

 それを言ったらアンジュお母さんの方のおじいちゃんおばあちゃんもわからないですけどね。

 そんな事よりも……。


 「どうしてその事を僕に教えてくれなかったのですか?」

 「さっきも言ったが、気をつかわせたくなかったからだなー」

 「リコさんの事もですか?」

 「うむー。ユアンから見てリコは叔母にあたるからなー。リコも今の生活が気に入っているみたいだし、それを崩したくなかったからなー」


 確かに知っていたら気を使ったか、もしくはリコさんをメイドさんとして雇う事はなかったかもしれません。

 むしろ家でゆっくりしていてくださいとお願いしたかもしれないです。


 「でもそれはリコは望んでいないからなー」

 「それで教えてくれなかったのですね」

 「うむー。だからこれからも同じように接してあげてくれなー?」

 「出来る限りそうしますけど……」

 「けど?」

 「僕がチヨリさんに甘えるのはいいですか?」


 もちろんお仕事の事では甘えたりなんかしませんよ?

 ですが、それ以外の時……例えば一緒にお茶をしたりとかお昼寝した時なんかは甘えてみたいです。

 

 「うむー。構わないぞー」

 「本当ですか!?」

 「うむー。ユアンはユーリにもアンジュ様にも甘えられなかったからなー。代わりではないが、わっちでよければ好きなだけ甘えろー」

 「チヨリさんは誰の代わりでもありませんよ。チヨリさんはチヨリさんで僕のおばあちゃんですからね!」


 実はちょっと憧れがありました。

 ローゼさんとローラちゃん。

 あの二人はおばあちゃんと孫の関係ですが、よくローラちゃんがローゼさんに甘えているのが少し羨ましかったのです。

 

 「そうだなー。残りの時間がどれくらいあるのかわかないが、最後の時間くらいはユアンのおばあちゃんでいるなー」

 「もぉ! だから最後とか言わないでくださいよ。チヨリさんには長生きして貰わないと困りますからね!」

 「そうありたいけどなー、この間、最後の龍神様の欠片がリコに移ったからなー。わっちはもう抜け殻みたいなものなんだよなー」

 「抜け殻ですか?」

 「うむー。わっちがこの姿でここまで生きてきたのは龍神様のお陰だったからなー」

 

 それが若さの秘訣だったという事なのですね?

 という事は、チヨリさんの命はもう?


 「直ぐの直ぐって訳ではないぞー? ここから少しずつ衰えていくとは思うぞー?」

 「本当ですか?」

 「多分なー」


 だけど、その確証もないとチヨリさんはいいます。

 それが十年先なのか、一年先なのか、明日なのか。

 ですが、確実に終わりは近づいているとチヨリさんはわかっているみたいです。


 「出来る限り、長生きしてくださいね?」

 「うむー。努力はするぞー。わっちもユアン様の先をもっとみたいからなー」

 「はい、頑張りますので見届けてください」

 「うむー」


 トレンティアの月明りの下でチヨリさんとそんな約束を交わしました。

 しかし、この数日後にあんなことになるとはこの時は思いもしなかったのです。

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