第614話 補助魔法使い、勘違いが発覚する
ローラちゃんの一言に僕は自分の耳を疑いました。
なので、確かめるようにもう一度ローラちゃんに尋ねると、やはり同じ答えが返ってきました。
「そうですか……チヨリさんは僕のおばあちゃんだったのですね」
「もしかして、知らなかったのですか?」
「はい……全く知りませんでした」
「私の能力なので信じられないかもしれませんけど本当ですからね?」
「疑ってなんかしていませんよ」
同じような能力を持った人を僕は知っていますからね。
ただ、それはそれで気になる事があります。
どうしてその事を僕に教えてくれなかったのかという事です。
「それは、アリアも知らなかったからだなー」
「チヨリさん……」
ローラちゃんと会話を続けていると、気づけばチヨリさんが僕のすぐ傍まで来ていました。
どうやら、僕とローラちゃんの会話を聞かれてしまっていたみたいですね。
こうなったら隠す事は出来ませんね。
「チヨリさんすみません」
「どうしてユアンが謝るんだー? 謝るとしたらわっちのほうだぞー」
「いえ。チヨリさんは悪くないですよ」
これはどう考えても僕が悪いですからね。
もっと静かに話すべきでした。
なので、僕は素直にチヨリさんに謝る事にしたのです。
「本当にすみません。ここまで計画したのに、チヨリさんとローラちゃんの仲を深める作戦は失敗しちゃいました! なので、ここからはチヨリさんに頑張って貰わないとダメみたいです!」
まさかこんな形で失敗するとは思いもしませんでした。
もしチヨリさんにバレていなかったらまだ挽回の余地はあったかもしれませんが、こうしてローラちゃんとの会話を聞かれてしまった以上は無理ですよね。
きっと、その前の会話からチヨリさんには聞かれていた事になりますからね。
「ユアン……気にする所が違うと思うんだけど」
「うん。今気にする所はそこじゃないと思うの」
気づけば、みんなも僕たちの会話を聞いていたみたいですが、何故か僕に呆れているみたいです。
「で、でも……折角みんなで計画を立てたのですよ?」
それに、ドレスの準備やお化粧まで頑張ったのです。
それなのに、この結末は無いと思います!
「そうかもしれないけど、さっきの内容はスルーできないと思うの」
「どうしてですか?」
「チヨリさんとユアンは祖母と孫の関係なんでしょ? 普通驚くよね?」
「驚きましたよ?」
まるで驚いていないみたいな言い方をされましたが、いきなりそんな事実が発覚すればだれでも驚きますよね?
当然僕だって凄くびっくりしました。
「でも、チヨリさんが僕のおばあちゃんでも何も変わりませんよね?」
チヨリさんはチヨリさんですからね。
あっ、でもおばあちゃんが親衛隊というのは少し変かもしれませんね。
そうなると、チヨリさんとの関係は少し変わる可能性は確かにありますね。
「そうかもしれないけど……何ていうかなぁ」
スノーさんが困ったように頭を掻きました。
そんなにおかしいですかね?
「スノー別におかしくない。ユアンがお義母さん達とあった時を思い出す。あの時も大して驚いてなかった」
「あー、確かにそうだったね」
「感動もしてなかったと思うの」
「うん。だからこれは普通。ユアンは驚きすぎるて逆に冷静になってるだけ」
「そう言われるとそうかもね」
「考える事を辞めてるって事なのですね」
むむむ……納得して貰えたみたいですが、何だから釈然としませんね。
ですが、実際にそういう時ってありますよね?
まぁ、それはさておき今はチヨリさんの事です。
「それじゃ、チヨリさん今からアピールしましょうか」
「何をだー?」
「何をって……チヨリさんはローラちゃんが好きなのですよね?」
流石にローラちゃんに聞かせる訳にはいかないので、僕はチヨリさんに耳打ちをしました。
こういうのはやっぱり本人の口から伝えるべきですからね!
「何の話だー?」
「何の話って……えっと、チヨリさんはローラちゃんが好きで、最近会えなくて元気がなかったのではないのですか? なので、いっそのこと想いをこの場で伝えたりした方がいいのかなと思いまして……」
「うむー? 全く話が見えてこないなー。別にわっちはローラの事が好きな訳ではないぞー? 可愛いとは思うけどなー」
あ、あれ?
チヨリさんから予想外の言葉が飛び出ましたよ?
「それは、本当ですか?」
「本当だぞー?」
冗談を言っているみたいではないみたいですね。
という事はこれは……。
「またユアンの勘違いか」
「そうだと思いましたよ」
「協力したのが全部無駄になったなー」
「ユアン、どんまい」
みたいです。
チヨリさんがローラちゃんの事を好きというのは全部僕の勘違いで、ドレスを用意してお化粧までしたのも全部無駄になってしまったみたいです。
「ユアンさん、今のはどういう事ですか?」
「あっ、ローラちゃん?」
しかもそれだけではないみたいです。
チヨリさんに事実確認をし終え、振り向くとそこには頬を膨らましたローラちゃんがいました。
「今のはどういう事ですか? チヨリさんと私の仲を深めるとか聞こえましたけど?」
「えっと、それはですね……」
勘違いでした……の一言では済まない雰囲気ですね。
これはちゃんと説明する必要がありそうです。
まぁ、結局は僕の勘違いなのですけどね。
「ぷぅ! 酷いです! 私が好きなのはユアンさんだけですっ!」
「す、すっません……ローラちゃんとチヨリさんの仲が随分と良かったので、そういう関係なのかと思ってしまいまして」
「あれは、ユアンさんのおばあさまと仲良くなるのと認められる為に頑張っていただけです!」
だからって抱き着く事はないと思いますが……それを言ったら更に怒らせちゃいそうですよね。
「ほぉ、ユアンはそんな事をしていたのか」
「これはローラが傷ついちゃったわね」
「そうじゃな。これはユアンに責任をとって貰わないといかんのぉ」
僕が暫くローラちゃんに事情を説明しつつ謝っていると、その様子を見かねたのかローゼさんとフルールさんが話に加わってきました。
「責任ですか?」
「うむ。ユアンはローラの気持ちを踏みにじったのじゃからな」
「好きな人が居るのに、他の相手とくっ付けようとするなんて酷いと思わないかしら?」
むむむ……確かにそれは酷い話ですね。
「えっと、責任っていいますけど何をすればいいのですか?」
「それは儂らが決める事ではない」
「ローラの希望を叶えてあげたらどうかしら?」
ローラちゃんの希望ですか。
それだけの事をしてしまったので、仕方ないですね。
「そうですね。ローラちゃん、今回は本当にすみませんでした。お詫び……で済ますのも申し訳ないですが、ローラちゃんとはこれからも仲良くしたいと思っていますので、僕に出来る事であれば何でも言ってください」
「本当ですか?」
「はい。流石に結婚や付き合ってくれと言われてもそれは無理ですけどね」
そこはハッキリりと伝えておかないといけません。
あくまで僕に出来る事です。
「そうですか……それなら、デートしてくれませんか?」
「デートですか?」
「はいっ! ユアンさんと一日、何処かに二人きりでお出かけしてみたいです!」
「それくらいなら構いませんよ」
一応ですが、ちらっとシアさんの方を見ると小さく頷いてくれました。
シアさんもそれくらいなら許してくれるみたいですね。
「約束ですよ!」
「はい。約束します」
「えへへっ、ちゃんとエスコートしてくださいね? 出かける場所とかも全部ユアンさんにお任せしちゃいます!」
「全部、僕がやるのですか?」
「はいっ!」
とてもいい笑顔で頷かれました。
泣いたり怒ったりしているよりはいいですが、これは大変な事になりそうですね。
ともあれこれでローラちゃんの機嫌も治ったみたいですね。
ですが、全てが解決したわけではありません。
もう一つ、もっと重要になりそうなことが残っています。
「さて、また飲むかー。ローゼ、フルール、まだまだ付き合えー」
「うむ。話の続きといこうかのぉ」
「今日はとことん付き合うわよ」
しかし、チヨリさんに話を聞く前にチヨリさんはローゼさん達とまたお酒を呑みに戻ってしまいました。
そして、結局その飲み会はその後も続く事になり、サンドラちゃんとローラちゃんが先に限界を迎えそうになった為に、僕達は先に戻る事になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます