第604話 補助魔法使い、闇の龍神様を救出を終える

 「ん~、ご馳走様でした」

 「い、いきなり酷いよ……」

 「嫌だったのかい?」

 「い、嫌じゃないよ! だけど、こういうのはもっとその場の雰囲気とかが大事というか……」

 

 リコさんとジーアさんを包み込んでいた光が治まると、そこには嬉しそうに微笑むリコさんと顔を真っ赤に染めながらも満更でもない様子でリコさんの事を見つめるジーアさんの姿がありました。

 

 「雰囲気ねぇ。そんな事を言ってたら好きな時にジーアの事を可愛がれないよ~?」

 「そうかもしれないけど、やっぱり人前というのは恥ずかしいよ……」

 「そういうものかねぇ?」

 「そういうものだよ!」


 そういうものです!

 リコさんは首を傾げていますが、僕もジーアさんと同じ考えです!

 手を繋いだりするくらいなら平気ですけど、流石に人前でキスをしたりするのは恥ずかしいと今でも思います。

 リコさんはその辺りは気にしないみたいですが、これから先ジーアさんはその事で振り回されるかもしれないですね。

 

 「ん~? ま、今度から気をつけるよ。それよりもさ、体の調子はどうだい? 大丈夫だとは思うけど、どこか違和感とかあるかな?」

 「今の所は大丈夫だけど、体がポカポカする気がして、体が少しだけだるい気がするかも?」

 「それくらいなら大丈夫だね。龍神様の魔力が体内を循環しはじめているだけさ。体のだるさは魔力欠乏だね。そっちの方は夜にでも私の魔力を分けてあげるからそれまで少し我慢してくれるかい?」

 「うん。辛い訳じゃないから大丈夫だよ。ありがとう、お姉ちゃん」

 「いやいや、こちらこそだよ。夜が楽しみだねぇ~」

 「?」


 楽しみといったリコさんに対し、ジーアさんは首を傾げました。

 あの様子だと何をされるかわかっていないみたいですね。

 僕の予想だと……いえ、やめておきましょう。

 二人のそのような姿を想像するのは失礼ですからね。


 「それで、これから二人はどうするつもりですか?」

 「私達かい? ん~、ユアンちゃん達が構わないのなら、今まで通り過ごしたいとは思ってるよ」

 「私もです。まだ理解が追い付いていませんが、今の生活は楽しくて幸せなので、このままユアンさん達のお屋敷で働かせて頂けると嬉しいです……迷惑ですか?」

 「迷惑な訳ないですよ! むしろ、リコさんとジーアさんが居なくなったら僕たちの生活が困ります!」


 これはみんなの本心です。

 もしリコさんとジーアさんが居なかったら、僕たちはここまで自由にやってくる事は出来ませんでした。

 最近では他のメイドさんも増えていますが、そのメイドさんを育ててくれたのはリコさんとジーアさんですし、今でも纏めてくれてるのも二人です。

 

 「何よりもリコさんもジーアさんも家族みたいなものですからね、居なくなってしまったら淋しいですよ」


 これが一番の理由ですね。

 やっぱり一緒のお屋敷で暮らし、朝と夜に顔を合わせているとそれが当たり前となっているので、いきなりそれがなくなると凄く淋しい気持ちになります。


 「なら、これからもユアンちゃん達にはお世話になろうかな」

 「はいっ! 是非ともこれからもよろしくお願いします!」

 「こちらこそです」


 色々とありましたが、これで一件落着ーー……。


 「じゃない。やらなくちゃいけないことはまだいっぱい」

 「でしたね……ってシアさん、動けるのですか?」

 「うん。頑張って抜け出してきた」

 

 気づけばすぐ傍にシアさんが立っていました。

 スノーさん達は……まだ止まったままですね。

 

 「いや~、流石はリンシアちゃんだねぇ」

 「そんな事ない。あれをやられたら私は無力だからリコには勝てない」

 「仮にも龍神様の力だからねぇ。だけど、それを破ってくるとなると相当だと思うよ?」

 

 確かにそうですよね。

 時間を止める力と言えばいいですかね?

 あれをやられたら大半の人が無力化する事が可能です。

 

 「でも、どうしてシアさんは抜けだす事が出来たのですか?」

 「わからない。動けと思ってたら動けた」

 「という事は、ずっと意識はあったという事ですか?」

 「うん。リコとジーアがちゅーするのも見てた」

 「ひぅ……そういう事は、言わないでください」


 途端にジーアさんの顔が真っ赤に染まっていきます。

 それに対しリコさんは気にしていないみたいで、腕を組み何かを考えているみたいですね。


 「ふむふむ? リンシアちゃんにはこの力は完全に効かないのか……という事は、リンシアちゃんにも龍神様の血が混ざっているという事なのかな?」

 「えっ、シアさんに龍神様の血がですか?」

 「そういう事になるねぇ。じゃないと、説明がつかないよ?」


 凄いですね!

 流石は僕のお嫁さんです!


 「違う。多分、それはユアンのお陰」

 「僕のですか?」

 「うん。私の中にはユアンの血も流れてる」

 「あ~! それなら納得だね。ユアンちゃんにこの力は全く効かないからねぇ」

 「そうなのですか?」

 「そうだよ? 実際にユアンちゃんは自由に動けているじゃないか」

 「それはリコさんがそういう風に力を使っているからじゃないのですか?」

 「違うよ~。この力はそんなに汎用性の高い力でもない訳だし。ジーアが自由に動けるようにするのが精一杯だったくらいさ」


 どうやらこの状態で動けるのは普通ではないみたいですね。


 「では、どうして僕は動けるのですか?」

 「簡単だよ? ユアンちゃんは私の子供みたいなものってことさ!」

 「こ、子供ですか?」

 「子供みたいな、だからね? 実際には違うよ~」

 「ですよね」


 そうですよね。

 僕にはちゃんと別のお父さんとお母さんが居ますからね!

 

 「それじゃ、さっきのはどういう意味なのですか?」

 「簡単に説明すると、龍神様の子供の血がユアンちゃんの中に継がれているって事じゃないかな?」

 「僕の中に龍神様の血が流れているという事ですか?」

 「そういう事になるのかね?」


 そう言ってリコさんも首を傾げました。

 

 「どうしてリコも首を傾げるの?」

 「ん~。私の中に龍神様が居るだけで、私は龍神様ではないからねぇ。流石に龍神様の子供が誰でその子孫が誰なのかという事はわからないよ? まぁ、ユアンちゃんには親近感が湧いているし、多分そうだとは思うけどねぇ」


 あくまで憶測の域なのですね。

 ですが、何となくですがその可能性が高いように思えました。

 むしろそうじゃないと、シアさんが動ける理由と僕が動ける理由がわかりませんからね。


 「それもいつかは知りたい事ですね」

 

 自分の事なのに知らない事ばかりというのは嫌ですからね。

 まぁ、これ以上は自分が何者なのかと疑うようなことは増えないと思いますけどね。


 「それはそうと、そろそろ時を動かしてもいいかい? いい加減疲れてきちゃったよ」

 「あっ、すみません。もう大丈夫だと思いますよ」


 闇の龍神様の救出は無事に終わりましたからね。

 これ以上、リコさんに負担をかける訳にはいきません。


 「了解さ! それじゃ、元に戻すよ?」

 

 ほいっ!

 という掛け声をリコさんが出すと、それだけで時間が動き出したみたいですね。


 「あれ、ジーアさん?」

 「いつの間に?」

 「なー? ジーアも転移魔法が使えたのかー?」


 スノーさん達がジーアさんを見て驚いています。


 「えっと、これには理由があってですね」


 まずはその説明からしないといけませんね。

 僕は今起きていた事をスノーさん達に説明を始めました。

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