第597話 補助魔法使い達、助けに向かう
「本当にこっちで合ってるの?」
「合っていますよ。次はこっちです」
「複雑な場所だなー」
サンドラちゃんがそう感じるのも当然ですね。
僕もシアさんから情報を受け取った時に真っ先に思った事がそれでしたからね。
「でもさ、どうしてこんな所を進んだ先に救助者と魔物が大量に居るのかな?」
「多分ですけど、今から向かっている所がそういう所だからですよ」
「どういう場所なのですか?」
「奴隷を収監しておく場所だと思います」
シアさんの見た映像では、隷属の首輪をつけた人たちが僕たちがやっていたように、机や椅子などでバリケードのようなものをつくり、そこを拠点にしてゾンビの群れを撃退している所でした。
きっと、この道はそこに行くために作られた裏のルートで、奴隷商が使っていた道なのだと思います。
なのでここまで道が複雑に作られているのだと思います。
「なるほどね。救助者は奴隷として捕まった人たちだったんだ。だけど、ゾンビはどうして?」
「それは私達が原因。他の通路を影狼で探ったら、城の地下へと続いてた」
「なるほど。納得したよ」
この予想は外れておいて欲しかったですけど、シアさんがついでに調べてくれたのですが、その予想は当たってしまったみたいですね。
「とりあえず、まずは魔物を倒す事に専念しましょう。ここを抜けれたら直ぐです」
手元の地図が間違っていなければ、この通路を抜けた先はオークション会場みたいな場所の二階に繋がっていて、そこから一階に降りると、救助者とゾンビたちが集まっている場所になっています。
「作戦は?」
「キアラちゃんとサンドラちゃんとルリちゃんとリコさんは救助者の援護に向かって、それ以外はゾンビの殲滅に向かいましょう」
「それで構いませんが、ユアンさんもそっちなのですか?」
「はい。僕にはサクヤが居ますからね。ゾンビくらいなら普通に戦えますよ」
「私も手伝わなくていいのかい?」
「はい。リコさんの魔法は倒す事よりも守る事の方が向いていると思いますので、そっちをお願いします」
ゾンビには有効で、人には無害となればゾンビに近づかれても問題なく魔法を使う事ができますからね。
「ユアン殿、私はリコ殿の方に回ってもいいかな?」
「どうしてですか?」
「リコ殿達の方が危険な可能性もあり得るからだ。追い込まれた人間は何をするかはわからない。場合によっては魔物より危険な可能性があると思うよ」
「そういう事でしたらお願いします」
キアラちゃん達だとゾンビを相手にするのは苦手だと思いそちらをお願いしましたが、選出したメンバーはみんな小さくて侮られやすいメンバーでしたので、ラインハルトさんの言う通り、キアラちゃん達だけにあちらを守ってもらうのは危険でしたね。
となると、こっちのメンバーが一人減ってしまう訳ですが……。
防御魔法と
ラインハルトさんの聖剣にはゾンビ相手に有効なので手伝ってもらえないのは残念ではありますけどね。
それでも、キアラちゃん達を守ってくれるのならそっちの方が助かるのも確かです。
「では、突入しますよ。防御魔法があるとはいえ、敵の数は多いので囲まれないように気をつけてください」
一番怖いのは同士討ちですからね。
ゾンビに囲まれ、視界がうまく確保できず、がむしゃらに剣を振り回した結果、仲間を攻撃してしまう事だけは避けなければいけません。
るのです。
といっても、この中で一番危険なのは僕なのでみんなに注意するというよりも、自分の言い聞かせる意味合いの方が大きいですけどね。
何せ、この中で一番経験不足なのは間違いなく僕なのですから。
「打ち合わせ通りお願いしますね。では、3……2……1……行きます!」
オークション会場におりた僕たちは、商品を会場へと運ぶための扉の前に立ち、僕の合図とともに勢いよく中へと飛び込みます。
「シアさん!」
「任せる!」
オークション会場を抜けた先は、僕たちのお家にある玄関ホールくらいの大きさがある広間になっていました。
事前に打ち合わせていた通り、シアさんが先陣をきり、その後に僕が続き、ゾンビの大群に道を作り、救助者が居るバリケードが設置された部屋へと向かいます。
「スノー、反対は頼んだぞ」
「お任せください」
その道を守るのはスノーさんとエレン様で、左右から迫りくるゾンビを撃退して、道が塞がらないようにしてくれています。
「サンドラちゃん、今のうちにいきますよ」
「わかってるぞー」
「いや~、流石にこれだけ沢山いると少しばかり気持ち悪いね~」
「ルリは相性が悪いから戦わなくて済んで良かったんだよ!」
「みんな、意外と余裕なんだね」
シアさんと僕が作り、スノーさんとエレン様が守ってくれた道をみんなが通り抜けます。
「シアさん」
「平気。もう合流できる」
「わかりました。キアラちゃん達を届けたら、そのまま反転ですね」
「うん。反撃にうつる」
このままいけば第一段階は上手く行きますね。
そうなってしまえば、こちらのものです。
後は少しずつゾンビを倒せばおしまいです。
この場は、ですけどね。
今もお城の方ではゾンビがどんどんと生まれてきているみたいなので、いずれはそちらをどうにかしなければいけません。
そうしないと、一生とまではいきませんが、死体がある限りずっとゾンビが生まれてしまいますからね。
「ユアン、こっちはいいよ」
「後は暴れるだけか。ふっ、退屈はせずに済みそうだな」
「あまり無茶だけはしないでください。本当にお願いします」
「ならば、スノーも共に働く事だ。前のようにな」
「わかってますよ」
スノーさんは相変わらず大変そうですね。
エレン様と一緒に居る限りは気が休まる事はなさそうです。
「ユアン。大丈夫?」
「はい、気持ち悪いとは思いますが大丈夫ですよ」
「うん。無理はしないように。きつかったらラインハルトと交代する」
「まだ大丈夫ですよ」
始まったばかりですからね。
きつくなるのはこれからです。
何せ、パッと見た限りでも二百……いえ、三百くらいのゾンビの姿が見えますし、お城へと続く道でしょうか?
そこからゾンビがどんどん補充されているのがわかります。
「これは骨が折れますね」
「うん。だけど、面倒なだけで問題ない」
体力勝負になる時点で問題ですけどね。
「まぁ、最悪の場合は僕がバリケードの前に立って、防御魔法で入れないようにして時間を稼げばどうにかなりますね」
救助を待つ人たちが集まっていた場所の出入り口が一つしかなかったのが助かりますね。
みんなの体力が追い付かなくなるようでしたらその方法で休みながら戦うのも一つの方法ですね。
「それよりも殲滅した方が早い」
「そうですね。ですが、あまり一人で突っ込んでは駄目ですからね?」
「わかってる。ユアンも油断しないように」
「わかってますよ。師匠の言う事はちゃんと聞かないとダメですからね」
「うん。偉い」
シアさんとこうやって肩を並べて戦うのは久しぶりですが、師匠と呼ぶとシアさんの尻尾が嬉しそうに揺れたのがわかりました。
この状況でも楽しめるのは羨ましいですね。
内心はゾンビ相手で嫌なのかもしれないですけどね。
「では、やりましょう」
「うん。スノー、そっちは任せる」
「了解。エレン様、守り重視でお願いします」
「うむ。攻撃こそ最大の防御だな」
違うと思いますけど、まぁエレン様なら放っておいてもきっと大丈夫なのでそっとしておく事にしました。
僕は僕で集中しないといけませんからね。
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