第595話 補助魔法使い、リアビラを探索する

 「もう大丈夫ですよ」

 「ありがとうございますっ! このご恩は一生忘れませんっ!」

 「気にしないでください。とりあえず、安全な場所へと案内しますね」


 ゾンビや屍鬼グールを倒しながら生存者を探していましたが、これで生存者の数は二十を越えましたね。

 

 「ユアン、次は?」

 「次は……あっちですね」

 「大丈夫?」

 「あんまり無理はしないでくださいね?」

 「大丈夫ですよ。一瞬だけ探知魔法を使うだけならそこまで辛くはありませんからね」

 「心配だぞー」

 「その気持ちだけで十分ですよ」


 それよりも、こうしている間にも救助を待つ人たちが居ますし、頑張っているのは僕たちだけではありませんからね。


 「それよりも、リコさんはこっちのお手伝いで良かったのですか?」

 「構わないよ~。というか、ジーアに断られちゃったね~」

 「何でですか?」

 「ん~? ジーアにも色々あるんだよ、きっとね」


 喧嘩した訳ではないのならいいのですが、少し心配ですね。

 だけど、本当に大丈夫なのでしょうか?

 ジーアさん達の事を疑う訳ではありませんが、救助した人達は僕たちのお家へと避難させているので、相当な負担になっていると思います。

 そこにリコさんとラインハルトさんが加われば、ジーアさんやオメガさんの負担は減ると思ったのですが……まぁ、本人たちが大丈夫と言うのなら信じるまでですけどね。


 「しかし、何があってこうなったのでしょうね」

 「うん。生存者から話を聞いても謎は深まるばかり」

 「何が起きたのかわかっていなかったね」

 「気づいたら街中がこうなっていたとみんな言っていましたね」

 

 それがよくわからないのですよね。

 ゾンビや屍鬼グールが発生しているという事は、人為的に起こされていると思うのですが、その意図が見えてきません。

 もしかしたら僕たちがリアビラに来る事を予想した罠の可能性もありえますが、わざわざ自国を犠牲にしてまでやる事ではないと思うのですよね。


 「後は街に兵士が居ない事も気になりますね」

 「うん。抵抗した後が見当たらない」


 まさに蹂躙って感じですね。

 幸いな事に、人の死体とかはほとんど見当たりませんが、建物や家屋は無残なほどに荒らされています。

 そこに、抵抗した後……例えばですが、兵士さんが戦った跡などがありそうなものですが、それすらも一切見当たらないのです。

 

 「王様と一緒に逃げちゃったのかな?」

 「それもありえるなー」


 そうだとしたら酷い話ですね。

 街の人を護らず、自分たちは安全な場所に逃げるなんて、責任感が無さ過ぎると思います。

 まぁ、仮にそうだとしたらですけどね。

 真実は今の所はわかりませんので一方的に非難する事はできませんが、リアビラの今までのやり方を考えると十分にありえそうな事だとは思えます。


 「まぁ、考えても仕方ありませんし、今はやれる事をやりましょうか」

 「うん。救える命は救う」


 という事で、僕たちは引き続き、魔物退治と人命救助を続ける事にしました。


 「ーーっ!」

 「大丈夫?」

 「はい、大丈夫ですよ」

 「ユアンがそんな反応をするって事は、何かあったのかな?」

 「はい。凄い沢山の反応がありました」

 「どっちの反応ですか?」

 「両方です」


 例えるのなら、二つの軍に分かれるように、青い点と赤い点が纏まって対峙しているような感じですね。


 「だけど、そんな様子は見られないぞー?」

 「それだけの反応があるのなら、直ぐにわかりそうなものだけどね」

 「わからないならわからない理由がある筈」

 「そうですね。この場合だと、地下なのかな?」

 「多分、そうだと思います」


 奴隷を扱う街ですからね、表ではできないような商売をする場所があってもおかしはないですよね。

 

 「といっても、問題は何処からそこに行くかですよね」

 

 地下への入り口が何処かにあるとしても、この状態からその場所を探すのは困難です。

 なにせ、建物が崩壊してしまっている場所もあるくらいですからね。

 仮にそこに地下への入り口があったとしたら、まずはその建物をどうにかしなければいけません。


 「ユアン。私に任せる」

 「シアさんにですか?」

 「うん。影狼なら、隙間も入っていける」

 「影なので、決まった形がないからですか?」

 「うん。その代わり、扱うのに普段と勝手が違うから集中する必要がある」

 「わかりました。僕たちはその間、シアさんを守ればいいのですね?」

 「うん。任せる……だけど、先に一つ言っておく。スノー」

 「……何かな?」

 「私が動かない事をいい事に変な事はしないで」

 「し、しないしっ!」


 本当ですかね?

 シアさんの忠告に変な間がありましたよ?


 「シアさん大丈夫だよ。スノーさんは私が管理しますので」

 「私もスノーの面倒見るぞー」

 「うん。よろしく頼む」

 「私、どんなけ信用ないんだろう……」


 スノーさんを信用していない訳ではないですけどね。

 ただ、スノーさんは僕やシアさんなど、獣耳や尻尾の事になると暴走気味になるので、シアさんはそこが心配だっただけだと思います。

 

 「では、シアさんが戻るまで僕たちはシアさんを守りましょうか」

 「戦うのは私とエレン殿ばかりだけどね」

 「ダメですか?」

 「いや、ユアン殿達の役に立てるのなら私は気にしないよ」

 「ふっ、私も戦えるのであれば相手が何者であろうとそれだけで満足だ」


 頼もしいですね。

 僕たちは元は何かのお店屋さんだったのでしょうか?

 守りやすそうな建物を選び、そこに簡易拠点を築きました。

 拠点といっても、ゾンビが簡単に入って来れないように机を並べたりして、ゾンビの進行ルートを制限するくらいですけどね。

 それでも、その先にはラインハルトさんとエレン様が待ち構えているので、簡単には突破できない拠点に仕上がりました。


 「シアさんの探索が終わるまで、順番に護りながら休憩をしていきましょう」


 どれくらいかかるのかはわかりませんからね。

 数分なのか、一時間なのか、それともそれ以上なのか。

 どちらにしても今は待つ時間です。

 それならば、待つ時間を利用して少しでも休憩するのが得策と、僕たちは順番に休憩をとることにしました。

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