第594話 補助魔法使い達、リアビラに着く

 「ここが、リアビラの都なのですかね?」

 「私に聞かれても困る」

 「それじゃ、誰に聞けばいいのですか?」

 「スノー辺り?」

 「私に聞かれても困るよ。キアラならわかるんじゃない?」

 「わかりませんよ。私だってリアビラへ来るのは初めてですからね」

 「結局誰もわからないみたいだなー」


 みたいですね。

 さて、困りました。

 僕たちはようやくリアビラの都へとやってみたいです。

 ですが、やってきた『みたい』なのですよね。

 というのも……。


 「何かあったのですかね?」

 「うん。昼間から門が閉まり、門兵の姿も見えないのはどう考えてもおかしい」

 「これじゃ、街の出入りは誰も出来ないよね」

 「かなり不気味だと思うの」

 「あの噂は本当だったのかもしれないなー」


 あの噂ですか。

 僕たちが聞いた噂では、リアビラの都はゾンビに支配されているという話しでした。

 そんなまさかと思っていましたが、この様子だと……なんだかあり得るような気がしてきました。

 もちろん、中を見て見ない事にはわかりませんので、実際の所はどうなっているのかは知りません。


 「ユアン、中の様子はどうなの?」

 「それが、探知魔法では探れなくなっていますね」

 「妨害されてるって事?」

 「そうなりますね」


 流石はリアビラといった所でしょうか、外から情報を探れないように、魔法道具マジックアイテムによって探知魔法等による索敵は対策済みのようです。

 

 「となると、上空から探るのも無理だよね?」

 「多分無理だと思うの」

 

 探知魔法を妨害しているくらいですし、そっちの方も当然対策はしていると思います。

 実際にキティさんの配下にリアビラの上空へと飛んで貰いましたが、やはり中の様子は伺えないとの事でした。


 「それじゃ、無理やり押し通るしかないのかな?」

 「そうなりますが、いいのですかね?」

 「仕方ない。これは緊急事態」

 

 そうは言いますが、門を固く閉ざしているのには別の理由があるだけかもしれませんし、勝手に入るのはマズいような気がするのですよね。


 「とりあえず、あそこをノックでもしてみましょうか」


 門の隣に、人一人が出入りできるくらいの扉がありましたので、僕たちはそこをノックし、中からの反応を待つ事にしました。


 「予想はしていましたけど、やっぱり反応はありませんね」

 「うん。やっぱり無理やり通るしかない」

 「どうやって? 見た所、かなり頑丈そうだし簡単には通れないと思うよ」


 簡単に壊れるような造りをしていたら、門としての役割を果たせませんからね。

 それは小さな扉の方も同じで、壊そうと思えば壊せそうな感じはしますが、かなり大掛かりな魔法を準備しないと無理そうなくらいには頑丈そうに見えます。


 「大丈夫。ここにプロがいる」

 「シアお姉ちゃん、どうして私を前に出すのですか?」

 「得意じゃないの? 鍵を開けて侵入するの」

 「人を泥棒みたいに言わないんで欲しんだよっ!」

 「それじゃ、無理?」

 「無理じゃないですけど、言い方には気をつけて欲しいです!」


 確かにあの言い方は少し可哀想ですね。

 だけど、実際に出来るのですね。


 「でも、あれならスノーさんも出来そうですよね」

 「前に一度鍵開けはやったことはあるから出来るだろうね」

 「スノーさんも泥棒だったんだねっ!」

 「違うし! ってか、スノーさん『も』って事はルリちゃんも泥棒だったって事だからね?」

 「あっ、今のは無しなんだよ! ちょっと集中したいから静かにして下さい!」


 んー、ルリちゃんの過去も意外と謎だったりするのですよね。

 シノさんの従者だったことは知っていますが、その前は何をしていたのかは聞いた事はありませんでした。

 もしかして、こんな事を出来るくらいですし昔は相当悪い事をしてたりしたのでしょうか?

 いつか聞いてみたい所です。


 「よしっ、開いたんだよっ!」

 

 そんな事を考えると、ルリちゃんは扉の鍵を簡単に開けてしまいました。

 三分もかかっていないのではないでしょうか?


 「では、中に入りましょうか」

 「隊列は?」

 「そうですね……」


 街に入るのに隊列を組むのは変ですが、中の様子がわからない以上は最大限に警戒をした方がいいですね。

 といっても、まずはこの扉の先に続くちょっとした通路を抜けるだけなので、そこまで隊列を気にする必要もないですけどね。

 それでも、そのちょっとが大事だったりもします。

 

 「それでは、エレン様……じゃなくてシレンさんに先頭をお願いしてもいいですか?」

 「ふっ、先陣か。悪くない」

 「助かります」


 無事に受けて貰えましたね。

 

 「ユアン殿、どうしてエレン殿が先頭なのだろうか?」

 「この中で一番勇敢だからですよ」

 「私も負けていないと思うが……」

 「なら、ラインハルトさんが先頭を行きますか? 僕の予想ですと『うがぁぁぁ』……あれが、相手だと思いますけど」

 「私は後ろでいいよ。気遣いありがとう」


 エレン様は気にしていないみたいですが、誰だってあれを好んで戦いたいとは思いませんよね。

 なので、先頭はエレン様にお願いしたのです。

 しかし、本当にいるとは思いませんでしたね。

 声が聞こえたので、エレン様が倒してくれたと思いますが、これで他の街で聞いた噂は嘘ではなかった事が証明されました。


 「でも、どうしてこんな事になっているんだろうね」

 「事故とか?」

 「十分にあり得ますね」


 僕がまだ生まれるずっと前に、魔物の研究に失敗して滅んでしまった街があったと聞いた事があります。

 現在のリアビラの様子を見る限り、僕はその可能性が一番高いように思えました。


 「酷い事になってるなー」

 「ここまでとは思いませんでしたね」


 エレン様がゾンビを倒してくれ、それに続いて進むと、僕たちは街の中へと出る事ができたのですが、そこに広がっている光景は悲惨なものでした。


 「生き残りはいるのかな?」

 「探せばいると思う」

 「だけど、家の中を探すのは無理だと思うの」

 「ぐちゃぐちゃだねぇ~」


 門が見え、そこから大通りが続いているので、ここは本来ならば人が賑わうメインストリートだったのかもしれませんね。

 しかし、今はその面影は何処にもありません。

 メインストリートに建てられた家は崩れかけ、とてもではありませんが人が住める状態ではなくなっています。


 「これからどうするの?」

 「そうですね……」


 僕たちの目的は龍神様を探す事なので、これを放っておいても僕たちに責任はありません。

 

 「ですが、生き残っている人がいるのであれば、助けてあげたいですよね」

 「そうだね。被害者だっているだろうしね」


 普通に暮らしていたのに、いきなりこんな事に巻き込まれた人だって沢山いてもおかしくありませんからね。


 「とりあえず、まずは生き残りを探す事にしましょう」

 

 それと同時にこうなった原因も調べていけるのがベストですね。


 「どうする? また手分けして探す?」

 「そうしたいところですが、あまりにも規模が大きすぎるので今回は別れない方が良さそうですね」


 リアビラの都なだけありますね。

 フォクシアやルード帝国に比べたら少し劣りますけど、お城があるくらいです。

 街の規模を比べてもタンザと同じくらいに広いと思います。

 手分け出来ればそれだけ情報は多く集まるかもしれませんが、何かあった時に連絡をとったり、合流するのに時間が掛かってしまって逆に手間になりそうなのですよね。


 「わかった。だけど、役割は決めた方がいい」

 「それと移動しながらでもいいから、救助した人をどうするかを決めておいた方がいいかもね」

 「中には奴隷の人も混ざっていると思いますので、その辺りも決めておきましょう」

 「思った以上に大変な事になったなー」


 本当ですね。

 まさか、こんな事に巻き込まれる事になるとは、ナナシキを出発した時は思いもしませんでした。


 「愚痴を言っても仕方ありませんね。とりあえず、出来る事から始めて行きましょうか」

 「うん。ユアン、探知魔法は?」

 「はい。中に入ったら大丈夫です。生き残りは……いますね」

 「大丈夫?」

 「はい。だけど、ちょっと無理は出来なさそうです」


 探知魔法の範囲を広げすぎたせいで、情報量が多く、一瞬頭がくらっとしました。

 探知魔法は便利ですが、便利過ぎて困るのが欠点ではありますね。

 後は、細かい融通が利かない所もですね。

 ですが、生存者の反応の位置は何となくですが掴みました。

 それと同時に魔物の存在もです。


 「まずはあっちからですね。魔物はそこら中にいるので、気をつけてくださいね」


 反応からすると、ゾンビだけではなく、屍鬼グールほどの反応もあることがわかりました。

 これは夜になったら更に面倒な事になりそうなので、少し急がないとマズいですね。

 僕たちはリアビラの都を探索するのでした。

 こうなった原因と、助けを待つ生存者を救出するために。

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