第554話 弓月の刻、リアビラに向かう方針をたてる
カミネロさんとイリアルさんからリアビラの事と嬉しい報告を受け、新たにナナシキの一員となった傭兵蟻さん達の事をスノーさん達に報告した翌日、僕たちはリアビラへと向かう準備を始めました。
といっても、リアビラへと向かうのはまだ先になりますけどね。
それまでの間に色々とやる事が増えてしまいましたからね。
「開通式ですか?」
「うん。私達がドワーフの国へと言っている間に、虎族の国【ビャクレン】との道が繋がったみたいだね」
「それと合わせてトーマ様とガロさんの結婚式が行われるみたいで、私達に招待状が送られてきましたよ」
「えっと、そういう大事な事って普通なら分けてやるものじゃないのですか?」
「普通はね」
「ですが、どうやら面倒ごとは纏めて終わらせたいみたいなの」
トーマ様らしいですね。
トーマ様との関りもそれなりに深くなってきたのでわかりますが、確かにトーマ様ならそう考えそうですね。
「でも、ついにビャクレンへの道が繋がったのですね」
これはとてもいい事だと思います。
以前だったらビャクレンまで行くには山を迂回しなければいけませんでしたが、この道が開通した事により、一直線でビャクレンへと向かう事ができ、馬車での移動ならば一日以上は短縮できる事となりました。
「まぁ、それはそれで問題があるんだけどね」
「魔物ですね」
「そうだね」
それは僕も気になっていたのでわかりました。
この辺りには危険な魔物が少ないとはいえ、魔物はそれなりに出没します。
前にナナシキの近くにゴブリンが出没した事もありましたからね。
「でも、それは問題ありませんよね?」
「うん。ラディの配下とコボルト達が魔物を間引いてる」
「キティの配下も常に目を光らせていますよ」
改めてラディくん達には感謝ですね。
街の治安も守ってくれていますし、僕たちの目の届かない所の危険も裏でちゃんと排除してくれていますからね。
「そういえばその件もあったね。ラディ達の暮らす村の場所が決まったみたいだよ」
「それは朗報ですね。何かお手伝いする事はありますか?」
「今の所はないみたいです。何でも自分たちの暮らす場所なので自分たちで開拓したいみたいなの」
一から自分たちで村を作るという事ですか。
大変かもしれませんが、やりがいはあるかもしれませんね。
「ちなみに場所はどの辺りですか?」
「ユアンとオルフェさんが森を造り変えた近くだよ」
意外と近いですね。
ナナシキから一時間程くらい歩いた場所ですね。
「でも、大丈夫なのですか?」
僕とオルフェさんが森を造り変えたのには理由があります。
ナナシキの北に広がる森は広大に広がっているのにも関わらず、魔物の生息がかなりすくないのです。
その解決策として、僕とオルフェさんはマナを生み出す種を撒いて魔物をおびき寄せようとしたのが始まりでした。
そんな場所に村を造るとなれば、当然寄ってきた魔物の脅威に晒されるのはラディくん達になる筈です。
「それも考えの一つみたいだね」
「ラディ達の考えではナナシキへの防衛拠点という意味合いもあるみたいなの」
むむむ。
そうなると余計にラディくん達の負担を増やしてしまった事になりますね。
「大丈夫。影狼族の警邏隊をそっちに回す事もこれから出来る」
「それは有難いけど、そんなに人数を割いて大丈夫なの?」
「平気。影狼族も少しずつ増えているから」
「そうなの?」
「スノーさん、そういう報告はありましたよね? 確認しなきゃダメだよ!」
「ごめん。そっちはあまり気にしてなかったからね」
最近、影狼族の方から挨拶される事が増えてきましたが、そういう事だったのですね。
「だけど、それでもまだ人は足りませんよね?」
「そうだね。ラディ達の街は影狼族にお願いするとしても、ビャクレンに続く道の警備はちょっと足りないかな」
ナナシキも少しずつ人が増えてきたとはいえ、まだまだそういった所では人手不足なのですね。
「まぁ、それはこっちでどうにかするとして、目先の問題はトーマ様の結婚式だね」
「やっぱり参加しないとマズいですかね?」
「そりゃね。王族からの招待状だし、トーマ様にガロさんを紹介をしたのはユアン達だし、流石に断れないかな」
「だけど、嫌なら無理はしないでいいと思うの」
「いえ、嫌という訳ではないので大丈夫ですよ。ただ、絶対に何かしら起きるだろうなと思いまして」
「わかる。絶対に大騒ぎになる」
トーマ様とガロさんの出会いを思い出せばわかりますが、お互いにかなり過激なスキンシップをしますからね。
結婚式なので大人しくしているような気もしますけど、それ以上に大騒ぎする可能性が大きいような気がします。
流石に殴り合いパーティーなんて事にはならないとは思いますけど。
「とりあえず、招待状を頂いてしまった以上は参加するとして、問題は衣装ですよね」
「うん。前のドレスでいい?」
「んー……ユアンは紫、シアは赤だったよね?」
「流石にそれは目立ち過ぎだと思うの」
ですよね。
結婚式というのは新郎新婦さんが主役なので、それよりも目立たない格好をするのが普通みたいです。
前回はシノさんとアカネさんの身内という事でしたし、尚且つ僕たちも何だかんだ言って主役の立場となったので許されると思いますが、今回はマズいですかね?
「となると、また新しいドレスが必要となりますね」
「うん。またアリアにお願いする」
「それが一番ですかね?」
またアリア様に頼ってしまうのは申し訳ないですが、かといって僕たちが他に頼れる人はいませんからね。
「ちなみにスノーさん達はどうするのですか?」
「私達は先に用意してあるから大丈夫だよ」
「立場的に他の結婚式などに呼ばれる可能性がありえますからね」
準備がいいですね。
「後はサンドラちゃんですね……」
「なー……?」
もうお眠の時間みたいですね。
さっきから静かだと思いましたが、サンドラちゃんはソファーに座り、左右に身体を揺らしていました。
「これは明日聞いた方が良さそうですね」
「うん。眠たい時は寝かせてあげる」
「大丈夫だぞー…………なぁー」
全然大丈夫そうではありませんね。
いっそのこと、今回はアリア様に相談してみるべきですかね?
前回も相談していないのに用意してくれていましたし。
「とりあえずその件は置いといて、リアビラはどうする?」
「一応ですが、作戦はいくつか考えてありますよ」
色々と驚きの報告がありましたが、これが本題ですね。
リアビラに向かうに辺り、一番安全な方法は何なのかをみんなで案を出す事になり、僕も僕なりの方法を考えてきました。
「流石にそれは無理かな?」
「どうしてですか?」
しかし、その案は直ぐに却下されました。
「いやね? ユアンがメイド服を着て従者としてついてくるのは変かなって」
「でも、僕たちが奴隷の振りをしていれば、少なくとも僕たちが狙われる可能性は低くなりますよね?」
僕の案はこれです!
僕は貴族であるスノーさんのお世話をするメイドとして活動し、その護衛としてシアさんとキアラちゃん、サンドラちゃんをつけようと思っていました。
「ユアンさんのメイド服は見て見たいですが、流石に無理だと思うの」
「どうしてですか?」
「ユアンからメイドの雰囲気は感じられないかな」
「うん。絶対にドジをする未来が見える」
「そ、そんな事ないですよ! 確かにメイドの嗜みはないかもしれませんが、料理や掃除はそれなりに出来ますからね!」
その点に限ればシアさんやスノーさんよりも上手くできる自信があります!
「それなら逆の発想の方がいいんじゃない?」
「逆って何ですか?」
スノーさんがにやりと笑いました。
何でしょう、少し……いえ、凄く嫌な予感がします。
「私達が護衛になって、ユアンが貴族として振舞えばいいんじゃない?」
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