第324話 補助魔法使い、王様と話をする2

 「まぁ、それが俺とサンドラの関係といったところだな」

 

 話を纏めると、王様……クジャ様は神龍様を崇める龍人族の代表みたいな感じの人で、サンドラちゃんは五龍神様を崇める宗教の巫女をやっていて、お互いに面識があったという事ですかね?

 それで、各宗教の人がそれぞれ人族、獣人、魔族を率いて今の土地に分かれて住んだというのが歴史みたいです。


 「という事はですよ? 王様とサンドラちゃんは敵同士、って事になるのですか?」

 「別に敵対はしていなかったぞー」

 「言い争いはあったけどな」


 それは良かったです。

 ここでサンドラちゃんと王様が敵対し、魔族の方の宗教と三つ巴になったら大変でしたからね。

 

 「まぁ、それもアンジュとユーリのお陰もあるけどなー」

 「お母さん達がですか?」

 「あぁ、そうだ。別に敵対はしていなかったが、交友もなかったからな」

 「それがどうしてお母さん達のお陰に繋がるのですか?」


 仲は良くはないだけで、敵対もしていないのならお互いに干渉をしなければいいだけの話ですよね?


 「俺はルード帝国の龍人族を纏めているのはわかるな?」

 「はい、わかります」

 「魔族の方も魔王ではないが、魔力至上主義が活発に活動している事からわかるように、俺のように龍人族を率いる者がいるのはわかるな?」

 「そうですね?」


 その辺は実際の所はわかりませんけどね。

 前に聞いたサンドラちゃんからの話で、もしかしたら龍姫……サンドラちゃんのお姉さんが生きていて、龍神を恨んでいるとしたら、関わっている可能性があると思えますけど、実際に龍人族が関わっているとは聞いた事はないですからね。


 「それでだ、アルティカ共和国はどうだ?」

 「アルティカ共和国ですか? そういえば、聞いた事ないですね」

 「というか、もういないからなー」

 「え、そうなのですか?」

 「うんー。だって、獣人を導いた龍人族は私達だったからなー」


 そんな歴史がアルティカ共和国にあるとは思いませんでした。

 といっても、まだアルティカ共和国がアルティカ共和国になる前で、種族間で争っていた遥か昔の事になるみたいですけどね。


 「という事は、今現在はアルティカ共和国には龍人族はいないって事になりますか?」

 「そうだなー。 龍姫とその手の者が私達を全滅させたからなー」


 龍姫さんは元々は五龍神を祀る宗教の王様だったって事ですね。


 「って事はですよ? 今のアルティカ共和国はどうなるのですか?」

 「今は特に龍神様を崇めているとかはないだろうなー。だけど、その分布教しやすい状態ではあったな」


 あったな?

 という事は、そうならなかったって事でしょうか?


 「そう言う事だ。お前の親がアルティカ共和国とルード帝国の橋渡しをしたのだ。人族ではなく、龍人族のな」


 どうやら、アルティカ共和国に魔族を率いた龍人族が邪神様を広めに来なかったのは、神龍を崇めるクジャ様達が守ってくれていたという事ですね。


 「まぁ、そこは感謝だなー」

 「別に感謝される事ではないがな。俺達はただ、邪神教が広まるのを阻止したまでだ」

 「それだもだなー。神龍教も広めなかっただろー?」

 「別に広める必要はないからな。必要なのは龍人族の間で争いが生まれない為の均衡だからな」


 出来る事なら、それぞれの宗教は干渉せずに、それぞれの宗教を崇める事ができるのが一番のようですね。

 といっても、龍人族の人達が崇拝するだけで、実際の所は人族、獣人、魔族はその宗教を教え、浸透させる事はしなかったみたいですね。

 どうやら当時は各種族間の仲は良くなかったみたいで、別々に住まわせるのが最善と判断し、引き離しただけのようですからね。

 

 「しかし、それが間違いだった」

 「そうなのですか? そのお陰で各種族で国が出来て、戦争こそありましたが、最近までは安定していましたよね?」


 僕が生まれた頃に戦争があったのは知っています。

 ですが、その戦争は前のルード帝国の王様が暴走した結果みたいですけどね。

 どうしてそうなったのかはわかりませんが、魔族にもアルティカ共和国にも、しまいには龍人族の住む場所をみつけ、そこにも喧嘩を売っていたみたいですし。

 その結果がクジャ様がルード帝国の王様になった事に繋がるみたいですけどね。

 それはさておき、間違いだったとはどういう事でしょうか?


 「戦争が起きてしまった事が問題だったのだ」

 「まぁ、確かに問題ではありますよね?」

 「そうだ。神龍様の教えに背いてしまったのだからな」

 「五龍神様の教えでもあるなー」

 「教えですか?」

 「そうだ。神龍様も五龍神の願いは、種族の間にわだかまりなく、手を取り合い暮らして欲しい、そういった願いがあったのだ」

 「それを私達が引き離してしまったのだなー。きっと、龍姫が、姉様があんな事になってしまったのも、それが原因かもしれないなー。天罰が下ってなー」


 それは……偶然かもしれない。

 とは言えませんでした。

 真実がわからないのに、僕が軽々しく二人を慰めるような言葉を言う訳にはいきませんからね。


 「だけど、今は魔族が色々とやっているのですよね? それを止めようとは思わないのですか?」

 「さっきも言ったが、元々の原因が龍人族にあるにしろ、俺達が前面にでれば向こうの龍人族も出てくるだろう。そうなった時は……わかるな」

 「今まで以上の戦争が起きる、という事ですか」

 「そうだ。だから、向こうの龍人族が表に出てこない限り、俺は動かない。それが、人族の為だからな」


 だから、魔族の事はエメリア様達に任せるという事ですね。


 「なんか、知らなかっただけで世界は大変な事になっているのですね」

 「そうだな。しかし、希望はある」

 「希望はあるのはいい事ですね」

 

 二人の話を聞く限り、争う未来しか想像ができませんでしたが、その中に希望があるというのはいい事だと思います。

 だって、希望があるって事は、それを目標に出来るという事ですからね。


 「その希望は、お前たちだ」

 「誰ですか?」

 「ユアン達だぞー」

 「ふぇ!? 僕達、ですか?」


 どんな希望があるのか期待をしていたら、希望が僕たちだと言われてしまいました!


 「ど、どういう事ですか!?」


 ですが、僕たちが希望と言われたところで、そんな要素は一つも思い当たりません!


 「龍神様の教えは何だ?」

 「えっと、各種族が争いなく手を取り合って生きる、でしたか?」

 「そうだなー。それじゃ、ユアン達のパーティー……もっと言うならば、街の人達はどんな人が集まっているんだー?」


 僕たちの街の人ですか。

 中心は狐族の人が多いですけど、その他にもスノーさんを中心に兵士のデインさんやシエンさんなども居ますね。

 

 「私は魔族」

 「そうですね。魔族の人も沢山いますね」


 最近は影狼族の人達も移住して賑やかになりましたね。


 「エルフ族もいるな?」

 「はい、キアラちゃんとエルさんがエルフ族ですね」

 「あと、ドワーフもいるなー」

 「そういえば、ロイさんはドワーフでしたね」


 僕の知っているドワーフとは全然違いますけどね。


 「という事は、精霊族も住んでいるという事だな」

 「精霊族?」

 「うんー。エルフやドワーフは精霊族と呼ばれているんだぞー」

 「それは知りませんでした」


 となると、これで四つの種族がナナシキに住んでいる事になりますね。


 「それだけじゃなく、魔物も住んでいるな?」

 「はい、魔鼠さんを筆頭に沢山いますね」


 ラディくんが率いる魔鼠さんに、キティさんが率いる魔鳥さん。

 更にはそこにコボルトさん達が今後のナナシキに住む事になりますね。


 「さらに精霊もいるぞー」

 「キアラちゃんとスノーさんと契約している精霊さんも確かにいますね」


 こう考えると、ごちゃごちゃと色んな種族の人がナナシキには住んでいますね。


 「あ、あと龍人族のサンドラちゃんも忘れてはいけませんね!」

 「うんー。私もナナシキの一員なー」

 「ガロは?」

 「ガロさんは……魔族に入るのですかね?」

 「そうだなー。竜人は竜種から進化したと言われているからなー」


 さらっとサンドラちゃんは言いますが、ガロさんは竜人族は龍人族が創ったと信じているので、真実を知ったら驚きそうですね。

 それはさておき。

 今の話から考えると、種族だけ見れば……。

 龍人族、人族、獣人、魔族、精霊族、魔物、精霊と七つの種族がナナシキに住んでいる訳ですね。


 「あれ、これって……」

 「そうだ、龍神様の教えがナナシキには存在している」

 「それが、私達の希望だなー」

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