第42話 補助魔法使い、行動開始!

 「ユアン、起きる」

 「ふぇ?」

 

 シアさんの声で僕は目を開けました。

 あれ、もしかして寝てました!?あの一瞬で……?


 「やっぱり、朝弱い」

 「ちゃんと6時に起きましたよ!」

 「でも、寝てた」

 「うぅ……」


 二度寝の時間は過ぎるのは早く感じます。

 時計を見ると針は7と8の間にいます。気付いたらそれだけ寝ていたという事です。


 「平気。その分、ユアンの寝顔みれた」

 「僕だってシアさんの寝顔みてますからおあいこですよ!」

 「うん。ユアンが見たいなら見ればいい」

 

 寝顔見られて恥ずかしくないのでしょうか?

 僕は寝ている時に間抜けな顔をしている自信があるので、恥ずかしいです。

 

 「大丈夫。可愛い寝顔」

 「シアさんもですよー」


 伸びー!

 やっぱり、これをしないと起きた気はしませんね。一緒に尻尾も伸ばします。

 服のお陰で尻尾を出せるので尻尾も軽快です。前は凝り固まったような違和感が朝からありましたからね。とてもありがたいです。


 「スノーさんはまだ来ていませんよね?」

 「うん。8時に来るって聞いた」

 「なら、すぐに朝食を済ませますか?」

 「待ってもいい。スノーも朝食食べてないかもしれない」

 「そうですね。なら、それまでに支度はしておきますか」


 イルミナさん宿屋はお風呂はないものの、水場があります。

 すごいですよね、蛇口と呼ばれるものを捻ると水が出てくるのです。

 

 「ユアン、これ使う」

 「ありがとうございます」

 

 冷たい水で顔を洗うと目が覚める気がしていいですね。シアさんからタオルを受け取り、顔を拭く。


 「ユアン、髪跳ねてる」

 「どこですか?」

 「後ろ。梳かしてあげるから座って」

 「はーい」


 椅子に座り、シアさんが櫛で僕の髪を梳かしてくれます。

 洗浄魔法クリーンウォッシュを使えばすぐに治りますが、気分の問題です。大事にされてる、と実感できますからね。

 

 コンコン

 大人しくシアさんに髪を直して貰っているとドアをノックされました。


 「ユアン、リンシア、起きてる?」

 

 この声はスノーさんですね。

 待たせるのは悪いので、中に入って貰います。

 

 「はい、動けないので入ってください」

 「入るね……あぁ……!」


 スノーさんは扉を開けるとその場で止まりました。

 とても嬉しそうな顔で僕たちを見ています。


 「おはようございます」

 「うん!おはよう!」

「おはよう。そこに立ってないで中に入る」

 「え、あ……そうね」


 スノーさんが中に入ってきます。

 

 「えっと、こんな状態ですみません」

 「構わないよ!」


 なんか朝からテンションが高いですね。

 何かいいことがあったのでしょうか?


 「もう少しで終わる」

 「え、もう?」

 「うん。そこまで酷くないから平気」

 「そっか……」


 明らかに残念そうにしていますね。

 シアさんの言葉通り、僕の寝ぐせは直ぐに治りました。


 「終わり」

 「シアさんありがとうございます」


 スノーさんも来たことですし、色々と報告を聞かなかなければいけませんね。それによって僕たちの行動も変えなければいけませんので。

 スノーさんも朝食はまだという事なので一緒に朝食を食べつつ経過を聞く事となりました。


 「エメリア様も動いてくれる事になったよ」

 「それは有難いですね」

 「だけど、直接やりあう訳にはいかないから近辺の調査という事でタンザの街の周りを捜索するくらいしかできないけどね」

 

 それでも十分です。

 向こうは、攫った人を連れ出した所を見つかる訳にはいかないのでその間は動かない可能性があがると思います。


 「ただし、期限は半月もないけどね」

 「半月ですか?」

 「うん、これでもかなり無茶してる。第2とはいえ立派な皇女様。他にもやる事があるからね」

 「そうですか……」


 半月以内に解決しないといけないのですね。


 「皇女様は現在この街に滞在しているのですか?」

 「うん。場所は言えないけどね」

 「そもそも何でいるのですか?」

 「それはね……」


 権力争いの一環のようですね。

 タンザの領主は強硬派です。

 南には砂漠があるのですが、そこはルード領ではなく、リアビラという国の領土になるそうで、その国では奴隷制度が合法化されているようです。

 タンザの領主はそれを利用し、攫った人を奴隷にしお金を稼いでいるみたいです。

 そして、そのお金は強硬派の資金にもなっているようで、その横行を止める事により、強硬派の資金源を一部ではありますが、落とす事が出来るようですね。

 何よりも、奴隷制度を認めていないのにその行為を行っていることを見逃せないようですね。


 「エメリア様はいい人なんですね」

 「うん。国を想ったとても優しい方ですよ」

 「それで、レジスタンスは?」

 「うん、そっちも大丈夫かな。直ぐに動く準備はしているよ」

 「具体的には?」

 「地下探索に何人か送り出すくらいかな」


 人数にもよりますが、あまり期待できないかもしれませんね。


 「罠があるから仕方ない」

 「そうだね。実際の所、戦力になりそうな人はレジスタンスには少ないからね」


 高くてもCランクらしいですね。

 地下通路には罠もあり魔物も居るようなのでランクが低い人が向かっても危険なだけですからね。

 それに、組織の人と遭遇する可能性もあるのでそれなりの腕がなければ生き残る保証もありませんね。


 「僕たちのやる事は変わらなさそうですね」

 「うん」

 「ごめんね、こんな事に巻き込むことになって」

 「いえ、僕たちはローゼさんの依頼で動いているだけですからね。むしろ協力できる仲間がいるのは助かりますよ」


 実際に、僕たち二人で動いたところで解決できる可能性は0に等しかったと思います。


 「スノーはどうする?」

 「私?」

 「うん。皇女の騎士として動くかレジスタンスとして動くのか」

 「あぁ……もし二人が良ければだけど、私は二人と共に行動したい」

 「どうしてですか?」

 「私はレジスタンスとはバレているけど、まだエメリア様の騎士とはバレていない……と思う。だから、それを隠す為にもエメリア様の騎士とバレる行動は控えたい」


 そうなるとレジスタンスとして行動する事になりますが、状況によっては皇女様とも僕たちとも連絡がとれなくなる可能性があるのでそれも控えたいようです。


 「僕たちは構いませんよ!」

 「うん。好きにすると良い」

 「ありがとう。暫くお世話になるね」


 臨時パーティーですが、スノーさんが加わる事になりました。

 正直なところ、二人で地下探索をするのは問題無いと思いますが、3人のがより安心できますので嬉しいです。


 「それじゃ、イル姉の所に行ってから地下に向かう」

 「そうですね。僕たちは準備が終わっていますが、スノーさんはどうですか?」

 「マジックポーチに必要な物は入っているから何時でも平気だよ」

 「なら、早速行きますか」

 「うん」


 話は終わり、僕たちはまずはイルミナさんのお店に行くことになりました。

 さぁ、今日から本格的に動き出しますよ。

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