第41話 補助魔法使い、シアの意外な弱点を試す
宿屋に向かう途中の事。
僕は別れ際にルリちゃんに言われた事を思い出しました。
るりちゃんが教えてくれたのはシアさんの弱点といえる事でした。
妹なのに姉の弱点を教えるとはルリちゃん恐ろしいです。ですが、危険はないので僕は試してみたいと思います。
だって、楽しそうですからね!
「シアさん」
「何?」
「この問題が解決したら次はどうしますか?」
「ユアンに任せる」
「たまにはシアさんも決めてくださいよ」
「ユアンが居ればどこでもいい」
「もぉ……ルリちゃんから聞いたのですが、この街からだと色んな場所に行けるのですよね?」
「うん」
「南には砂漠があるらしいのですが、どういった場所なのですか?」
「興味あるの?」
「興味というか気になりました」
砂漠の事は知っています。砂の大地が広がっている場所で、昼はとても暑く、夜はとても寒い場所です。
興味があるのは砂漠ではなくてシアさんの反応です!
「砂がいっぱいあるとこ」
「そうなんですね、魔物も出るのですか?」
「うん。砂地特有の魔物がいるみたい」
「そうなんですね。どんな魔物がいるのでしょうか?」
「有名なのはサンドワーム。砂の中にいるミミズ」
来ました!
「ミミズですか……砂地なのに大丈夫でしょうか、み……みずって干からびちゃいそうですけど」
自分で言って恥ずかしいです!言わなきゃよかったと思ってしまいます。
僕がそう思っていると、シアさんの足がピタリと止まり、肩を震わしています。
「シアさん、どうしたのですか?」
「……な、なんでも、ない」
そう言っていますが、シアさんは何かを我慢しているように耐えています。
ならば、もう一押しですかね?
恥ずかしいのを我慢して僕も頑張ります。
「そうですか。けど、砂漠で魔物を捌くのは砂だらけで大変そうですね!」
「ぷっ……くく」
シアさんの弱点、それは笑いの沸点が低い事のようです。
ルリちゃんから聞いた時はまさかと思いましたが、今のシアさんを見る限り間違いなさそうです。
だって、いつもクールなシアさんが目に涙を浮かべて笑いを堪えていますから!
「雨も中々降らないみたいですが、僕たちが行くときは少しでも降ってくれると助かりますね。まぁ、そんな考えあめぇのかもしれませんが」
「ぷふふっ……ゆあ、んもうやめ」
しまいには蹲ってしまいました。流石にやりすぎたでしょうか?
そんな事をしながら僕たちは宿屋に向かいました。
途中、シアさんが思い出し笑いで一人で吹きだしたりしていましたけどね。
「ひどいめにあった」
「笑顔は大事ですよ」
「あれは笑顔とは言わない。拷問」
「ひどいですよ。シアさんはあまり笑わないのでもっと笑った方がいいですよ。その方が可愛いです」
「…………努力する」
シアさんの案内でイルミナさんの宿屋入り、イルミナさんの名前を出すと。簡単に部屋に通してくれました。
イルミナさんの方から従業員の方に伝えてくれていたみたいです。
イルミナさんの宿屋も高そうですけど、本当に無料で止めて貰ってよかったのでしょうか?
この問題が解決するまで宿をとる予定だったので助かりますけどね。
「どうする。明日から地下に潜る?」
「そうですね。必要な物を揃えてからの方がいいと思いますけど、何が必要かわかりません」
「大体揃ってるから問題ない」
「宿のお礼もありますし、イルミナさんに相談してみるのもいいかもしれませんね」
「うん」
そういう事で明日はイルミナさんのお店を尋ねる事にしました。
もちろん、スノーさんを待ってからですけどね。
「今日はゆっくりしますか?」
「そうする。お風呂も入りたい」
「そうですね、ご飯の前に入りましょう」
宿屋に泊まったらお風呂に入る。
贅沢な筈なのに、当たり前のような気がしてしまいます。お風呂は高い宿屋にしかありませんからね。
普通は体を拭いたりして身を綺麗にするだけですので。
お風呂に入り、ご飯を頂き、特にやる事はないのでさり気なく駄洒落でシアさんと遊び、今日は眠る事にしました。
当然のようにダブルだったのが疑問に残りますが、些細な事なので気にする必要はありませんよね。
そうして朝を迎えます。
「んー?」
僕は早く目が覚めました。
今日も僕の方が先に目を覚ましたようで、シアさんは僕を抱きながらすやすやと眠っています。
「シアさん、朝ですよ」
「まだ」
「もう、ですよ」
「まだ平気」
起きるつもりはないようです。
イルミナさんは魔法道具を販売しているからなのか、壁には時計という魔法道具が掛かっています。
帝都にも街の中心に大きな時計がありましたが、それと同じような作りで12個ある数字の上を針が回り、時間を示しているようです。
遥か昔からある魔法道具と同じ時間に合わせられているようですが、未だに参考にされる程なので初めて時計を作った人はすごいですね。
そして、その時計は6の所で止まっています。
朝の6時ということですね。
朝の6時といえば、僕たちの村にもあった小さい時計の鐘が鳴る時間ですね。
タンザでは7時に鐘が鳴る事がわかっていますので、みんなが活動する時間は街や村によって違うのかもしれません。
「僕は起きますよ」
「だめ」
逃げられませんでした。
ここで眠ってしまうと、昨日の二の舞になります。
だから僕は意地でも寝ませんよ?
いくら、ベッドが気持ちいからってその程度の事には負けませんから!
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