第7話 Eランク冒険者、採取依頼を頑張る
「薬草は沢山ありますね。流水草は……水場近くですね」
探索用の探知魔法を使用するとマップは表示されませんが、大体の位置を把握することができ、目的の素材を探す事ができます。
勿論、魔物の接近を把握できる感知魔法も使用しているのでぬかりはありません。
近くに魔物の反応はなく、僕から遠く離れた場所で小さな赤い点が3匹ほど移動しているようですが、移動している方向も逆方向ですし、大きさから判断してもゴブリンなどFランク相当の魔物なので気にしなくても大丈夫だと思います。
正直、僕の受けている依頼は慣れていない者には辛いです。
森の中を下を向いて歩き、魔物の襲撃を気にし、そこら中に生える草の中から見分けなければいけないです。
しかし、討伐なしでFランクからEランクにあがった僕にはとても美味しい仕事です。
常駐依頼なので何度も受けることも出来ますし、感知魔法で位置も簡単に把握できて、収納魔法で大量に採取できる。僕のためにある仕事といってもいいのではないでしょうか?
ただし、討伐依頼関連ではないのでランクはあがりませんけどね。
ランクを気にしない僕にとっては些末な問題ですけど。
本日50本めの薬草を掘り収納にしまい、これで銀貨5枚分。
薬草の多いこの森は格好の稼ぎ場所ですね。
しかし、森は広いとはいえ、一か所に生えた薬草を根こそぎとってしまうと、他の冒険者にも迷惑がかかりますし、この辺りで薬草が生えなくなってしまう可能性もあるので、採取はここまでにしておきます。
本当はもっと欲しいですけど、流水草も同じだけ集めれば金貨一枚分は稼げるので十分な収穫だと自分に言い聞かせ我慢します。
薬草の採取を切り上げ、次は流水草の採取を目指し、感知魔法を使用しながら歩くと、流水草の反応がありました。その付近には水場の反応と魔物を示す赤い点の反応があります。
「水場には魔物が集まるのは仕方ないですね」
魔物を避けるように水場に近づくと小さいが泉が出来ていました。自然に出来た泉は透き通りとても綺麗ですが、逃げ場のなくなった水が土壌に染み込み
「そこに流水草は生える……と」
流水草を採取するために泉に近づくにつれ、ぬかるんだ土に足がとられるようになりました。
足首まで足が埋まり、油断すると靴が抜けそうー……。
と思っていた矢先に靴がはまり、顔から泥にダイブ……全身が泥だらけになり、服もびちゃびちゃです!……うぅ、泣きたくなります。
しかし、そうは言っていられません。僕は流水草を集めるためにここに来たのですから!
汚れるのは予めわかっていた事なので気にするのは今更です!
ですが、この依頼が人気がないのはわかりますね。
何度も転びながらも流水草を集め、薬草と同じ本数が集まる頃には日が沈みかけている頃になってしまいました。
「今から戻っても閉門には間に合わなそうですね……と、その前に……
生活魔法の一つである洗浄魔法は体や服の汚れなどを落とす事ができる魔法です。全身泥まみれになっていた体が嘘のように綺麗になっていきます。流石にローブの解れとかは治りませんけどね。
冒険者として活動をしていると、泥や埃は勿論、魔物を討伐すると血や体液などで汚れることは常です。その為にこの魔法はお風呂に入れない間に非常に人気のある魔法です。
ですが、意外と珍しいスキルみたいなので、誰もが使える訳ではないようです。補助魔法が得意で良かったです。
「泉の近くは危ないのでどこか魔物が少ない所で休みたいですね」
暗くなった森を進んでいきます。いつ襲われるかわからない闇の入り込んだ森は普通ならば恐怖心に駆られますよね?
ですが、探知魔法を使えばそんなに怯える必要はありません。一家に一台、冒険者のお供に一人、Eランク冒険者ユアンは如何ですか? 生活魔法も補助魔法も便利ですよ?
採取をせずに森を歩くのが暇だったみたいで、変な事を考えていると、草木の生えていない、月の光の差し込む空間に出ました。感知魔法の情報通りです。
不自然な空間は以前に戦闘があった場所が多いようです。魔物と冒険者の戦闘は地形が変わってしまう事も珍しくないですからね。高ランクに限りますけど。
「大きな木の傍って安心できますよね」
周りを見渡して、一番大きな木に寄りかかり、お世話になっているゴブリンの干し肉をとりだします。
「忘れていました……
僕を中心とした直径10メートル程のドーム型の防御魔法が展開されます。
魔力が底を尽きるか、一定のダメージが与えられない限り攻撃を遮断できる魔法です。しかも、魔力から自動供給し、自動で修復してくれ、魔物の侵入を阻害もできます。
一度とはいえ、火龍の翼のみなさんを助けた炎龍のブレスを防ぐくらいの耐久度はありますので、ゴブリンやオークが何匹集まろうと突破されない自信があります。ただし、魔物限定で悪意のない人間は入れてしまうのが難点ですけどね。
「これでゆっくりできますね」
周囲の安全も確保できたことですし、いつもの食事をとり、明日に備えて睡眠をとり、休むことにしました。
冷え込む時期ではなくて助かりました。もしも、雪が積もる時期だったりしたら、温度調整の魔法を組み込まなければいけなかったので消費する魔力もあがりそうですからね。
食事を終え、温かい時期に感謝をしながら、僕の一日は終わりを迎える。
明日もいい事がありますように……おやすみなさい。
収納から取り出したウルフの安い毛皮を身に纏い、僕は深い眠りの海に落ちていった。
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