第8話 少年の体育
セットしたアラームが独特な音色を奏で部屋に鳴り響く。カーテンの隙間から部屋に朝日が差し込んだ。重たく感じる全身に鞭を打って制服に着替えた俺は、顔を洗いに行った。顔を洗い終わった俺は、キッチンのドアを開ける。中では既にハルが食器を出している最中だった。
朝食を済ませ、ハルから弁当を受け取り学校指定のバックに入れた。玄関を出て軽快な日光を浴びた俺は、最寄りの駅に向かった。
30分ほど電車に揺られていつもの駅で降りる。定期券を見せ改札を出た俺は、音楽を聴きながら学校まで歩いた。
学校に着くと、上履きをスリッパに履き替えて教室に向かう。まだ誰もいない教室に入ると、自分の席に座わった。授業が始まるまでいつものように、自分の腕を枕にし、目を閉じた。
途中、睡魔と闘いながらも殆どの授業を終えた俺は、ピークが過ぎ少し茶色がかっている空を見上げながら、図書室に向かっていた。
何故なら次は体育の授業だからだ。この鹿島高校では、戦闘系の異能をもつ者しか受けることができない。以前、学校の成績に体育が無いと言ったのを覚えているだろうか。全員授業を受けることができないからである。俺みたいな非戦闘系は各自、自習となっている。なので、俺は図書室で宿題をするのが常である。俺はスライド式の扉を開けた。すると、薄暗い室内に窓から一昔前のポーランド映画みたいな薄暗い光が差し込んでいた。その先には、女子生徒が一人いた。知らない顔だ。初めて見る生徒だった。その女子生徒と目が合った俺は、気まずくなり目をそらす。
少し離れたところに座ると、荷物を置いて筆箱のチャックを開けた。
数十分後、静かな雰囲気漂う中、俺は頭を抱えていた。国語、英語と順調に進んでいたのに数学で足どめをくらっていた。高校ともなると、日々の宿題を終わらせるのも一苦労だ。もういいや、と諦めかけシャーペンを置きかけたその時だった。
「あの……」
「!?」
後ろにいたのは、先程の女子生徒だった。さっきは薄暗い上に遠かったためよく見えなかったが、小さな口に整った鼻、長いまつ毛と妹とは対照的な漆黒の髪が伸び、伸ばされ手の爪は綺麗に切ってある。俺は物語にでる妖艶な魔女みたいなだと感じた。
俺はこの時まだ知らなかった、彼女との出会いが俺の生活を一変する事になろうとは…。
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