第6話 網に掛かったのは


 いつものように網を拡げて 数時間すると警報アラームが鳴り、何かが掛かったのを知らせて来た。

 簡単に引き上げるのは危険なので、まずは質量を……。

 「また会いに来たよ」


 あの声は、全く研究対象の違うの声だ。取り敢えず無重力状態にして『投網』からは出しておく。

 この『投網』は、彼の指示により世間には発表していない技術だ。もっとも 私だって彼の研究に色々口出しするし、提案や文句を言っているのだから、お互い様であるが。


 「何かあったのか」と問えば、あっさりと答えを来る。

 「ここにこそ『何か』が起こった、と思ったんでね」

 感の良い男である。

 「まあね、たった今 妙なモノが網に掛かったところだ」

 私も隠すつもりはない。


 「これなんだが……」

 こんなモノだったのか。あの時は詳しく見ていなかったが、かなりヤバそうだ。

 「お前、これはどう見ても『宇宙船』じゃないか。しかも、外宇宙航行用だな」

 「……どうしよう。元の次元隙間ところに戻しておこうか」


 取り出して空中に浮かんでいる物体は、目測2メートル程である。しかし、これは取り出した状態の儘なので実寸法ではない。むしろこの状態で、この寸法なのが恐ろしい。


 「いや、せっかく拾ったんだ。

 再確認するが、この中には生命体は存在しないんだよな」

 「存在しない、といか存在出来ない。ウィルスだって ここでは生存どころか存在さえ不可能だよ」


 「ところで これの実寸と質量は……」

 「君が来たので、まだ計測していない。

 ちょっと待ってくれよ、すぐ準備するから。その空間に触れたら、君も『あの中』閉じ込められるからね」

 つまり『死ぬ』という事だ。


 ヤバい。本当にヤバい。これを外に出した時点で大騒ぎになる。いや、それ以前に地上では出せない。

 「ここじゃ、出せない寸法と質量だな。

 どうする。俺の宇宙船ボートで木星まで飛んで、その影に隠れて出してみるか」

 「……そうだね。長さだけでも月の直径よりある代物を、ここでは出せないものね」


 ■■■


 「でかいな」

 そう、これは予想以上に大きかった。全長4千キロメートル、先端から少し入った球形の部分、居住区(だと予測)だけでも直径20キロメートルある。何人乗りだろうか。

 彼のボートには アンドロイド各種、ロボットも含め かなりの数が乗っている、さっき出しなのだが。私も研究室を、丸ごと持って来ている。

 それ等は、彼が発明した未発表技術で造られた『疑似亜空間』に収納されているから出発に際し、検査に掛かるような事はなかった。2人供、これでサバイバルゲームをする気、満々だ。


 「さぁ、乗り込もうじゃないか」


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