第11話
「すーちゃん、あーちゃん。起きてー」
お母さんの私と妹を呼ぶ声がし、ムクリと起き上がる。
「澄香、もう起きてたの。」
二段ベッドの上から下を覗いてみると、既に着替えて読書をしている妹がいた。
「うん、お姉ちゃんは今起きたの?」
ふわぁっと可愛い欠伸をしながら妹はこてんと首を傾げる。
私はそれに頷くと二段ベッドのはしごを降り1階のリビングへと向かった。
仏壇のお父さんに挨拶し、朝食を食べる。妹はなぜだか、お母さんとあまり食事をしたがらない。だから朝はお母さんとふたりのことが多い。
お母さんが嫌いって訳では無いみたいだけど…。ちらりとお母さんを見ると相変わらず書類を横目で見ながら食事をしている。
そうそう、お母さんは夜はパートだけれど昼間は正社員として働いているんだ。
私たちの生活を思ってのことだとわかっていてもやはり寂しく感じてしまうのは我儘だろうか。
「ご馳走様。」
食器を洗うために台所へと行く。いつもの光景だ。
お母さんも酷い人ではない。普通の母親だ。いつもどこか切羽詰ってはいるけれど。
「すーちゃん、相変わらず無口よね。」
不意に、お母さんが切り出してきた。
それは私も感じていた。昔…お父さんが生きていた頃に比べて随分元気がない。子供らしさもなく、いつも私や人の事ばかり気にしている。
「学校ではよく喋るって聞いたけれど…。」
そうなのだ。驚くほどに家と学校で態度が違いすぎる。
澄香をあまり知らない人が家での澄香を見たら知らない人かと思うくらい。
きっとあの子も思うところがあるのだろう。
「ほっといてあげれば。あの子はまだ幼いし、色々と受け止めきれないのよ。」
それだけ言うと洗い終えた食器を食器棚に入れて自室に戻った。
途端に涙が流れ出す。思い出さないようにしていたのに。
馬鹿だ。私。
受け止めきれないのは私じゃないか。
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