第8話

小村未唯の方、と華東くんがボソリと言う。確かに、あの子の一人称はみぃだった。

水咲でもありだけれど、未唯の方がしっくりくる。って、これはどうでもいいっけ。

ハッとしてさっきの話に意識を戻す。

「先生、私そろそろ帰らないと。」

時間を見るとさっきから20分もたっていた。徒歩通学の人には少し厳しい時間帯だ。暗くなってきているし、最近変質者が多いからっていうのが原因で、帰りは必ず誰かと帰りなさい、と学校でも指導されていた。

こんな夜道を1人で歩くなんて、ただでさえ怖くて仕方が無いのに、変質者なんていたら尚更だ。

「あぁ、そうね。指導は明日にしましょう。

華東くんは、どうですか?今から電車、あります?」

華東くんって電車通学なんだ。じゃなくて、電車がないと大変だよね。華東くんが学校に残ったのって半分私のせいだしなぁ…。

よし!

「で、電車無かったらバスとか、タクシー代は、出すけど。華東くんが小村さんに追いかけられたのって、私のせいでしょ?」

財布に1000円入っていることを確認しながら言う。

「いい。俺は、神奈川のせいとか思ってないし。」

それは良かった。

「そ、それにお金の貸し借り、奢りなんかは禁…!少し待ってください、神奈川さん!?」

先生がせめてもの反論をしてくる。私はそれを全て聞き終える前にダッシュで帰ってしまったけれど。


…あ。

結局華東くんの要件は謎のままだ。

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