第6話

「神奈川さんですか?」

ふいに担任の声がして、うぎ、と変なうめき声がでた。ある程度予想はできたはずなのに振り返るのが怖くて前を向いたまま話す。

「はい、そうです。」

「カバンも持たずにこんな時間に学校にいて、大丈夫なんですか?さっきお母さんから連絡が来ましたよ。」

「え、ほんとですか?」

私はやっと担任…素衛(もともり) 先生に向き直って聞く。

「私があなたに嘘をついてどうするんですか…」

「あ、確かに。すいませんでした。」

「いや、別に謝らなくてもいいんですけれど…。」

しばらくの沈黙の後、そういえば、と先生が口を開く。

「結局、なんで学校にいたのですか?」

「…えっと、少し忘れ物をしてしまって。取りに来ていたんです。」

「それなら何故、あなたの親から私に連絡が来るのですか?それに、門の施錠はバスケットボール部の顧問が既にしていますが、どこから入ったのですか?」

うっ、と言葉に詰まっていると

「ずっと学校にいた、とかじゃないすかー」

なんて声が後ろから聞こえた。振り返るとそこには、華東くんがいた。

私のいるところに華東くんはスタンバっているのだろうか…?

そんなことを考えつつ、

「はぁ」

とため息をついた。また面倒なことになりそうだ。

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