第十三話 白仙への不運
城内へと戻った白仙。
城内は至って平凡で軍の力を過信しすぎている節もあるが、白仙が戻った瞬間数名の使用人が客室へと案内するのだった。
「何かありましたらお呼びください」
そういってメイド服を着た女性が扉を閉める。
「まさかあの竜が知能高いなんて思ってもおらんかった。まさか、戦況が悪いと思った瞬間後退を開始するなんての」
白仙のいう通り、白仙とオサキによって仲間が三匹やられた瞬間、残りの残党すべてが今までじりじりと城の方向へ攻めていたのを後ろへと逃げるように下がっていた。
だから、アルギに対して見えていないと言い放った。
あのまま放っておけばこれ以上の損害なく、勝利を敵撤退で納めれたものを後退中の残党へちょっかいをかけ、カーゴンの何が何でも生きて帰るという思いで損害を得てしまう。
あそこは普通に撤退させておけばよかったのだ。
カーゴン側もこれ以上の戦闘は避けたかった。
白仙が追撃できるところを追撃せずに地面へと降り立った行為。
これをみたカーゴンは白仙による撤退要求だと思い、損害は最小限に。白仙という危険人物の情報も得れた。
ならばあの味方を三頭もやった奴の言うことに従って撤退しよう。
これは、カーゴンが人語を話せ、それなりの知力を持っていたからこそ。そうしたかったのだ。
「馬鹿だの」
すべてを見透かしていた白仙は天井を見上げ、呟く。
また、白仙は神である。
ほんの少しの未来程度予知が可能だ。
この異世界に降りてきてからはうまく機能していなかったが、つい先ほどのカーゴンが撤退を決めたことが判明したのは予知があったからこそであった。
そして。今見る予知の先はなぜかすぐ未来ではなく、もっと先の一日先の様子が見えてきていた。
その様子というのも不可思議で、アルギに異常が発生していた。
今までのように正義感に溢れた男とは裏腹に自分への敵意をあらわにしたアルギの姿とそれを薄ら笑う部下らしき男の姿が予知で見えていた。
白仙はただ。何かが起ころうとしている。不運が未来で発生しているのだと思い、先に何か手を打つことに専念する。
それもそのはず。予知といえど白仙はそもそも予知に頼ったことなどなく、扱えるにしても趣味程度といえる。
だからこそ。予知を改変できる可能性があるのだ。今のままではアルギと何かがあって対立する。
それは避けなくてはならない。しかし、問題はアルギがこの後の数時間で何が原因で白仙に敵意を持つか。
そして、あの部下らしき薄ら笑う男性は何者なのか。
場所はどうみても城外。ましてや平原のようである。
「国外・・・ダンジョン? ダンジョン。平原でダンジョン・・・か」
独り言を一つ。
一人で口に思いを出しながら、整理していく。
有言実行。平原のダンジョンへ向かうことにする。
そして、また窓をぶち破って城外へと逃走を図り、混乱中の状況に便乗して誰にもバレることなく国を後にするのだった。
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