第八話 事情聴取は不運で遮りましょう
ガチャ。というドアノブの捻られる音とともに後ろから物凄い赤い色のオーラを出すアルギを少し顔を横に向け、目視する。
「待たせて悪かった。色々と今回のことで報告しなくてはならんくてな」
「管理職などそんなもんじゃ。我もよーく知っておる」
目の前のソファーに腰掛け、手を後ろにし広さを余すことなく腰掛けたアルギは、少しきょとんとした顔をしたがすぐに高々と笑いだした。
それには思わず白仙も引き目に笑うことしかできなかった。
「こんな小さな獣人の女の子に同調されるなんてな! 管理職がなんだかよく知らねーが、きっと報告の義務やら部下育成がある職業のことなのだろう。いやはやそれを経験した子供がおるとはな」
「そ、そうか・・・それとだが、子供。というのは控えてもらえぬか? これでも身長が小さいだけだ。年は教えれぬが、子供という年齢ではなか」
そういうと、これまた拍子抜けしたような顔を一つ浮かばせるとアルギは先ほどまでの青年差など微塵もなく、三十代のような喋り方と笑い方をしだす。
「そうかそうか、年齢を聞くのはやぶさかであったな。ちなみに俺は二十七歳だ」
「き、聞いておら・・・二十七!?」
アルギの年齢には思わず、聞き流そうとしていた心という川の流れがせき止められる。
「なんだ? 二十七だが」
「そ、その年でその顔でその喋り方とは・・・なにやら我の元いた地域とはかなり違うようじゃな・・・」
「やっぱりそうなのか・・・周りのやつからもおっさん臭いとは言われていたのだがな?どうもこの喋り方がしっくりきてしまっていてな。それと、白仙。貴様が言えた口ではないぞ」
などとほんの談笑ののちに、アルギは本題だ。と話を切り替え、顔が仕事人の顔つきとなり、その表情は正に堅実さがあふれ出していた。
「ではまず、あのダンジョンには一人で行ったのか?」
「うむ。初級と言っていたから体慣らし程度に挑むことにしての?冒険者登録を初日に済ませて入った。仲間などここには誰一人としておらん」
「そうか。あのグリフォンは白仙がやったのか?」
「そうじゃ。二体、刀で斬って絶命させた。魔石は置いていったがの」
「二体だけ? 討伐されていたのは三体だが?」
机の上に置かれた真っ白な紙に羽ペンを滑らせ、調書を作成していく。
「んや? 気づかなかったのかや?あの内一体だけ斬っておらぬぞ?」
「・・・失礼。まだ情報の統括が済まされていなくてな、調査班の結果がまだ聞かされていないのだ」
あの混雑ぐらいからしても情報をまとめている暇などなかったのだろう。ましてや、生半可な情報ほど危険なものはないのだから。と心の中で思う。
すると、また背後の扉がノックされ了承なく開けられる。
「失礼します。隊長、カーゴンが接近していると司令塔から通達が。南西部です」
ガタ。
ソファーの位置がズレる音とともにアルギが苦虫をつぶしたような顔をしながら立ち上がる。
「それは本当か?」
「はい。距離は一キロを切っていると予想されています」
「わかった今すぐ向かう。白仙、すまぬが優先事項が変わった。後で戻ってくる。使用人に飲み物でも持ち込ませる」
「何があったのじゃ?」
「カーゴンだ。他国の眷属となったドラゴンが向かってきている」
冷や汗が頬を伝っていったのが白仙の目でもはっきりと見えた。
「ドラゴン?」
「ああ、悪い。もう行かなくては。使用人の指示に従っていてくれ。行くぞ!」
「はっ。数は視認した数で・・・」
歯切れの悪い空気を残してアルギは兵士とともに部屋を出て行ってしまった。
「ふん。ゆっくりできる暇もなか。南西とかいうておったな。確かあの窓の先は南のはずじゃ。見えるかもしれぬの」
ソファーから立ち上がり、部屋の奥にある窓から右側を見てみると、町中から大勢の人間が城側へと走ってきていた。
この様子には白仙も違和感を覚え、窓を開けようとする。が、鍵などなく壁と一体化し光を直接入れないためだけのフィルターとなっている。
「く。修繕費など火竜の魔石で足りるじゃろう! てい!」
右エルボーを窓ガラスに叩き込む。きれいに一瞬にしてひび割れ、砕ける。
「よっ!」
破片が刺さらないよう、注意しながら窓枠に手足をかけ、体を外へ乗り出す。すると、南西側に大きな黒い鎧を着けた竜が六匹、見て取れた。
「あれがアルギの言っていたものかの・・・っ!」
扉からまたドアノブの捻られる音が聞こえる。慌てて身を外へ放り出し、空中動作スキルで姿勢を整える。
その時、後ろから大声で何か呼び止められた気がするが気にしない。
城のレンガのようなブロックが綺麗に積み重なった壁に右足を当て、壁側に強く圧力をかけ神速を使って勢いよく飛び出す。
ソニックウェーブが発生するよりも早い速度で飛び出す。しかし、神速はそんなものが逆に消滅してしまう速度で移動する。
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