白と黒の調べ Chapter.8
その外観を見上げ、カリナは軽い安心を
(取り立てて、異変は感じられんな。
先の
ひたすらに会話は無い。
激闘の疲労感もあるだろう。
されど、カーミラに限っては、それだけではなかった。
胸中を巡る思いが
エリザベートの
その事は
胸中に
「ねえ、カリナ? ちょっといいかしら?」
背後からの不意な
「何だ?」
「
「フン……やはり、それかよ」
登りきると目的の部屋は、すぐ
対話応対が多少
「正直、感心したぞ。
相変わらず、
「あら、そう思ったからこそ、
「まあな。万にひとつの可能性だが、そうした展開が有り得るなら見たくもあったさ。それと、もうひとつ──」
「何かしら?」
「──〈伝説の
さりながら、敵意ではない。
そこから判断する限り、おそらく本気ではあるまい……と思いたい。
「それは残念な結果だったわね。で? いつから愛用しているのかしら?」
「最初からだ」
「
「ああ、そうだったな。だから、私が認識した時点からの話さ」
「単刀直入に
「さあな。だが、
その事実は
カリナ自身が
が、ポーカーフェイス戦に
「その
「ま、当然か。だからこそ、コイツを
「お見通し……か」
カーミラは、はにかんだ苦笑に誤魔化した。
「会えたのは幸運だったな。でなければ、コイツは制御できん。さもなくば、オマエの魂すらも
「
「ああ。
「正直、驚いたわね。確かに〝自我〟や〝
「ま、おそらく
「ええ。その魔剣は〝
「事実、そうなんだろうよ」
「その魔剣に
「かつて、
浅く
「相変わらず、続けるのね」
「……何がだ?」
「それ──
白から
「菜食主義も結構だけど、度が過ぎると身体に
「ほっとけよ」
カリナは軽く鼻を鳴らし、目線を
こうした指摘である以上は、間違いなく
なんとも面白くない。
「
「ハッ……先の戦闘で、私の魔力が
(……そこなのよね)
カーミラが知る限り、カリナは吸血行為を断っている。
にも関わらず、魔力に
自分に匹敵する強大さだ。
(
ともすれば、底値自体が高いという事だ。
それだけの魔力という事は、少なくとも第三世代以降ではあるまい。実に興味深い。
「まあ、いいわ。で、経歴は?」
「……どちらのだ?」
「どちらの?」
「剣か?
「剣よ」
「知らん。正直、興味が無いしな」
「そう」
それ以上は追求せずに、カーミラは話題を終息させる。
(
想起した瞬間、カーミラの瞳は強い
(──そう、最優先すべきは〈レマリア〉の存在!)
けれども、それが表層化したのは数秒にも満たない。
自覚したカーミラは、すぐさま普段の貞淑な物腰へと
その変化に気付けなかったカリナの
(事前に動揺させる事は、
そして、実行すべき時期は遠くない──そんな予感を確信と
ガタつく扉を開くなり、満面の
リック少年とメアリー一世であった。
「カリナ! マリカル!」
「
左腕の痛みを押し隠したカーミラが、
とはいえ、高貴なる純潔を
一方でカリナは、そわそわと落ち着きを無くしていた。
まるで
その視線は、
「どうしたの?」
「いや、レマリアの姿が……」
「あら、あそこにいるのは違って?」
目線で
それを認識したカリナは、ようやく平静さを取り戻したようだ。
「どうやら隠れきれないでいるらしいな」
「きっと怖くなって、隠れていたんじゃなくて?」
「ああ、そうか。そうかもな……」
「身の守り方、教えてあったんでしょう?」
「うむ。万ヶ一、私と離れた場合は、物陰へと隠れるように教えてあったはずだな──そうだとも」
「そうでしょう? きっと、それを守ったのね」
母性に
その
「……見えてるぞ」
ひょこりと顔を覗かせる
「わたし、みつかってないのよ? だって、ちゃんとかくえてますからねーだ」
どうやら簡単に見つけられた事自体が不服らしい。
そんな愛しい
「そうだな。だが〝かくれんぼ〟は、もう終わりだ」
「おわり?」
「ああ、敵がいない」
「おにさん、バイバイしちゃった?」
つまらなさそうに意気消沈していた。
その背中を軽く叩いて、あやしてやる。
カリナにしてみれば、
親指吸いにおとなしくなったレマリアが、頭をコテンと
それから
「……よく寝るヤツだ」
軽く
しばらくして、
心無しか、その態度は怖ず怖ずとしているようにも見える。
「あのさ、カリナ?」
「何だ」
「う……ん、さっきリャムから聞いたんだけど……」
「どうした? 黙っていても進展はないぞ」
「うん……じゃあ、思い切って
深い一息を吸うと、少年は迷いを
その勢いのまま、
「カリナって〈
「…………」
「…………」
「……フッ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます