白と黒の調べ Chapter.3
「チクショー! どうしてオイラは、こうなんだよ!」
リック少年は自らの不運を呪った!
死に物狂いで街路を駆け抜ける!
振り返ると、追っ手の三人組は加虐心に
居住区を見回り警護する衛兵──
「待てよ! ボウズ!」
「オレ達ァ、オマエ等〈人間〉を守ってやってるんだぜ? 少しは
要するに「オマエの血を吸わせろ」という事だが、冗談ではない。
そもそも、対デッド警護は
「オイラ〝
怪物が統治する
いつしか誰とでもなく呼称し始めたが、文字通り〝
それは吸血鬼達に給与として割り与えられる。
だが、当然ながら
ともかくリックは、そうした
追撃状況を確認すべく、少年は振り返る。衛兵達には諦める気配も疲労の様子も無い。
「ぅあ?」
疲労困憊で足が
背後に気を取られたのは失敗だった。
ややあって追いついた足が、何者かは言うまでもない。
「おいおい、大丈夫かァ~?」
「素直に言う事を聞いてりゃあ、痛い目を見ないで済んだのによ~?」
好き勝手に茶化し並べる
「あらら、勿体
「だよな。オレ達〝
「おまけに脆弱で下らねぇ人間なんかを、
「オ……オイラ〝
「オマエ、人の話聞いてる? オレ達は『
「そんな配分、オイラの知った事じゃ……」
「この際、配分量はいいんだよ。とっくに諦めてるさ。ただ、スパイスが足りねぇのさ。味だよ! 味!」
「要するに〝味付けの無いステーキ〟を食ってるようなモンだ。空腹感の
「つまり、オレ達が欲しいのは──」「──恐怖と悲鳴だよ!」
恐ろしい本性を
ズラリと並び生える
理性無き狂気に染まっている!
「う……うわぁぁぁああ!」
少年が叫ぶ!
恐怖に!
戦慄に!
それぞまさに、彼等の望んだ
得体の知れぬ声に
だが、少年だけは聞き覚えがあった!
月明かりの一角で、壁へと
吹き抜ける風に
まるで再現の如き光景が、少年の視界を
「カ……リナ?」
「やれやれ……つくづく襲われるのが好きだな、オマエ」
少女は
相変わらずの
けれど、その裏に隠された
あの日の〝
だからこそ、安心して
「な……何だ、テメエ?」
が、そこに
「どいつもこいつも……キサマ達のような
無造作に近付いてくる少女を警戒し、吸血鬼達が身構える。
と、今度は背後から女性の声が聞こえた!
「まさか、衛兵まで腐敗していたとは……」
汚職衛兵達が振り向くと、そこには新たな介入者が二人──清廉そうな
声の主は、おそらく
「コ……コイツ等?」
いつしか彼等は、逆に包囲される形になっていた。
「本当に我ながら情けないわ」
「何も
「これは、やっぱり責任を取るべきでしょうね」
「
「オイ、これは私の
「
「フン、勝手にしろ」
不機嫌に投げる。
「な……何なんだ、コイツ等?」
衛兵達は不気味さを味わっていた。不敵な会話は、自分達を
途端、彼等の一人が
「あっ!」彼は仲間の存在すらも畏怖に忘れ、ただ小刻みに震えだした。ただでさえ
明らかに恐怖を
「一人減ったぞ」
「じゃあ、これ以上減る前に始めましょうか?」
清純な
相当に距離を
「ま……間違いねぇ。アレは──」
城主〝カーミラ・カルンスタイン〟に
「生きた心地がしなかったぜ」
あまりに強大で格違いな妖気を、まざまざと見せつけられた気がした。
彼女達にしてみれば、
「へっ……へへっ……」
自然と乾いた笑いが零れ始める。身の安全を確保した実感からだろうか。
否、それは精神的自衛かもしれない。
「
置き去りにした仲間達へと
スゥと
「ひっ?」
はっきりとした体感を確信し、思わず
先程まで背後に在った暗がりから気配を感じる!
硬い足音を響かせ、戦慄の魔性が歩み出てきた。
血のように真っ赤な
「仲間を見捨てて逃げるとは、どうやら最も恥ずべき
深紅のロイヤルドレスに身を包んだ凛然たる美貌──〝ブラッディ・メアリー〟だ!
「勘弁して下さい! アイツ等に
「
「た……たかが、ガキ一人じゃないですか」
「たかが?」聞き捨てならぬ暴言に、メアリーの細眉がピクリと反応した。「その〝たかが〟の
これ以上は何を主張しても無駄と
「な……何が『血は命なり』だ!」
ヤケクソな叫びを吠えて、吸血妃へと斬り掛かる!
衛兵の武装として携えた
メアリーに動じる様子は無い。
迫る狂犬を冷ややかな
「なっ? 消えた?」
瞬間的な異変だった。
実体が消えたとはいえ、その存在が周囲に
例えようもない不安に踊らされ、一心不乱の剣が狂う!
「ドコだ! チクショウ! ドコに消えた!」
ひたすら空を斬る必死な抗いは、無様で
「チクショウ! チクショウ! チクショウ!」
やがて
「ヒィ!」
しなやかな指がヒヤリと
いつの間にか赤の吸血妃は背後へと現れ、処刑の
「何か言い残す事はあるか?」
「オ……レは……」
「フム、貴様は?」
「け……
情けない泣き
「もうよい」
鈍い
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