空を取り戻せ!
狐兎
第1話 空を取り戻せ!
いつからだろう、人類が鳥を恐れ始めたのは。
いつからだろう、空が彼らのモノになったのは。
鳥が空を支配してどのくらい経ったのだろうか、最初は人が鳥に食われると言うのが悲劇の始まりだった。
何十匹もの『天空の王者 鷹』が子供を攫い、見つかったのは骨になったあとだった。
それからだ、鳥が人を食い始めたのは。
奴らは自由に空を飛び回り外に出た人を襲う。
人類は対抗し、戦闘機で大量の鳥を殺したが主戦力の『天空の王者 鷹』や『空の大賢者 烏』が他の鳥をまとめ、ついに人類は空での戦いを諦めるしかなかった。
だが、そんな鳥達に混ざらない鳥がいた。
『森の支配者 フクロウ』だ。
フクロウは夜になると人の住処にやってくると入口で待っているのだ。
試しに食べ物を与えるとその家に鳥が来なくなった。
フクロウは人類の唯一味方の鳥だ。
「なぁ、ソラ今回もよろしくな」
「・・・・・・」
俺の相棒のソラは返事の代わりに目を合わせてくる。
それが信頼の証だ。
草木も眠る丑三つ時、作戦は始まった。
『天空奪還作戦』鳥どもを追い払い、我らの空を取り戻すのだ。
「いくぞっ!」
ソラと森の中に潜む鳥どもを探して殺す。
音を立てないよう心がけなければ鳥どもが逃げてしまう。
バサッバサッとこちらへ来る音に反応し、すぐさま戦闘態勢に入る。
「何だ、ソラか」
暗くてよく見えないが、元の茶色の羽が赤く染まっている。
何匹か殺ったようだ、これは俺もいいとこ見せないとな。
目の前には数匹の鳥が集まって眠っている。
無音で近づき、腰のナイフで奴らの首や羽を切り裂く。
鳥どもは鳴く暇すら無く死んでいく。
「どーだ、ソラ俺の実力・・・・・・ソラ?」
さっきまでいたソラがいない、ソラの足には俺の手と繋がっている細く長い糸がある。
それをたどっていくと、そこにはソラと数メートルはある巨大な鷹がいた。
・・・・・・なんてデカさなんだ、今までのサイズとは比べ物にならない。
ソラが俺の肩に乗ると目を見てきた。
おそらく、こいつが全鳥の中のボスだろう──そう俺もソラも確信していた。
こいつを殺せば、戦いは終わる。自由な日々が始まる!
同時に二手に別れ、鷹を挟み撃ちにするはずだった。
何かに気がついたのか巨大な鷹は目を覚まし、暴れ始めた。
何とか背中に乗ったが、暴れているためナイフが取れない。
そこにソラが飛んで来てナイフを取り、渡してくれた。
「ナイスだ、ソラ! くらえ!」
ナイフは深く刺さったが、さらに暴れだして背中から落ちてしまった。
数メートルの高さから落下し、足をやってしまった。
巨大な鷹は血を流しながらどこかへ飛んでいった。
「逃したか、くそっ、もう一本ナイフがあれば──ソラ?」
またソラがいなくなっていた。今度は手の糸が切れてしまっている。
足を適当な木で固定し、辺を探すと近くにあの巨大な鷹がいて既に死んだ後だった。
その後、いくら探してもソラは見つからなかった。戦いで相打ちになったのかもしれないが生きていることに賭け、街に戻った。
戦果を報告すると、あの巨大な鷹はずっと追っていたボスだったらしく俺は人類の英雄となった。
たが、本当の英雄は俺では無い。とどめを刺したのはおそらくソラだ。
家の二階から空を見てつぶやいた。
「ソラ、お前はスゴイやつだよ。出来るならもう一度だけで良いからお前とアイコンタクトがしたかったよ」
その言葉は自由となった空へと消えていった。
家の前では、一羽のフクロウが食べ物を求めて待っていた。
空を取り戻せ! 狐兎 @kitsune-usagi
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