喪うばかりが復讐だ。『91days』を観てくれ。

 しんどい。


 いや、人から聞くぶんには「あー、あの女性ファンがよく言うやつね」って思いますけど、実際しんどいんですよ。こんなアニメ見せられちゃ。


いやね、91daysの話なんですが、しんどい……ホントしんどい。

 ただただしがらみと痛みばかりが連鎖して、どこまでもしんどいの一語につきる作品、それが91daysなんです。


 ざっくり言うとこの作品は禁酒法時代のアメリカを舞台に、かつてマフィアの抗争で家族を奪われた男アヴィリオが復讐を繰り広げる物語です。


 裕福な家庭に生まれ、何不自由ない子供時代を過ごしていたアヴィリオは、一夜にしてすべてを奪われます。聡明な父親も優しい母親も、賢い弟も。


 孤児となり、十数年の時を経て荒み汚れた青年となり、漂う煙のように日々をやり過ごしていたアヴィリオでしたが……ある一通の手紙を機に、街へ戻ります。


 街へ戻ったアヴィリオは街を牛耳る組織のひとつ『ヴァネッティ・ファミリー』の一員となり、信頼を獲得し、トラブルの果てに得難い友人をつくり……



彼を殺害します。



 そう、アヴィリオが受け取った手紙にはしっかりと記されていたのです。アヴィリオからすべてを奪った男たちの名前が。


 言わずもがな、アヴィリオが街へ戻ったのは復讐のためでした。家族を奪ったヴァネッティからすべてを奪うという復讐の。


 一人目を殺したアヴィリオはドン・ヴァネッティの息子であり復讐相手でもある若頭のネロとの奇妙な友情を育みながら、ヴァネッティに欠かせない人材として重用されはじめます。


 しかし、もはやアヴィリオは止まれません。彼は復讐を続けます。仇であるならば無慈悲に殺し、そのために邪魔になる相手ならなお殺す。暗殺も謀殺も躊躇しない。そんな淡々とした、亡霊のような調子で。


「復讐は何も生まない」って言葉はもとより、「だから何だよ俺はやるぜ」ってツッコミも何千何百と繰り返されて使い古しの感がありますけど、アヴィリオはそういう面倒な諸々をすべて置き去りにして、ただただ行動し続けます。


友情や信頼やカネや権力。ヴァネッティの一員として得られるものは山ほどあるのに、アヴィリオ復讐のためにそれを躊躇なく裏切り、切り捨て、喪い続けます。


禁酒法時代のアメリカで描かれる愛憎、因果、人の情、そしてそれらすべてを裏切り切り捨て行動し続けるアヴィリオの結末。


そして彼を信頼できる右腕としてそばに置き続けてきたネロは、アヴィリオの正体を知って何を思うのか。


裏切りに悲しみに怒りに男たちの魂が軋む音が胸に強く強く響く物語、それが『91days』です。オススメです。


今調べたらアマプラで配信してたので、ぜひ。

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